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第十二章:ほろ苦いビターチョコ

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「おい!」
街でぶつかった人が居た。
しかし、俺は走りながら謝って足を止めなかった。
校門を出てまっすぐにゲーセンへと向かった。
(教授、ありがとう。)
教授は俺達のことは知らない。
しかし、噂とかそういう類を聞いたのだろうか、こっちに意図的に視線を向けて微笑んだ。
その意図は知らない。だが多分君のしたいことをすればいいと常日事言ってた事を思い出して、多分そうだろうと思った。
あの時、唯一驚かなかった教授をみれば当たりだろう。
急ぎ足で駅のプラットホームへと駆けあがる。
あと数分で来る電車でさえ遅いと感じてしまうほど、俺は早く彼女と会いたかった。
音がなり前を向くと反対の電車が出ようとしていた。
出発前にこちら側の電車が停まり反対側が見えなくなった。
俺は降りる人のために横にはける。しかし横から抜けようとした人に当たる。
「ちっ」舌打ちされ俺も嫌な気分になる。
わざとらしく大きな声で「くそが!横から抜けんなや。」
周りの人間は驚いたように俺を見た。
「すいません」そうへこへこして首を揺らす。
(うわー、恥ずかし。)
降りる人が終わり今度は乗る人がノシノシ電車に乗った。
揺られて眠りそうに成る俺は形態を取り出してメールを見た。
そこには怒涛の数件が入っていた。全部講義の知り合いからだった。
「うわ…」
思わず声に出るほど連絡先がブチギレていた。

友人:お前、講義中に無言で走り出してバカかよ。w
   というか荷物!置いていくな。
   教授が預かってくれてる。明日取りに来い。
   いいな?明日取りに行けよ。
俺: へいへい。了解。
どうやら教授が荷物を預かってくれるらしい。
まぁとりあえず明日謝り倒したらいいかと思った。
俺は、おやつに持ってきてた明治のチョコ72%をひと噛みする。
甘くなく、ちょうどよい苦さだった。
それと同時に、俺は安心して窓の外…空を見上げた。
未だ虹が出ている。
時雨はあの虹を…あの空を見たのだろうか。
俺は見てくれてたらいいなと思う。
あのタクシーしっかり送られてるだろうか。
ふと電車が目的の場所に着くまでどうでもいいことを考えていた。
そんな俺を見るかのように虹は綺麗だった。
走り出し、後ろからの風を受け前へと進む。
人混みをかき分けていく。
ゲーセンが見えてきた
平日と言えど、ゲーセン内は子供たちで賑わっていた。
学校は終わったのだろうか、ワーキャーワーキャー騒いでいた。
それと同じく各ゲームが離れたところまで響いていた。
(どこだ…何処に居るんだ…)
見つけられない不安と早く会いた焦燥感が俺の身体を覆いかぶさるように襲った。
キョロキョロして彼女を探しても居ない。
もしかして喫煙所だろうか。そう思い俺は足早に向かった。

「ドンッ!」どんな慌てた音を立てて喫煙所に向かう扉を開けた。
その音は響いた。周りから驚かれ行き違いになったスーツを着た女性の目が開いていた。
「すいません」と会釈し、飛び出した。
少し進んだ先にニット帽の被った小柄な女性がいた。
ふぅと息を吐くと、タバコの白い煙が口から出る。
俺の見慣れた光景だった。
俺はそれをん見た瞬間、ドキッと胸が鼓動する。
「やっと見つけた。」
無意識のうちに俺はそう呟く。
俺は旨を落ち着かせて、ゆっくりと女性のもとへと歩き出す。
そっと数ある場所で、女性の隣にすっと立つ。
…隣に立った俺には気づかないような様子で、スマホをいじる。
俺は声をかけようかと迷った。
そっと耳横の髪をかき上げる…そんな仕草に違和感を覚えた。


…別人か。そうか…ここには居ないんだね…時雨さん。

なぜか本能的にそう思った。目の前の女性が時雨さんに似ているだけの別人だと思った。
下に俯いて俺は女性の顔を見なかった。
俺は、消沈したようにそこでタバコに火を付けた。

雨は、降らなかった。
雲の間から見えた日は、俺を照らす。
雨で身体まで冷えなくてよかったと…今はそう思う。
ふぅと息を吐く。
白い煙が空にあがる。
曇り空にかかり、やがて見えなくなる。
(また、時雨探し…か。)
これでは、講義を途中退席した意味がない…。

恋とは論理
ある学者が恋について語ってた。
俺は恋愛が語れるほど大きいものとは思わない。
それは男女が居て、初めて形成される感情行動だ。
語らなくていい、だけど行動に移したいと思い、もう一息空へ向けて煙を吐き出した。
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