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虎
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「こいつは……!?」
4メートルほどの大きさの虎。ここまでの大きさは2070年になった今でも発見されていない。
4メートルと言われても、わからない人もいるだろう。そんな人に説明するならば、2階建てのアパートぐらいのデカさだ。
そんな笑えるほどでかいサイズの虎が目の前に現れ、どしどしとこちらに歩いてくる。普通の人間ならば失禁するほど恐ろしいだろう。
だが、俺は今まで虎よりも恐ろしい相手と戦ってきた。少しでかい程度の動物ではうろたえない。本当に恐ろしいのは、体躯なんて表面上のものではなく、その体に秘められしエネルギーから放たれる威圧感にあるからだ。
だからどんなに大きいかろうが、力が伴っていなければどうということはない。
(だが……こいつは……)
そのとてつもなく大きな体躯。そしてそれに見合うまでの圧倒的な威圧感。これは神奈川の時の袖女……いや、それ以上になるかもしれない。少なくとも、人が戦った虎の中では、最高峰の強さを持つ虎だろう。
「…………」
俺の前で立ち尽くしているジジイも、あの虎の潜在能力の高さに気づいたようで、虎の方を見たまま動かない。その目からはあの虎はどういう風に見えているのだろうか。圧倒的な格上なのだろうか、それともあの虎の強さを見通しているのか。
……いや、そんな事はどうでもいい。今はあの虎が、害があるのかないのか。それが重要だろう。
(……まぁ、そんなの考える必要もないけどな)
虎は先ほどからこちらに向かって歩いてくる。害があるのか無いのかなど、火を見るよりも明らかだろう。
「はぁ……次から次へと……」
ジジイはそう言いながら、ゆらりゆらりと踏み出す。それにはどこか貫禄があり、自信に満ちた足取りだ。
(……マジ? 行ってくれんの?)
そうだとしたらとてもありがたい。俺には何の被害もなく、あの虎の動きを見ることができる。そのままジジイがあの虎を殺すとしても、その間に設計図を奪ってトンズラすればいいだけの話。
「どこの誰かは知らんが……わしの屋敷に手を出す様なら……」
その瞬間、ジジイの体がヒュッと消える。
「!? ……いつの間に」
気づくと、ジジイは虎の目の前まで一瞬で移動していた。おそらく、未来代わりによって未来の自分に体を移動させたのだろう。本当に応用が利く能力だ。
「死ね」
ジジイの拳が虎に向かって放たれる。その威力は俺が身をもって知っている。直撃すれば、死にはせずとも絶大なダメージは逃れられない。
その拳はしっかりと明確に、虎の足の部分に突き刺さり……
ジジイはぱっくりと、頭から噛まれ、血を吹き出した。
「……え?」
「……は?」
俺が呆然としている間にも、虎はゴリゴリと音を立て、骨を噛み砕き、ジジイの筋肉質な体を喉に流し込んでいく。その音は嫌になるほど生々しく、人間が明確に死んだことを表していた。
「うわぁ……グッロォ……」
虎がジジイを喉に流している時にも、瓦礫に滴った大量の血や足等の食べ残しは、人間を殺し慣れている俺でも、少し嗚咽感を覚えてしまうほどグロッキーだ。
そして、ジジイを始末したと言う事は……
「あ~やっぱり俺?」
もちろん、次は俺を標的にする。
「さて、とぉ……」
俺は悲鳴をあげた体に喝を入れ、体をゆっくりと起き上がらせる。できるだけ負担をかけないように、闘力を全身に流し込み、できるだけ痛みを感じないように慎重に起きる。
「どうやって……勝つかねぇ……?」
ちなみにだが、俺はまだ勝ちを諦めていない。ジジイとの戦いはマジで勝ちの目が見えなかったが、敵が変われば話は別。体力の半分ほどは持っていかれているが、動けないほどではない。闘力操作を使えば問題ない。
あのジジイの拳を受けてもうんともすんともしていないところは不自然だが、相当打たれ強い種類の虎なのだろう。
動物にはスキルが宿らない。それは虎も例外ではなく、人間以外の生物にはスキルが宿らないというのが常識だ。
なので……
「様子を見る必要はない」
俺は空気反射などの遠距離攻撃を使わず、反射で速度を上げダッシュ。右腕を振りかぶり、虎に向かって殴りつける。
なぜ遠距離攻撃をしなかったのか。それは単純に威力がないからだ。
あのジジイの攻撃を受け止めたともなると、俺の遠距離攻撃など蚊に刺されたレベルと思われる。
ならばその威力に極力近い、俺の最高火力の殴りつけで行くしかない。そして殴った瞬間に後ろに下がることで、虎の強靭な牙でのカウンターを無力化する。
ジジイが食われたのは不意打ちを受けたからで、実力で負けたわけではない。実力だけで言えば、ジジイの方がはるかに勝っているだろう。
だからこそ、あのカウンターは警戒する。
さすがに一撃では沈まないだろうが、何回も繰り返せばいつかは倒れるだろう。そんな楽観的な考えで、俺はこの考えを実行に移したのだ。
そうして……俺と虎の距離がゼロになる。
「チッ……」
俺の拳は直撃したが、やはりダメージを与えるには至らない。俺はその打たれ強さに驚きながらも、すぐに離脱する準備を整え、虎の懐から逃れるために後ろへ飛び跳ね、離脱する。
(よし……後はこれを繰り返すだけ……)
