上 下
96 / 151

ゲームプレイ

しおりを挟む
 帰った後、何故か俺は袖女にゲームに誘われていた。

「……なんでだ?」

「……へ?」

「なんでゲームしたいんだ?」

 まず聞かねばならない事はこれだろう。なぜよりにもよって俺と、しかもゲームなのか。

 特訓とかならまだわからなくはない。袖女だって戦闘する職業だし、それならば攻撃をぶつける相手も俺しかいないため、まだ理解できる。
 しかし、ゲームだと? 娯楽だと? 前日まであんなに口が悪くて、俺の分の夜ご飯さえ作ってくれなかったこいつが?


 …………熱を出しているのか、それとも頭を打ったのか、おそらくこの2択に違いない。


「…………暇、だったんですよ……」

「…………?」

「暇!! だったんですよ!!!」

「…………暇?」

 暇だっただと? それはありえない。こいつには家の家事が山ほどあるはずだ。洗濯にご飯、ブラックのご飯に家の掃除、買い出しやらパートやら何から何までやること成すことてんこ盛りのはずだ。

「お前、家事は?」

「もう終わりましたよ……だから暇なんですよ」

 もう終わってる? ありえるのかそんな事? まだ2時過ぎだぞ。

「……昨日はどれぐらいに終わってたんだ?」

「やり始めたら…………1時間たった位には」

「…………」

 まじか。速い、速すぎる。袖女の家事スキルを少しばかりなめていたようだ。もう少し多くても問題ないらしい。

 しかし、暇か…………

「そっ、それで! どうなんですか!! やらないんですか!?」

「…………まぁ、やる事は決めてなかったし……やってやらんこともないが……」

「そんな曖昧にしないでください!! やるか、やらないか!! どっちなんですか!!」

「お……おう…………」

 まぁ断る理由はないが……袖女のこんなにも真剣な瞳を初めて見た。もしかしたら神奈川で殺し合う1時以上かもしれない。それに、どうせなら機嫌が良い方がこちらとしても住みやすい。


 …………しょうがないか。


「わかったわかった。やってやる。やってやるから」

 こちらも少し気分転換がしたかったところだ。こちらとしても構わない。

「…………!! じゃあ、早速やりましょう! ほらっ、準備はしてますから!」

「はいはい……」

 袖女につられるがまま、リビングに続く廊下を歩き、ついにリビングにたどり着く。そこには、世間に疎い俺でも知っているような最新式のゲーム機がテレビに繋がれていた。
 袖女は手に持った俺のジャケットをクローゼットにしまうところだった。
 それにしても袖女は本当に準備が良い。家事の事といい今回のことといい、袖女はかなり当たりだったらしい。


 ……待てよ? 準備した?


「……おい。これどこで買ったんだ?」

 俺の記憶が正しければ、このゲーム機は6万以上する代物だったはず。

 無論、ウチにそんな高価なものを買う金はない。いったいどこからこんなに高いものを用意したのか。

「ああ、心配しないでください。貰い物なので」

「……貰い物? 誰に?」

「パートのおばさんですよ。興味ないからってもらったんです」

 そうだったのか、危ない危ない。もし無断で買っていたら、こいつを地中海に埋めているところだった。

 それにしても、なんて素晴らしいおばさんなんだ。やはり高齢の方は優しく、そして神だったんだ。

 俺は心の中でおばさんに感謝を述べ、袖女と同じく、ゲーム機の前に座り込む。

「さて…………私にボコボコにされる準備はいいですか?」

「へっ……現実でもゲームでも、お前は俺にズタズタにされるのさ」

 お互いの意気込みを述べ、ついにゲームがスタートする。
 ゲームの内容は格闘ゲーム。お互いに体力が0になったら負けのいたってシンプルなゲームだ。

 だが、単純なゲームと侮ることなかれ。腐っても最新式。
 画質はもちろん最高だし、その幅広い攻撃の種類は凄まじい戦略性を生み出す。



 お互いのキャラを選び、ついにゲームがスタートした。








 ――――








 3時間後………



「死ねええええええええええええええええ!!!!」

「はい残念ジャスガでぇぇぇす!!!!」

「とでも思っていたのか?」

「なっ! 掴みだと!!!?」

「くらえや下投げぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「うぎゃああああああす!!!!」



 このありえないような奇声をあげているのは、もちろんのこと、俺と袖女だった。

 もともと1時間程度で終わりにする予定だったのだが、最新のゲームと言うのがあまりにも面白すぎた。

 先に言った戦略性の高さに加え、美麗なバトルフィールド。コマンド入力による必殺技。さらには掴みにも様々な種類があり、場所と状況によっては、一つ一つが強力な技となる。
 やりこみ要素満載なこのゲームにハマらない理由がなかった。

 それはもうそれはもう殺し合いまくった。

 ある時はやばい位に圧勝したり、ある時は勝ったと思い、最後の一撃を繰り出したらカウンターを打たれ逆転負けしたり、連続でお互いに攻撃を切り出し、攻撃の相殺が続いたり、とにかく頭をバカにしてゲームを楽しんでいた。

「終わりだァァァァァァァァァ!!!!」

「負けたぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「俺の勝ちだ袖女!! この雑魚が!!」

「うう……こんな冴えない普通顔に負けるなんて……」







 そうして、俺の1日はまだまだ続いていく。







 ちな、今日の夜ご飯もカップラーメンでした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

新人神様のまったり天界生活

源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。 「異世界で勇者をやってほしい」 「お断りします」 「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」 「・・・え?」 神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!? 新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる! ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。 果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。 一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。 まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜

Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・ 神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する? 月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc... 新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・ とにかくやりたい放題の転生者。 何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」       「俺は静かに暮らしたいのに・・・」       「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」       「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」 そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。 そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。 もういい加減にしてくれ!!! 小説家になろうでも掲載しております

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

処理中です...