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幕間 信じようとするほどに

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 リムジンに揺られ、東京から神奈川への道を通っていく。
リムジンは3台あり、僕たちはその一つに乗り込み神奈川へと向かっていた。
 他の男性陣はとても楽しそうに神奈川の魅力を語っており、その中で1人、友隣ちゃんだけは無表情で窓の外を見つめていた。








 ――――








「東京派閥の皆様。よく来てくださいました」

 朝から3時間かけ、やっとこさ会場へたどり着いた。
 リムジンから降りると、神奈川の案内人らしき方が僕たちを出迎える。案内人の方はもちろんのこと女であり、後ろの優斗くんたち男性陣のテンションが密かに上がったことを感じられた。
 会場は完全な豆腐建築であり、3時間かけたにしては達成感を感じない会場だった。

(豆腐建築なんて言葉……教えてくれたのも伸太だったっけ)

 唐突に思い出した昔の思い出に浸りながらも、会場の中へと歩を進めていった。

 中はさすが神奈川といったところか、隅から隅まで真っ白けな近未来な作りだ。

 案内人に案内されるがまま、会場の中を歩いて行く。

 内装は驚くほど一緒でこのまま出られないんじゃないかと少し怖くなってしまうほどだ。
 少しすると、廊下の突き当たりに大きなドアが見えてきた。案内人はその大きなドアにたどり着くと、くるっとこちらに向き直る。

「この先が取引が行われる場所になっております。チェス隊の方々もこの先にお待ちになられております」

 どうやらこの先が本会場となっているようだ。

「こ……この先にチェス隊の方々がいらっしゃるんですか!?」

 宗太郎くんがチェス隊と言う言葉に敏感に反応する。
 やはり男子には、チェス隊と会えると言う事は夢のようなことらしい。

「おい宗太郎! 口を慎め! 今回は遊びに来たわけではなく、立派な任務なんだぞ!!」

「なんだよ優斗! お前だって楽しみなんじゃないのか? お前のイチオシの紫音ちゃんにも出会えるんだぜ!?」

「お前っ!! 今それを言うな!」

 なるほど、推しか。優斗くんにとっても少し楽しみだったのか、宗太郎くんに言われっぱなしになっている。

 ………ここは僕が言うべきか。


「2人とも? 私語は良くないよ?」

「すいません!」「つい……申し訳ありません」

 僕が注意すると、2人はすぐに僕に向き直り、謝罪の言葉を述べた。

「一段落ついたようであれば、お話の続きをさせていただきたいのですが……」

「構いません」

「……かしこまりました」

 東京代表が案内人の発した言葉に返答する。
 まさか東京代表から言葉を回されると思っていなかったのか、少し驚く様子が見えた。
 驚くのも無理は無い。なんせ、東京代表に選ばれたのは東京にとっても他派閥にとっても超ビッグ。


 あの異能大臣なのだから。








 ――――








 東京代表が異能大臣だと知ったのは、神奈川に向かって出発するすぐ前の事だ。
 先生から放たれたセリフに合わせて登場する異能大臣には、それ相応の貫禄と威厳が感じられた。
 そんな中、唯一意見を述べたのが雄馬くんだった。

「わざわざ異能大臣が行く必要は無いのでは? いくら神奈川と言えど、他の派閥の領内と言うのは変わりありません。他の方が出席なされたほうがよろしいのでは」

「今回の取引はマスコミから生中継されることになる。生で見られる以上、ある程度上の人物の方が都合がいい。そこで白羽の矢が立ったのが異能大臣と言うわけだが……文句はいわせんぞ? もう上が決定したことなのだ。お前がこれ以上わめこうがこの決定は覆らん」

「……了解しました」








 ――――








 ……無駄なことを思い出してしまった。

「では……こちらへ」

 がちゃりと音を立て、ドアがゆっくりと開いていく。そのいかにもな風景に少し見とれてしまった。


 そして、その奥には。


「こんちわー!!」「……どうも」「…………」「よくおいでくださいました」

 元気よく挨拶する人もいれば、少しそっけない挨拶の人や全く何もしゃべらない人もいる。




 ……それはチェス隊。神奈川の正真正銘のトップ集団でありながら、キング以外全員女性と言う日本の中でも類を見ない部隊。

 その中でも特に異才を払っているのは……


「才華ちゃん! 久しぶりー!!」


 現在、白のクイーンであり、神奈川派閥の序列1位……

 硬城こうしろ蒼華そうかちゃんだ。

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