そう考え、また虎のほうに向き直ったその時。
目の前には、大きな5本爪のような衝撃波が迫ってきていた。
4メートルほどの大きさの虎。ここまでの大きさは2070年になった今でも発見されていない。
4メートルと言われても、わからない人もいるだろう。そんな人に説明するならば、2階建てのアパートぐらいのデカさだ。
そんな笑えるほどでかいサイズの虎が目の前に現れ、どしどしとこちらに歩いてくる。普通の人間ならば失禁するほど恐ろしいだろう。
だが、俺は今まで虎よりも恐ろしい相手と戦ってきた。少しでかい程度の動物ではうろたえない。本当に恐ろしいのは、体躯なんて表面上のものではなく、その体に秘められしエネルギーから放たれる威圧感にあるからだ。
だからどんなに大きいかろうが、力が伴っていなければどうということはない。
(だが……こいつは……)
そのとてつもなく大きな体躯。そしてそれに見合うまでの圧倒的な威圧感。これは神奈川の時の袖女……いや、それ以上になるかもしれない。少なくとも、人が戦った虎の中では、最高峰の強さを持つ虎だろう。
「…………」
俺の前で立ち尽くしているジジイも、あの虎の潜在能力の高さに気づいたようで、虎の方を見たまま動かない。その目からはあの虎はどういう風に見えているのだろうか。圧倒的な格上なのだろうか、それともあの虎の強さを見通しているのか。
……いや、そんな事はどうでもいい。今はあの虎が、害があるのかないのか。それが重要だろう。
(……まぁ、そんなの考える必要もないけどな)
虎は先ほどからこちらに向かって歩いてくる。害があるのか無いのかなど、火を見るよりも明らかだろう。
「はぁ……次から次へと……」
ジジイはそう言いながら、ゆらりゆらりと踏み出す。それにはどこか貫禄があり、自信に満ちた足取りだ。
(……マジ? 行ってくれんの?)
そうだとしたらとてもありがたい。俺には何の被害もなく、あの虎の動きを見ることができる。そのままジジイがあの虎を殺すとしても、その間に設計図を奪ってトンズラすればいいだけの話。
「どこの誰かは知らんが……わしの屋敷に手を出す様なら……」
その瞬間、ジジイの体がヒュッと消える。
「!? ……いつの間に」
気づくと、ジジイは虎の目の前まで一瞬で移動していた。おそらく、未来代わりによって未来の自分に体を移動させたのだろう。本当に応用が利く能力だ。
「死ね」
ジジイの拳が虎に向かって放たれる。その威力は俺が身をもって知っている。直撃すれば、死にはせずとも絶大なダメージは逃れられない。
その拳はしっかりと明確に、虎の足の部分に突き刺さり……
ジジイはぱっくりと、頭から噛まれ、血を吹き出した。
「……え?」
「……は?」
俺が呆然としている間にも、虎はゴリゴリと音を立て、骨を噛み砕き、ジジイの筋肉質な体を喉に流し込んでいく。その音は嫌になるほど生々しく、人間が明確に死んだことを表していた。
「うわぁ……グッロォ……」
虎がジジイを喉に流している時にも、瓦礫に滴った大量の血や足等の食べ残しは、人間を殺し慣れている俺でも、少し嗚咽感を覚えてしまうほどグロッキーだ。
そして、ジジイを始末したと言う事は……
「あ~やっぱり俺?」
もちろん、次は俺を標的にする。
「さて、とぉ……」
俺は悲鳴をあげた体に喝を入れ、体をゆっくりと起き上がらせる。できるだけ負担をかけないように、闘力を全身に流し込み、できるだけ痛みを感じないように慎重に起きる。
「どうやって……勝つかねぇ……?」
ちなみにだが、俺はまだ勝ちを諦めていない。ジジイとの戦いはマジで勝ちの目が見えなかったが、敵が変われば話は別。体力の半分ほどは持っていかれているが、動けないほどではない。闘力操作を使えば問題ない。
あのジジイの拳を受けてもうんともすんともしていないところは不自然だが、相当打たれ強い種類の虎なのだろう。
動物にはスキルが宿らない。それは虎も例外ではなく、人間以外の生物にはスキルが宿らないというのが常識だ。
なので……
「様子を見る必要はない」
俺は空気反射などの遠距離攻撃を使わず、反射で速度を上げダッシュ。右腕を振りかぶり、虎に向かって殴りつける。
なぜ遠距離攻撃をしなかったのか。それは単純に威力がないからだ。
あのジジイの攻撃を受け止めたともなると、俺の遠距離攻撃など蚊に刺されたレベルと思われる。
ならばその威力に極力近い、俺の最高火力の殴りつけで行くしかない。そして殴った瞬間に後ろに下がることで、虎の強靭な牙でのカウンターを無力化する。
ジジイが食われたのは不意打ちを受けたからで、実力で負けたわけではない。実力だけで言えば、ジジイの方がはるかに勝っているだろう。
だからこそ、あのカウンターは警戒する。
さすがに一撃では沈まないだろうが、何回も繰り返せばいつかは倒れるだろう。そんな楽観的な考えで、俺はこの考えを実行に移したのだ。
そうして……俺と虎の距離がゼロになる。
「チッ……」
俺の拳は直撃したが、やはりダメージを与えるには至らない。俺はその打たれ強さに驚きながらも、すぐに離脱する準備を整え、虎の懐から逃れるために後ろへ飛び跳ね、離脱する。
(よし……後はこれを繰り返すだけ……)
そう考え、また虎のほうに向き直ったその時。
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