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火の章
【閑話】太郎と嶺の初夜
しおりを挟む祝宴が続く中、侍女が嶺に声をかける。それに頷き、席を立った。太郎はそれを横目に見ながらも気付かぬフリを決め込む。内心はこれから迎える初夜に焦りを隠しきれない。
(こういうとき、どうすれば良いのであろう……)
元来の生真面目さが仇になり、太郎は父・晴信にも傅役の虎昌にも房事のことなど聞けずじまいだった。
「どうした?」
突然声をかけられ、ビクリと肩が上がる太郎。振り返れば、そこにいたのは父・晴信であった。太郎はどうして良いものかと視線を彷徨わせる。すると、何かに気付いたように意味ありげな笑みを浮かべた晴信。嫌な予感がして太郎は手近にあった肴を摘まんだ。
「さては今宵のことで不安になったか?」
「ぶっ!」
図星を指されて太郎はむせる。その顔は耳まで真っ赤になっていた。
(何故、父上は私の心が分かるのだ?!)
太郎は俯き、ギュッと拳を握る。そんな息子を窘めるが如く、晴信は優しく微笑んだ。
「なるようになる」
「は?」
「閨事は一人でするものではない。相手があることだから気負いすぎるな」
「そ、そうは申しても……」
「二人で試行錯誤してみるも良し、ということだ」
「そんなのもでしょうか?」
「そんなものよ。俺なんぞ、父上にどれほどからかわれたものか……」
晴信は遠い目をして三条との初夜のことを思い出す。あのときは緊張を紛らわすために酒に逃げた。それを信虎にからかわれたのだ。
太郎はそんな父・晴信の姿に驚きを隠せない。いつも自信に溢れている晴信は太郎の目標とする男なのだ。その父が初夜で戸惑う姿など想像出来なかった。
「誰にでも初めてはある。気を張るな」
「……」
「俺から言えるのは、【一呼吸置いてから】くらいか」
晴信は苦笑いを浮かべながら肩をすくめる。それでもまだ少し緊張気味な太郎。そんな太郎に晴信は耳打ちをして【これくらい出来れば落胆させることはないだろう】といったのだった。太郎は少しだけ眉間に皺を寄せたが【誰しもが通る試練だ】と言われては笑うより他なかった。
(そうだ。今更気負っても詮無きこと。嶺とはゆっくり進めば良いのだ)
そう思い直すと、太郎は寝所へと向かったのである。
湯浴みを終えて寝所に入ると既に嶺は褥の横に座り待っていた。彼女も緊張しているのか、膝に置いた手を握りしめている。
太郎は晴信に言われた通り、一度深呼吸をしてからとなりに胡座を掻いて座った。
「あー、その、なんだ……」
「はい……」
嶺から帰ってきた返事に強ばりを感じて太郎はもう一度息を深く吸った。それをゆっくり吐き出しながら、嶺と向き合う。
「すまない。私は初めてで、慣れていないから、そのぉ……」
「太郎様。誰でも初めてというのはあります。ですから、気負わず進んで参りましょう」
嶺は微笑みかける。太郎はそんな嶺を抱き寄せ唇を重ねた。嶺は少し体を強ばらせ太郎の寝間着の袖を掴んだ。
「嶺……」
「太郎様」
「先に進んでも良いか?」
太郎の問いかけに頷く嶺。太郎は裾をはだけ、その白く柔らかな太股に手を這わせた。嶺が更に体を強ばらせるのを感じながらも先に進む。袖を握るその手を引き剥がし、自分の股間へと導く。そこは既に張り詰めて腹に着きそうなほど反り返っていた。
「た、太郎様?!」
「怖がることはない。女子が欲しいと思ったとき、男はこうなるのだ」
「あ、あの……」
恥ずかしがって手を引こうとする嶺に囁きかける。
「これを握って、上下にしごいてくれ」
「こ、こうですか?」
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「あっ……」
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「た、太郎さまぁ」
