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不便
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卵粥を食べ終わった後、俺は何もせず、ぼーっとしていた。
(何か忘れているような……)
何か喉に詰まっているような感覚。何か変だ。
「…………あ!!」
(……設計図渡してねーじゃん!!!)
やらかした。設計図を渡す時間は、実行した日の次の日の朝10時。
しかし、俺は丸一日寝ていて、設計図を渡すことができなかった。
……完全に時間をオーバーしている。
「やっべぇ……」
そうと決まれば、すぐにでもパソコンのメールで闇サイトに連絡しなければならないのだが、今の俺の両腕では、パソコンのキーボードを打ち込むところか、このベッドから起き上がることさえ難しい。
「どうしよ……」
「ん? ……何か言いましたか?」
俺が考えていた事に、何故か袖女が反応する。どうやら自然に声が出てしまっていたようだ。
……こうなったら、袖女にやってもらうか。
袖女は、俺が任務をしている事は知っているが、そのために闇サイトを使っている事は知らない。こちらの都合の悪い事は知らないのだ。
袖女は元々黒のポーン、正義を体現したような部隊であるチェス隊なのだ。闇サイトを使っているなんて知られれば、後ろめたさで協力してくれなかったかもしれないが……それを知らないのならば、協力してくれる事は間違いない。
「……任務で報酬をもらうのを忘れていてな」
「えぇ……何やってんすか?」
「悪い……パソコンでメールしておいてくれないか?」
「はいはい……」
意外に袖女は素直に従い、俺のパソコンの電源を入れ、妙にすらすらとメール欄に移動し、メール内容を打ち込んでいく。
「出し終わりましたよ~」
数分経つと、メール内容を打ち込み終わったらしく、俺に向かって声を発してきた。
「なんて書いた?」
「え~と……怪我をしてしまったので、治った時に改めてお願いいたします……何か駄目でしたか?」
「いや、問題ない」
「必要な時は別に呼んでもいいですからね。
その内容なら大丈夫だ。
…………それにしても。
「不便だ……」
――――
「あまりに帰りが遅いから、タウロスに様子を見にいかせてみれば…………これは一体どういうことだい?」
「……俺が聞きたい」
とある1室。ベドネと名乗る男がネーリエンを名乗る男に向かって、1つの物体を眺めながら、そう言葉を発する。
「なぜ"虎"が死んだ?」
4メートルの巨体。本来ならば、猛々しいオーラを放つその姿は。
いまや見るも無残。オーラもクソもなく、血を滴らせながら横に倒れていた。
「ネームドではなかったとは言え……"虎"はそこらの奴にやられるような獣ではない……ヤクザに複数のハイパースキル保持者がいたということだろう」
「いや、それはないよ」
「何故だ」
「僕の"ランク探知"にハイパークラスのスキル保持者は1人しかいなかった。ヤクザの中には間違いなくハイパースキル保持者は1人しかいなかったよ」
「……そうか」
「それよりも、何故殺されたかを考えた方がいいはずだよ。相手のスキルが断定できれば、それに有効な子たちを当てることができる」
「それもそうだな……よし、任せろ」
ネーリエンは虎に触れると、その手を中心に光が発生する。ゲームでよくあるスキャンするような、そんな衝撃波のような青白い光。それは虎の体をしばらく照らした後、急にふっとその光は消えていった。
「体毛に煤や小石が大量に付着していた。外側から破裂しているような傷があるのを見る限り、何か爆発に巻き込まれたようだな」
「爆発か……かなり攻撃的なスキルだね……」
「……だが、ヤクザのハイパースキル保持者ではないだろうな」
「だろうね、もしそうなのなら、移動するはずだからね。わざわざヤクザの本拠地で自分たちの建物を壊しながら戦う理由がない……」
ベドネは少し考え込む動作をして、改めてネーリエンに向かって問いかける。
「死亡の原因は何だい?」
「ちょっと待ってろ……」
ネーリエンは改めて虎の死体に触れて、光を発する。どうやらいちいち触れる必要があるようだ。
「…………」
「……? どうしたんだいネーリエン?」
「あ、あぁ……」
「死因は……首元の切り傷による出血多量」
「…………」
その死因を知ったとき、ベドネの動きがピタリと止まる。
「それは……そうだね……」
「あの親不孝者の可能性があるってことだね」
(何か忘れているような……)
何か喉に詰まっているような感覚。何か変だ。
「…………あ!!」
(……設計図渡してねーじゃん!!!)
