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第十章:見上げた先の虹
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俺は大学に行くために首都間を走る電車に乗って最寄りまで乗っていた。
その電車の窓をボーっと眺めながら。
(ただ変わらない日常だなぁ…)
ふと、そんな世の中を俯瞰したような眼を細めた。
ホテルでの一件の後、時雨は泣き止んだ後、一人で帰るとのことだった。
流石に送ろうと思ったが、断固拒否でタクシーを呼んでいた。
そうされては、俺は何もできなかった。
「次は~渋谷、渋谷になりまーす。ご降車の際はお忘れ物無くお降りくださいませ~」
車掌ののんびりとした声でハッとし、降りる準備を始めた。
満員電車とは言えないが、しかしとも空いてるとは言えない程度にお客はおり、ドア際に行こうと思ったら、少しぶつかったりした。
「す、すいません。」
「こちらこそ」
俺はそんな単調な会話をすぐ済ませ、ドアに近づいた。
ウィーンという音を立て、外のガイドといっしょに開くドア。
ヒューヒューと音を鳴らす風。
そんな風は俺の身体を冷やすには十分だった。
ふと前を見上げた時、昨日の雨のせいか、虹がかかっていた。
「なんて綺麗なんだ。」
俺は無意識にもそんな言葉を吐いた。
後ろでは突然止まった俺を邪魔そうに見る男が居た。
チッと舌打ちをして抜いていく。
そんな様を見ても俺は何も思わなかった。でも止まるのは良くないと思い、脚を前に進めた。
(今ごろ、時雨は何しているだろうか。)
ー少し前ー
彼は泣きじゃくる私を抱きしめてくれた。
力がありながら、しかし優しく包み込むように。
そんな優しさが嬉しくて私は一層泣いた。
私は夜嵐の彼女となった。
彼女は何をすればいいかわからないが、それでも夜嵐の特別な存在に慣れればそれでいいと思った。
これが最適だと思った。
ー現在ー
だから彼に私の泣き顔を見せれないと思い、タクシーで逃げた。
明日からまた会おうと心に誓った。
ふと空を見る。そこには雨上がりの大きな虹が映っていた。
「綺麗…」
私は無意識に言葉を発する。
運転手は初老の女性だった。
昨日の雨は大変でしたでしょう?そんなふうに心配の声をかけてくれる。
「昨日急に振り出してしまって、来てもらったとこで一泊してたんです。」
そう言うと、運転手さんは優しげにこう言った。
「風邪引いてなさそうで良かったわ。」
私もそう思う。昨日突然倒れ夜嵐に迷惑かけただろう。
不幸中の幸いだ。
タクシーに流れるラジオの天気予報が耳に入る。
「昨日、首都圏を襲った豪雨、明日もまだまだ雨が続きそうです。今現在、新宿は丁度晴れですが、油断禁物です。お気をつけていってらっしゃいませ。」
(夜、また雨かな?)
また窓を見る。
そこに渋谷行きの電車が虹の下を通る。
ここからは見えないが、夜嵐が乗っていうる電車だろうか。
そんな事を考えると逃げた自分が恥ずかしくなった。
ガタンッゴトンッ一定間隔で揺らされる。
ついに渋谷についた。
ドアが開くと多種多様な人が降り、その脇で乗りたい人が待っている。
俺は降りる波と一緒に降り、ホームに向かった。
人が密集したら当たるだろう。日本人は世界的には珍しいもので当たるまいと、自ら避け当たらないように行動する。しかし当たると慣れば相手に舌打ちをする。
自分は悪くないかと言うように対応をする。
ホームから出て少し歩くと眼前に大きな門が佇む。
門や門外から見える校舎からは、古き良き雰囲気が漂う。
(一応東京の大学なんだがな…。)
俺は都会なのにここだけ田舎の雰囲気を漂わせるのはどうかと思った。
いつも通り、数時間の講義をメモり、変える準備をしつつ、同じセミの友人としゃべっていた。
30分ほど雑談をし、友人は帰るということなので、俺は一人で昼食に向かった。
いつも食堂で食べてるわけじゃないが、今日は食堂で食べたい気分だった。