「嶺、気持ちよいか?」
「わ、分かりません……」
そういうのがやっとであった。だが、その瞳は欲情に濡れ、先を強請るように潤んでいる。太郎はそのまま蜜口に指を沈めていく。突然のことに、嶺は驚き逸物を握る手に力が入る。太郎は息を詰めたが、嶺の体を暴きたいという欲望に抗うことはできず先を進めた。
「嶺、どんどん蜜が溢れてくる」
「太郎様は?」
「私か?」
「太郎様も気持ちよくなっていらっしゃるのですか?」
その問いに太郎は頷き答えた。実際、嶺の手の動きは太郎に続々とした快感を与えており、それを現すように先走りが亀頭を濡らしていた。
「嶺!!」
太郎は抑えきれなくなり、嶺を褥に押し倒す。噛み付くような口付けを落とし貪る。わずかに開いた唇に舌を滑り込ます。口腔内を蹂躙し、嶺のそれを絡め取る。そうやって交わされた濃厚な口付けは互いの唾液を交換し合い、飲み下す。
太郎は一度唇を離すとそのまま顎、首、鎖骨へと舌を這わせる。蜜口を探っていた指を抜き、嶺の腰紐を解くと産まれたままの姿が現れる。自身も寝間着を脱ぎ捨てると覆い被さりその双丘に顔を埋めた。柔らかなそれを揉みしだき、頂の赤い実にしゃぶりつく。嶺がその口から甘いと息を漏らせば、太郎は更に吸い上げる。
「はぁんっ、あっ……」
「嶺、気持ちよいか?」
「んっ……。わ、わか、らない……」
「だが、ここはどんどん蜜が溢れてるぞ」
そういって、蜜口をなぞればヌチャヌチャと隠微な水音を響かせる。嶺は羞恥に顔を赤く染める。だが、それが男を煽るだけだと分かっていない。太郎は嗜虐心を刺激され、もっと啼かせたいと思った。太郎は嶺の膝を立たせ、開くとそこに自身の体を滑り込ませ蜜口に顔を埋める。
「!!!」
余りのことに嶺は足を閉じようとするが、太股をしっかり捕まれているのではそれも出来ない。太郎は舌を這わせ、花芽を甘噛みし滴る蜜をすすった。
「あぁぁぁぁぁ!!!」
嶺は甲高い嬌声を上げる。そのつま先が丸まり褥を掻く。だが、しばらくするとその体は力を失い、くたりと沈んだ。
「達したか……」
太郎は顔を上げ、ニヤリと口の端を上げる。そして、未だ焦点の定まらぬ嶺を見下ろしながら逸物を蜜口に宛がい、押し込んだ。
「ひゃぁっ!!」
突然の圧迫感と下腹部の痛みに嶺は目を見開き体を強ばらせる。隘路をこじ開けるようにして押し込まれる逸物は媚肉に絡め取られる。嶺は息を詰め、痛みに耐える。太郎は更に奥へ押し入り、嶺の純潔の証である壁を突き破った。
「はっ!」
体を強ばらせ、荒い息をする嶺に太郎は優しく口づける。そして、【動くぞ】と囁きゆるゆると抽挿を始めた。その動きに媚肉が応え蠢く。太郎は与えられる快感に爆ぜそうになる。奥歯を噛みしめ耐えては抜き差しを繰り返す。やがて漏れ始めた嶺の喘ぎに併せて動く。やがてせり上がるように突き抜ける感覚に太郎も抗いきれなくなる。抽挿を早くし、高みへと押し上げる。一際強く穿てば、嶺は甲高い嬌声を上げ達した。太郎は己を解き放ち爆ぜる。その熱はドクドクと嶺の奥深くへと注ぎ込まれた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
息を整え、逸物を引き抜けば蜜口からは破瓜の血と混ざり合った白濁がこぼれ落ちる。その卑猥な光景に力を失ったはずの逸物がムクムクと起き上がる。
「嶺……」
「た、ろう……、さま?」
太郎はぼんやりと見つめる嶺の口を塞ぎ、囁きかける。【今しばらく付き合ってくれ】と……。
その囁きに嶺は目を瞠るが、反論する前に太郎が押し入ってくる。そうなっては最早逃げる術などない。嶺はただ喘ぎ続けた。二人の隠微な宴は空が白み始める頃まで続いたのであった。
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