146 / 151
闘いの訳
しおりを挟む
あれから時間が経ち、ついに夜の11時。戦いの時となった。
袖女は既に起床し、動かない俺をじっと見つめている。
「…………」
「さっきからどうしたんですか……? さっきからそこを動かずに……」
正直、袖女の質問なんて聞いていられない。俺は今から死地に行く。そのためには、手先の感覚を最大限に研ぎ澄まし、戦闘態勢を整える必要がある。
「……おーい」
「……うるせぇ、少し黙ってろ」
「…………」
体の中の闘力のチェック。反射が正常に使えるかの確認。今回はブラックも連れて行かせる。ブラックも元々は大阪派閥の兵士。十二支獣と対面させる事で何かが起こるかもしれない。だが、あくまで戦うのは俺なのだ。そんなまさかの可能性に頼ってはいられない。
(俺が戦うんだ……俺が……)
「…………」
「何馬鹿なことやってるんですか?」
「……何?」
袖女が放った一言。その一言は、俺の心を現実に戻すのに、十分な言葉だった。
「聞こえませんでしたか? 何馬鹿なことやってるんだって言ったんです」
「……あんまり調子に乗るなよ」
返事をした俺を、袖女はまた俺をじっと見つめる。それが数秒続いた後、袖女は、はぁとため息を吐いた。
「……もういいです。何をするのかは知りませんが、がんばってくださいね」
袖女はそう言った後、洋室の中に入っていた。
(……何だったんだ)
まあいい、やる事はやったんだ。
「………戦いの時だ」
――――
「もう少しかな……」
あの後、俺は遂に外に出て、暗い夜道を歩いていた。
「クゥーン……」
「……何だ? 怖がってるのか?ブラック」
ブラックは、昨日の事も相まって、暗い夜道をかなり怖がっているようだ。また襲われるんじゃないかと思っているんだろう。
……残念ながら、それは現実になるわけだが。
「ヘッ、来やがったか……」
急に頭上から感じる殺気。この時間帯、この場所で、俺の頭上に感じる殺気と言えば、1つしかない。
俺は頭上から感じる殺気に対し、ブラックを瞬時に担いで後ろに向かって飛び跳ねる。事前の情報では、ここで襲いかかってくる十二支獣には、龍は微妙だが、空中で移動できるものはなかった為、これだけで回避することが可能なわけだ。
「いいねぇ、この隠さない殺気……ビリビリくる」
地面に着地したことによる煙が晴れ、そこに現れたのは3体の動物。
1体は虎。大きな体をしているが、ヤクザの本拠地で見た虎程のでかさはない。
1体は兎。体毛は白く、体格もそこまで大きくはない至って普通の兎だ。
1体は龍。龍なのだが…………
(龍は龍でも、トカゲかよ)
そう。トカゲ。めちゃくちゃでかいトカゲだ。どちらかと言うとコモドドラゴンに似ている。なるほど、だから龍か。翼はなく、どうやら飛べないらしい。
「ク、クゥーン……」
ブラックは妙にあの3体を怖がっている。
…………さっきから怖がってばかりだな。
「……さて、やるか」
俺は担いでいたブラックを地面に置き、3体に向かって殺気を飛ばした。
……さぁ、殺し合いのスタートだ。
――――
「……始まったね」
「……ああ」
ネーリエンとベドネは、いつもの部屋でカメラから得た画面をモニターに映していた。
「うーん……」
「どうしたベドネ? 何か不満そうだな」
「フェアじゃないと思ってね。彼は戦場にいるのに、僕たちはこんなところに居ていいのかなって……」
「フッ……何を言うかと思えば、そんなバカな事を。お前らしくないぞ。もともと戦いと言うのは、いかに相手にアンフェアを押し付けるかと言うものだ。奴は戦場にいて、こっちは安全地帯。むしろこれが本当の戦いなんだよ」
「……そうかい」
そう言うと、ベドネはそれ以上言わず、じっとモニターを見つめた。
「……フッ、とは言っても、戦いにもならないだろうがな」
「……それは早計じゃないかな。虎だってまだ十二支獣になりたてでしょ」
「早計ではないさ、確かに虎はまだまだ不十分な点がある。しかし、大阪派閥が誇る十二支獣に楯突いた時点で、奴の負けは決まっている」
「勝つのは当然…………十二支獣さ」
袖女は既に起床し、動かない俺をじっと見つめている。
「…………」
「さっきからどうしたんですか……? さっきからそこを動かずに……」
正直、袖女の質問なんて聞いていられない。俺は今から死地に行く。そのためには、手先の感覚を最大限に研ぎ澄まし、戦闘態勢を整える必要がある。
「……おーい」
「……うるせぇ、少し黙ってろ」
「…………」
体の中の闘力のチェック。反射が正常に使えるかの確認。今回はブラックも連れて行かせる。ブラックも元々は大阪派閥の兵士。十二支獣と対面させる事で何かが起こるかもしれない。だが、あくまで戦うのは俺なのだ。そんなまさかの可能性に頼ってはいられない。