キャンパスが看板メニューとして紹介しているカツカレー食べてみようと思った。
その電車の窓をボーっと眺めながら。
(ただ変わらない日常だなぁ…)
ふと、そんな世の中を俯瞰したような眼を細めた。
ホテルでの一件の後、時雨は泣き止んだ後、一人で帰るとのことだった。
流石に送ろうと思ったが、断固拒否でタクシーを呼んでいた。
そうされては、俺は何もできなかった。
「次は~渋谷、渋谷になりまーす。ご降車の際はお忘れ物無くお降りくださいませ~」
車掌ののんびりとした声でハッとし、降りる準備を始めた。
満員電車とは言えないが、しかしとも空いてるとは言えない程度にお客はおり、ドア際に行こうと思ったら、少しぶつかったりした。
「す、すいません。」
「こちらこそ」
俺はそんな単調な会話をすぐ済ませ、ドアに近づいた。
ウィーンという音を立て、外のガイドといっしょに開くドア。
ヒューヒューと音を鳴らす風。
そんな風は俺の身体を冷やすには十分だった。
ふと前を見上げた時、昨日の雨のせいか、虹がかかっていた。
「なんて綺麗なんだ。」
俺は無意識にもそんな言葉を吐いた。
後ろでは突然止まった俺を邪魔そうに見る男が居た。
チッと舌打ちをして抜いていく。
そんな様を見ても俺は何も思わなかった。でも止まるのは良くないと思い、脚を前に進めた。
(今ごろ、時雨は何しているだろうか。)
ー少し前ー
彼は泣きじゃくる私を抱きしめてくれた。
力がありながら、しかし優しく包み込むように。
そんな優しさが嬉しくて私は一層泣いた。
私は夜嵐の彼女となった。
彼女は何をすればいいかわからないが、それでも夜嵐の特別な存在に慣れればそれでいいと思った。
これが最適だと思った。
ー現在ー
だから彼に私の泣き顔を見せれないと思い、タクシーで逃げた。
明日からまた会おうと心に誓った。
ふと空を見る。そこには雨上がりの大きな虹が映っていた。
「綺麗…」
私は無意識に言葉を発する。
運転手は初老の女性だった。
昨日の雨は大変でしたでしょう?そんなふうに心配の声をかけてくれる。
「昨日急に振り出してしまって、来てもらったとこで一泊してたんです。」
そう言うと、運転手さんは優しげにこう言った。
「風邪引いてなさそうで良かったわ。」
私もそう思う。昨日突然倒れ夜嵐に迷惑かけただろう。
不幸中の幸いだ。
タクシーに流れるラジオの天気予報が耳に入る。
「昨日、首都圏を襲った豪雨、明日もまだまだ雨が続きそうです。今現在、新宿は丁度晴れですが、油断禁物です。お気をつけていってらっしゃいませ。」
(夜、また雨かな?)
また窓を見る。
そこに渋谷行きの電車が虹の下を通る。
ここからは見えないが、夜嵐が乗っていうる電車だろうか。
そんな事を考えると逃げた自分が恥ずかしくなった。
ガタンッゴトンッ一定間隔で揺らされる。
ついに渋谷についた。
ドアが開くと多種多様な人が降り、その脇で乗りたい人が待っている。
俺は降りる波と一緒に降り、ホームに向かった。
人が密集したら当たるだろう。日本人は世界的には珍しいもので当たるまいと、自ら避け当たらないように行動する。しかし当たると慣れば相手に舌打ちをする。
自分は悪くないかと言うように対応をする。
ホームから出て少し歩くと眼前に大きな門が佇む。
門や門外から見える校舎からは、古き良き雰囲気が漂う。
(一応東京の大学なんだがな…。)
俺は都会なのにここだけ田舎の雰囲気を漂わせるのはどうかと思った。
いつも通り、数時間の講義をメモり、変える準備をしつつ、同じセミの友人としゃべっていた。
30分ほど雑談をし、友人は帰るということなので、俺は一人で昼食に向かった。
いつも食堂で食べてるわけじゃないが、今日は食堂で食べたい気分だった。
キャンパスが看板メニューとして紹介しているカツカレー食べてみようと思った。
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