やらかした。設計図を渡す時間は、実行した日の次の日の朝10時。
しかし、俺は丸一日寝ていて、設計図を渡すことができなかった。
……完全に時間をオーバーしている。
「やっべぇ……」
そうと決まれば、すぐにでもパソコンのメールで闇サイトに連絡しなければならないのだが、今の俺の両腕では、パソコンのキーボードを打ち込むところか、このベッドから起き上がることさえ難しい。
「どうしよ……」
「ん? ……何か言いましたか?」
俺が考えていた事に、何故か袖女が反応する。どうやら自然に声が出てしまっていたようだ。
……こうなったら、袖女にやってもらうか。
袖女は、俺が任務をしている事は知っているが、そのために闇サイトを使っている事は知らない。こちらの都合の悪い事は知らないのだ。
袖女は元々黒のポーン、正義を体現したような部隊であるチェス隊なのだ。闇サイトを使っているなんて知られれば、後ろめたさで協力してくれなかったかもしれないが……それを知らないのならば、協力してくれる事は間違いない。
「……任務で報酬をもらうのを忘れていてな」
「えぇ……何やってんすか?」
「悪い……パソコンでメールしておいてくれないか?」
「はいはい……」
意外に袖女は素直に従い、俺のパソコンの電源を入れ、妙にすらすらとメール欄に移動し、メール内容を打ち込んでいく。
「出し終わりましたよ~」
数分経つと、メール内容を打ち込み終わったらしく、俺に向かって声を発してきた。
「なんて書いた?」
「え~と……怪我をしてしまったので、治った時に改めてお願いいたします……何か駄目でしたか?」
「いや、問題ない」
「必要な時は別に呼んでもいいですからね。
その内容なら大丈夫だ。
…………それにしても。
「不便だ……」
――――
「あまりに帰りが遅いから、タウロスに様子を見にいかせてみれば…………これは一体どういうことだい?」
「……俺が聞きたい」
とある1室。ベドネと名乗る男がネーリエンを名乗る男に向かって、1つの物体を眺めながら、そう言葉を発する。
「なぜ"虎"が死んだ?」
4メートルの巨体。本来ならば、猛々しいオーラを放つその姿は。
いまや見るも無残。オーラもクソもなく、血を滴らせながら横に倒れていた。
「ネームドではなかったとは言え……"虎"はそこらの奴にやられるような獣ではない……ヤクザに複数のハイパースキル保持者がいたということだろう」
「いや、それはないよ」
「何故だ」
「僕の"ランク探知"にハイパークラスのスキル保持者は1人しかいなかった。ヤクザの中には間違いなくハイパースキル保持者は1人しかいなかったよ」
「……そうか」
「それよりも、何故殺されたかを考えた方がいいはずだよ。相手のスキルが断定できれば、それに有効な子たちを当てることができる」
「それもそうだな……よし、任せろ」
ネーリエンは虎に触れると、その手を中心に光が発生する。ゲームでよくあるスキャンするような、そんな衝撃波のような青白い光。それは虎の体をしばらく照らした後、急にふっとその光は消えていった。
「体毛に煤や小石が大量に付着していた。外側から破裂しているような傷があるのを見る限り、何か爆発に巻き込まれたようだな」
「爆発か……かなり攻撃的なスキルだね……」
「……だが、ヤクザのハイパースキル保持者ではないだろうな」
「だろうね、もしそうなのなら、移動するはずだからね。わざわざヤクザの本拠地で自分たちの建物を壊しながら戦う理由がない……」
ベドネは少し考え込む動作をして、改めてネーリエンに向かって問いかける。
「死亡の原因は何だい?」
「ちょっと待ってろ……」
ネーリエンは改めて虎の死体に触れて、光を発する。どうやらいちいち触れる必要があるようだ。
「…………」
「……? どうしたんだいネーリエン?」
「あ、あぁ……」
「死因は……首元の切り傷による出血多量」
「…………」
その死因を知ったとき、ベドネの動きがピタリと止まる。
「それは……そうだね……」
「あの親不孝者の可能性があるってことだね」
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