【R18】転生先は男女比1:30の貞操逆転世界~ビッチを夢見る三十路の魂~

尾和 ハボレ

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『アルバイト探し(1)』

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『アルバイト探し(1)』
 
どうにもオレのメールの仕方がまずかったらしい。
 
「そういう事か。良かった。正直、私は昨晩まったく眠れなかったぞ」
「すみません。誤解させるようなメールでした」
 
オレが頼った年長者こと冬原先生は、今朝のホームルームから非常にそわそわしていた。
 
メールは昨晩のうちに返信されていた。
 
『まず会って話をしよう』というタイトルで送られていたし、本文も詳しい事はまた明日とだけあった。
 
進路指導もやっている人だし、規則や条件があるなら直接説明してもらった方が早い。
 
オレはこの日華学園がアルバイトオーケーかどうかも知らなかったが、冬原先生の反応から禁止されていないようだと安心していた。それにアルバイト先も色々とアテがあるんだろうとのんきに構えていた。
 
そうして迎えた、今日の昼休み。
 
メールで屋上に呼び出され、ホイホイと向かったオレを待っていたのは、とても深刻な顔をした冬原先生だった。
 
開口一番「金がいるのか。いくらだ」と詰め寄られ、すぐに異世界あるある『オレ何かやっちゃいました?』状態だと悟ったオレは、自分と先生の間にある齟齬を埋めるべく、落ち着かせるようにして話を始めた。
 
先生いわく、姉活で金をとらないと言っていたオレが急にそんなことを言い出したので、何か理由があって急に金が必要になったと考えたらしい。
 
事故か、ケガか、それとも他のトラブルか、と落ち着かない中、さらに別の可能性にも思い当たったそうだ。
 
オレの気が変わって、大金を貰える相手に乗り換えるつもりではないか、と。
 
ゆえに遠回しに金の話を出したのでは? と考え、メールではなく直接、話をしようと思ったらしい。
 
普段は剛毅な性格なのに、不安になると悪い方に考える先生の性格がよく出ている。
 
どれも違いますよと、全てを否定してからオレは自分の考えを話し始めた。
 
単に友人と遠出をしたいので、宿代や足代として少しお金が欲しいと告げた。
 
「そ、そうか。そんなことか! よし、なら今日は放課後、ちょっと街の方に行って一緒にお茶でもしないか? 小遣いをやるぞ! なんなら前払いでもいい!」
 
どこかウキウキしたように財布を取り出す冬原先生。
 
「いえ。ですから、先生からお金を頂く気はないです。お財布はしまってください」
 
以前から言っているように、オレは金品を女の人からもらうつもりは無い。
 
財布を取り出した冬原先生に告げると、どこか悲しい顔になってしまった。
 
「……なんでそんなお顔をするんですか?」
 
金目的の姉活ではない関係の方が女性ウケは良さそうと思ったのだが、はて。
 
「宮城」
「はい」
 
オレがたずねかけると、先生は非常に申し訳なさそうな顔をした。
 
「私は今の自分の幸運というものを正確に把握している」
「はあ」
 
何か言い出した。
 
「お前のような、直視するのもはばかれるほどのイケメンで、しかもドエロな男子高校生とセレフ関係など今でも夢を見ている気がする」
「ボクも先生とそうなれて嬉し……」
 
オレも返礼のように言葉を返そうとしたが。
 
「待て。最後まで聞け」
「はい」
 
何やら迫力があった。オレは黙って言う事を聞く。
 
「私は自分が恵まれている事を理解している。だが女というものは、本当にどうしようもない生き物なのだ」
「と、おっしゃると?」
「欲というのは際限がない。それが男絡みであればなおさら」
「なるほど?」
 
とりあえず相槌をうっておく。
 
緊迫した雰囲気になっているが、この人は面白い事しか言わない。
 
今までの付き合いでオレも学んだ。不安なく耳をかたむける。
 
「お前にはたくさんの夢をかなえてもらった」
「ああ、はい。色々とエッチな夢ですね」
「うむ」
 
そこで誇らしそうに微笑む先生の情緒は理解できないが、話の先をうながす。
 
「だが私の夢はまだまだ尽きない」
「そうなんですね」
「そんな夢の一つに、若い子に貢いでみたい、というものがある」
 
どういう夢だ。
 
「いや。これはな? お前と出会う前の、今や色あせた思い出の欠片でもあるが……ううむ、どう説明したものか」
 
難しそうな顔になる冬原先生。
 
どんな説明がされるのかオレも興味深い。
 
「……年のいった女が、若い男の子とせめておしゃべりだけでもしようと願ったとする。当然、そこそこの金が必要だ。ライトな姉活、お茶活などとも言われるが、そんなお茶活デートなら、男子大学生や場合によってはDK(男子高生)をゲットできる事があるんだ。しかしその希少価値から、一時間のお茶代の相場はこれくらいだ」
 
指が三本立った。三千円、ではないよねぇ。
 
「高いですね」
「うむ。一緒にお茶をすする一時間の対価としては躊躇する金額だ。だが問題はそこじゃない。私の立場的にDKとのマッチング狙いなど怖くてできん。プロフ画面で顔の下半分を手で隠している男が、この学園の男子生徒という可能性だって捨てきれない」
「なるほど」
 
肉体関係のないライトな姉活であれば、未成年とも会あえる可能性がある。

けれど先生の場合、その可能性は破滅への可能性もあるわけだ。
 
「万が一にも教え子とマッチしてみろ。バレたら軽くて免職、重いと実刑だ」
 
確かにそこまでのリスクを負ってのお茶活は厳しそうだ。
 
「さすがにそれなら諦めた方がいいのでは?」
「私だってそれは理解していたし、諦めていた……のだがな?」
 
ふう、と一つため息をつく冬原先生。

多分、また面白い事を言い出すので、オレは黙って耳を傾けた。
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