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『伏せられた三枚のカード』

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『伏せられた三枚のカード』

駅前商店街のメインストリートから少し外れた場所にあったカラオケ店というコトもあり、近くにある喫茶店も人の入りは少ない。

「あそこにしよっか」
「あ、はいッス」

近くにあった喫茶店は店内は広いものの、客はオレたちの他に二組と閑散としていた。

オレはあまり目立たない、店の一番奥の四人掛けボックス席を選んで、そこに座る。

薫ちゃんもおずおずといった顔で目の前に座った。

お冷を持ってきた店員さんに、オレはカフェオレ、薫ちゃんがクリームソーダを注文した後。

「さて。お店のお手伝いまで、あんまり時間もないかな?」
「あ、えっと、はい」

薫ちゃんの視線はオレがテーブルの上に置いた『王様と従者』に釘付けだった。

「薫ちゃん」
「は、はい」

オレはカードを開封して、数枚のそれを手に取る。

「ルールを追加しようか」
「え、あ……ッス」

薫ちゃんに見えないようにして、アクションカードに書き足していく。

三枚のカードを書き終えたところで、付属のダイスを薫ちゃんに見せる。

「追加ルールは三つ。カードを書くのはボクだけ」
「え? あ、はい」

薫ちゃんが残念そうで、それでいて安心した顔になった。

オレが書き足したものなら、オレが拒否する事がないからだろう。

自分が変な事を書いて、オレに嫌われるような事態はない。

「二つ目。ダイスの目は自分で決められる事にしようか。あ、先に振るのはボクね」
「え?」

次は理解できないという顔。

それではダイスを振る意味がない。

薫ちゃんは気づいていない。

だからこそ、ダイスの存在意味はあるというコトを。

「三つ目。互いのダイスの結果をボクが拒否したらゲームは終わり。いいかな?」
「え、えっと……?」

薫ちゃんはますます混乱している。

どういう事かを理解するため考え込んでいる。

オレが言ったことは、つまりこういう事だ。

オリジナルの追加アクションを書くのはオレだけ。

そしてオレが先にダイスを振る為、薫ちゃんは王様か従者を選ぶことができる。

けれどその結果がオレの望むものでなければゲームはおしまい。

つまり。

オレを常に王様にする、でなければゲームはおしまい、という話だ。

「……それ、は、その? なんというか……ですね?」

公平とはいい難いルールに薫ちゃんが引け腰になる。

オレは笑って。

「ふふ、そんなに構えなくてもいいんだよ。薫ちゃんがイヤだと思ったらボクより大きな数字にして王様になればいいんだから。そうすればイヤな事が書いてあってもしなくて済むよね?」
「あ、えっと、それはそうッスね、でもそれだと……」
「うん。ボクのやる気がなくなってゲームが終わるかもしれないかな」

薫ちゃんの顔が曇る。

並べられた理不尽な条件を考えれば当然だろう。

しかし断れない。

もし不満を述べればオレの機嫌を損ねる。

せっかくこんなエロいイケメン先輩と知り合えたのに、その縁が切れる可能性があるからだ。

もしこれを過去の自分が生きた頃にあてはめたらどうなる?

エロカワイイ先輩に、アタシのエッチなゲームにつきあいなさいと暗に言われたら?

そんなの聞くまでもないだろう?

「まあまあ。まずは一枚目、やってみない?」
「あ、はいッス」

とはいえ、勢いで押すにも最初はソフトにいこう。

薫ちゃんにも心の準備は必要だろうからね。

オレは最初のカードを伏せたまま薫ちゃんの前に差し出す。

「めくってみて」
「は、はい」

そこには『かわいく笑う』と書いてある。

「え?」
「ふふ? じゃあ、ボクが先にダイスを振るね」

振る、といっても好きな数字を上にするだけだ。

オレは02と書かれた面を上にする。

「はい、次は薫ちゃんの番だよ」

薫ちゃんはおずおずと……01の面を上にした。

正解。

「うん。いいね。薫ちゃんはお利口さんだ。ボクは素直な子が大好きだよ」
「あ、あざッス」

薫ちゃんが笑う。

かわいい笑顔だ。

「うんうん。いいね。かわいく笑えてるよ」
「え、えへへへ」

先ほどまであった緊張感がなくなり、薫ちゃんがはにかんだ。

「じゃあ、次ね」

オレは次のカードを伏せたまま差し出す。

差し出されたカードをニコニコしながらめくる薫ちゃん。

その笑顔が凍り付いた。

「え……」
「どうしたの?」
「あ、あの……これ」

開けられたカードには『ここで下着を脱ぐ』とあったからだ。



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