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第十四章:甘すぎたビターチョコ

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頷いた時雨さんを見て、俺は扉を開け時雨を先に入れた。
長い時間誰も居なかったからか、寒い空気が俺達を襲う。
「あ、今暖房つけるわ。」
「ん…」
「ようこそ二度目のマイハウスへ」
正直喋るネタがなかった。それを探られないようにふざけるようにした。
「ふふ、無理しなくて良いんだよ?」
どうやら一瞬で見抜かれたらしい。
(やれやれだぜ俺!)
心で変なツッコミをしつつ、気になったことを聞いた。
「どうして家の前に?」
「彼氏に会いたくなったら駄目?」
(なにこの彼女、カワイイ!)
「なるほど…彼氏冥利に尽きますねぇ。w」
「ふふふ、また一緒にお酒飲んだりしたいなぁ。」
照れながら言う時雨に俺は完全即刻ノックアウトだった。
俺は言葉を出さず彼女をいだいた。
彼女は抵抗せず、逆に受け止めてくれるように抱き返してくれた。
二人、見つめ合う。
そんな俺達を茜色の光が照らす。
「「・・・・・」」
無言の時間が流れる。
(このまま…してしまいそうだ。)
俺は段々と顔を近づける。
時雨も察したのか、目を閉じ、唇を差し出してくる。

「・・・・ピピピピピッッッッ!」

お互いハッとしたようにハグを解く。
俺は顔が暑かった。
音の出る物を探した。
それは俺のスマホだった。
教授からの電話だった。
カバンのこともあり、出るしかなかった。
「こんばんわ、神坂教授。」
「お疲れ様。急に教室抜け出して…びっくりしたよ。」
「その節は本当に申し訳ありません。」
普通はありえない状態なのだろう、確認を込めて俺に電話を寄越したに違いない。
「それで?目的の人とは会えたのかい?」
「貴方にはバレてましたか。」
やはり状況も相まってか、バレてしまっていたらしい。
「まぁ、君のゲームセンターでの噂は聞いたりしてるからね。」
「教授にまで広まっていましたか。」
教授はそれを無視するかのように本来の目的の話をし始めた。
「今回のことは不問にしておくよ。僕の授業はね。でも他の授業は知らないよ。
カバンに関しては、私が明日まで預かっておく。明日の午前中に受け取りに来なさい。ついでに手伝いも頼むよ。」
ダルいがご好意で色々してもらった手前仕方ないと思い、二つ返事で「分かりました」と返した。
そのあと他愛もない会話をしていた。
「そろそろ君の好きな人が暇を持て余しそうだから、切るよ。」
「あ、了解です。また明日受取に行きますね。」
そうして切った。

「ムー、長すぎ。」
そう呟くのは顔を膨らました時雨だった。
「…買物行って鍋でもしますか…」
俺はあえて無視した。
「おーい、無視すんな~」
「ごめんごめん、つい可愛くて。まぁほら、一緒に買物行きましょ。今日もうちで食べるっしょ?」
「うん…」
ぶつぶつと呟いていたが、俺は気にせずコートを羽織った。

ー1時間後ー
俺達は鍋パを開催していた。
「「かんぱーい!」」
俺達は疲れを払拭するための乾杯コールをした。
肉・野菜・出汁を買ってきた。多少高かったが割り勘にしてくれた。
「お肉入れるね。」
「あ、了解です。」
ごとごとと音を立て、沸騰する鍋の出汁。
段々、白く火の通っていく肉。
沈黙の時間でも、気まずくなかった。
ふと時雨の方を見る。
鍋を見つめ、熱いのか、顔全体的に熱そうにしてた。
「取り分け皿持ってきます。」
「ん、分かった。」
チラッとこっちを見て、すぐに鍋に視線を戻した。
キッチンの小棚からいい感じの皿を2つ見繕った。
「ゴマダレとポン酢どっちがいいっす?」
つけるものを聞いたが、彼女は聞こえてないのか、返答がなかった。
(鍋食べたいんだろうな…とりあえず両方持っていこっと。)
いい頃合いになった時、肉と野菜を同時に箸で掴む。
そしてタレに付けそのままマウスインして、咀嚼する。
簡単に言って美味い言葉以外が見つからなかった。
豚のいい味が出ており、どんどんと食べ進めた。
(あぁ…味がしみていて、美味しい。)
「美味しいっすね。」
「うん、いいよね」

時間が経ち、お互いに落ち着いてきた。
この日は結局、遅くなったということもあり、俺の家に泊まることになった。
前と変わらずシングルのベッドが一つ。
前と変わるのは、恋人になったということと、それによる一緒に寝ることだろうか。
(…まぁ、その分、俺のドキドキは増えるんだがな…。)
俺は、そのドキドキともう一つ別の思いがあった。
時雨がキレイになったことだ。
俺のため、なんていうと勘違いだったら悲しいが、今日会って「…あぁ…綺麗だ。なんてカワイイんだ」そう思うようになった。
時雨は今、どんな気持ちだろうか。それは分からないが、聞くことが怖かった。
ふと横を見る。
なぜだろうか、時雨は俺に頬を赤らめて気まずそうに見てくる。
俺は別に躊躇することは無いだろうと思い、聞いてみた。
「どうした?そんな顔を赤らめて、俺を見つめてきて。」
俺はどう言う感情にすればいいのかわからなかったので、とりあえず笑うような感じでおどけた。
「いや…嬉しかったの、私。」
「ん?どうして?」
「今朝ね。あれから会えてなかったから、なんか夜嵐くんが、遠くに行ってしまったような気がして。」
それを聞いた俺は、俺は言葉もなしに、彼女を抱きしめて呟いた。
「俺は離れない。何が有ってもお前と一緒にいる。」
時雨は二度目だが急な抱擁ハグに驚き、振りほどこうとする。
二度目のハグを振りほどこうとされるのは悲しかったが、俺は離さなかった。
「抗うな…俺がしたいんだ…。時雨、受け入れろ。」
その言葉を言った瞬間、彼女は抵抗をやめた。そして、彼女も受け入れるように抱擁ハグしてくれた。
流れるように俺達は口づけキスを交わした。
今度はねっとりとした、甘い口づけとなった。
チョコのように甘い口づけは…俺に「時雨を絶対に離すな」と決意させるには十分だった。
俺は瞼を閉じた。
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