上 下
34 / 151

新たなテキ

しおりを挟む
 A市は、東京都内で最南端の都市だ。

 神奈川派閥に最も近く、東京派閥と神奈川派閥をつなぐパイプとしても一役買っており、東京派閥の中でも重要視されている都市の1つである。

 東京派閥は合計で7つの派閥を傘下に入れている。千葉、茨城、栃木、群馬、埼玉、福島、新潟の7つだ。傘下に入れている派閥の数なら最多だし日本でも有数の都市である千葉も傘下に入れていて、盤石と言っていいだろう。

 だが、そこで立ち塞がったのが神奈川である。

 神奈川派閥は、山梨、静岡、長野、富山の4つしか傘下に入れていないが、その分、科学力や強スキル保有者の育成に凄まじい力を入れているという。
 今では神奈川と東京は友好関係にあり、たびたび派閥のトップの会談が行われている。

 ……それに、神奈川には男にとっては垂涎物の制度がある。

 それは…………


「おい! ぼーっとしてるんじゃない! もうすぐA市を抜けるぞ!」

「……んあ? ……悪い、ハカセ、半分寝てた」

 俺は既にマスクは外しており、無防備な状態だった。

「全く、オヌシと言うやつは……肝が座っていると言うか、間抜けというか……」

「間抜けはやめてくれよ……」

「これから次第じゃな」

 そう言うと、ハカセは乗ってきたレンタカーを駐車場に止める。

「……? なんで止めるんだ?」

「……おそらく、東京派閥と神奈川派閥の境目には先日の事件の影響で検問がいるじゃろう。東京と神奈川の通り道であるこの通路をチェックしてくるやつは相当優秀じゃ。あの時の雑魚検問のようにはいかん」

 なるほど、ばれることを嫌ったわけか。

「よって……オヌシの反射で吹っ飛んで神奈川と東京の境界線を抜ける」

「……バレないか? それ」

「なぁに、人間、実は目の前のことに夢中になるとそれ以外のことが見えないんじゃよ。目の前の検問に夢中な奴らはワシらを見向きもしないだろうよ」

「そういうもんか」

 そう返すと、今まで質問していなかったことを思い出す。

「なぁハカセ……車の運転中にスチールアイって、動かしてたか?」

「んん? いや、動かしておらんなぁ。あれって、何かをしながらだと操作が難しくてなぁ……ばれる危険性もあるし、市内じゃから大丈夫じゃろ!」

(…………)

 その時、俺はふと、店主の言葉を思い出した。

(私は誰の味方でもないですからね?)


「……!!! ハカセ!!!!」

 俺はハカセを座席から突き飛ばした。ドアを無理矢理こじ開け、俺も一緒に外に出る。

「なっ……!」

「…………!」

 その瞬間、後ろから響く爆発音。爆風で飛ばされて駐車場を転がっていく。顔に石が当たって地味に痛い。

 回転が止まり、後ろを振り向くと車が爆発し燃え盛っていた。

 そして俺は、おそらく犯人であろう人間が居る方向を見る。
 だが、その人間は意外なことに……

「……ほう、今のをかわしましたか……逃げ延びただけの事はあるということでしょうか」

 その人間は、黒い隊服を武道家のように袖をカットした隊服を着た女だった。











しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう

果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。 名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。 日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。 ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。 この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。 しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて―― しかも、その一部始終は生放送されていて――!? 《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》 《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》 SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!? 暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する! ※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!

克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。 アルファポリスオンリー

処理中です...