(俺が戦うんだ……俺が……)
「…………」
「何馬鹿なことやってるんですか?」
「……何?」
袖女が放った一言。その一言は、俺の心を現実に戻すのに、十分な言葉だった。
「聞こえませんでしたか? 何馬鹿なことやってるんだって言ったんです」
「……あんまり調子に乗るなよ」
返事をした俺を、袖女はまた俺をじっと見つめる。それが数秒続いた後、袖女は、はぁとため息を吐いた。
「……もういいです。何をするのかは知りませんが、がんばってくださいね」
袖女はそう言った後、洋室の中に入っていた。
(……何だったんだ)
まあいい、やる事はやったんだ。
「………戦いの時だ」
――――
「もう少しかな……」
あの後、俺は遂に外に出て、暗い夜道を歩いていた。
「クゥーン……」
「……何だ? 怖がってるのか?ブラック」
ブラックは、昨日の事も相まって、暗い夜道をかなり怖がっているようだ。また襲われるんじゃないかと思っているんだろう。
……残念ながら、それは現実になるわけだが。
「ヘッ、来やがったか……」
急に頭上から感じる殺気。この時間帯、この場所で、俺の頭上に感じる殺気と言えば、1つしかない。
俺は頭上から感じる殺気に対し、ブラックを瞬時に担いで後ろに向かって飛び跳ねる。事前の情報では、ここで襲いかかってくる十二支獣には、龍は微妙だが、空中で移動できるものはなかった為、これだけで回避することが可能なわけだ。
「いいねぇ、この隠さない殺気……ビリビリくる」
地面に着地したことによる煙が晴れ、そこに現れたのは3体の動物。
1体は虎。大きな体をしているが、ヤクザの本拠地で見た虎程のでかさはない。
1体は兎。体毛は白く、体格もそこまで大きくはない至って普通の兎だ。
1体は龍。龍なのだが…………
(龍は龍でも、トカゲかよ)
そう。トカゲ。めちゃくちゃでかいトカゲだ。どちらかと言うとコモドドラゴンに似ている。なるほど、だから龍か。翼はなく、どうやら飛べないらしい。
「ク、クゥーン……」
ブラックは妙にあの3体を怖がっている。
…………さっきから怖がってばかりだな。
「……さて、やるか」
俺は担いでいたブラックを地面に置き、3体に向かって殺気を飛ばした。
……さぁ、殺し合いのスタートだ。
――――
「……始まったね」
「……ああ」
ネーリエンとベドネは、いつもの部屋でカメラから得た画面をモニターに映していた。
「うーん……」
「どうしたベドネ? 何か不満そうだな」
「フェアじゃないと思ってね。彼は戦場にいるのに、僕たちはこんなところに居ていいのかなって……」
「フッ……何を言うかと思えば、そんなバカな事を。お前らしくないぞ。もともと戦いと言うのは、いかに相手にアンフェアを押し付けるかと言うものだ。奴は戦場にいて、こっちは安全地帯。むしろこれが本当の戦いなんだよ」
「……そうかい」
そう言うと、ベドネはそれ以上言わず、じっとモニターを見つめた。
「……フッ、とは言っても、戦いにもならないだろうがな」
「……それは早計じゃないかな。虎だってまだ十二支獣になりたてでしょ」
「早計ではないさ、確かに虎はまだまだ不十分な点がある。しかし、大阪派閥が誇る十二支獣に楯突いた時点で、奴の負けは決まっている」
「勝つのは当然…………十二支獣さ」
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。
隣のカキ
ファンタジー
国家存亡の危機を救った英雄レイベルト。彼は幼馴染のエイミーと婚約していた。
婚約者を想い、幾つもの死線をくぐり抜けた英雄は戦後、結婚の約束を果たす為に生まれ故郷の街へと戻る。
しかし、戦争で負った傷も癒え切らぬままに故郷へと戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにするのだった……
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
子育て失敗の尻拭いは婚約者の務めではございません。
章槻雅希
ファンタジー
学院の卒業パーティで王太子は婚約者を断罪し、婚約破棄した。
真実の愛に目覚めた王太子が愛しい平民の少女を守るために断行した愚行。
破棄された令嬢は何も反論せずに退場する。彼女は疲れ切っていた。
そして一週間後、令嬢は国王に呼び出される。
けれど、その時すでにこの王国には終焉が訪れていた。
タグに「ざまぁ」を入れてはいますが、これざまぁというには重いかな……。
小説家になろう様にも投稿。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる