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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing14)』
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『春に舞い降りた私の天使(春日井crushing14)』
「あのっ、宮城君!」
「ねぇ、春日井さん」
同時に、宮城君が私に声をかけた。
「……何かな?」
「なっなに!?」
とっさにそう返したもののも、宮城君も驚いていた。
こういう時、不思議とタイミングが重なってしまう。
「いいよ、春日井さんからお先にどうぞ」
「う……うん」
宮城君が言いかけた用件も気になるけれど、せっかくゆずってくれたのであれば私から。
それに、この勢いと覚悟がなくなれば、私はもう口が開けなくなるかもしれない。
「え、えっと……その」
聞くべき事、言うべき事は決まっているのに、声がでない。
「先生にもうまく誤魔化してくれたさっきの事……このまま黙ってて欲しいの……」
なんとか絞り出した。
この年でお漏らしをした女の事なんて、汚らしいとしか思えないはずなのに。
先生に嘘をついて、自分で水をかぶってまで、私をかばってくれた宮城君なら、と信じて。
「もちろん。ボクらも年頃だからね。性欲が良くないカンジに爆発する事だってあると思うよ。大丈夫、誰かにこの事を言ったりしない。ボクは春日井さんが好きだから」
――え?
私は耳を疑った。
今、宮城君は確かにこう言った。
性欲と。性欲が爆発した、と。
「性欲? え? み、宮城君……あの、私、お漏らし……じゃなくて、もしかして……見てたの?」
「あ」
もう間違いない。
宮城君は見ていた。
私が彼の机で自慰をしていた事を見ていたのだ!
けれど、私にそうと気づかせないまま、それをやめさせようと……。
「それで……あんなに大声を出してたの? 私が気づくように?」
大きな声をあげながら、廊下を歩いてたのだ。
するとそれが正解だったように、宮城君が慌てた声で。
「あ、うん。その、ね? ボク見なかった事にすれば丸くおさまるかなーって。大丈夫、ボクは誰にもこの事は言わないから!」
「……宮城君、本当に……?」
本当に、言わないでいてくれる。
その言葉に間違はない。
だってそれはつまり、一度、教室にやってきて、私のあんな姿を見て?
わざわざ戻って、道化を演じるように声を出してまた戻ってきた?
そんな事までして、私の犯罪行為を無かったことにしてくれようとしたのだから。
だから、きっと宮城君は決して他言しない。
……でも、それって宮城君にメリットが何も無い。
さすがにそれは看過できない。私にできることであれば、と言い出そうとして。
「ねぇ、春日井さん。もしボクが黙っている代わりに何か一つ言う事を聞いて欲しいって言ったらどうかな?」
「わ、わかったわ。そうね、そうよね。そういうものだってちゃんとわかってるわ。私は大丈夫」
考える前に即答した。
私にできることはあまり多くないだろうけれど、宮城君が何かを望むのであれば否やも無い。
そして唐突に閃いた。
さっき宮城君はなんと言っただろうか?
『もちろん。ボクらも年頃だからね。性欲が良くないカンジに爆発する事だってあると思うよ。大丈夫、誰かにこの事を言ったりしない。ボクは春日井さんが好きだから』
そう、確かにこう言った。
互いに若く、性欲が抑えられなくなることもある、と。
そして私の事を好き、だとも。
であれば求められるのは……私自身?
男の子だって性欲はあると、女だけの授業で習っている。
ただ、男の子から女に対してそう言う事を要求することは非常にハードルの高い事だとも想像がつく。
もし誘って乱暴にされたら? もし写真や動画を撮られたら? そういった危険が常に付きまとう。
しかし私であればどうだろう?
私は宮城君にとんでもない事をしてしまったし、良くも悪くも弱みを握られている。
つまり、安心して言う事をきかせられる”女として使える”と宮城君が思ってくれたのなら?
いや、もう他にない。それしかない。
私は彼の性欲のはけ口として選ばれた!
そう悟った瞬間。
『――テステス。聞こえますか。ふふ、貴女、実に良いですね。私の目に狂いはなかった。さあ、無礼な転生者に神罰覿面です』
と、さきほど頭に響いた幻聴と同じ声が聞こえたような気がした。
「あのっ、宮城君!」
「ねぇ、春日井さん」
同時に、宮城君が私に声をかけた。
「……何かな?」
「なっなに!?」
とっさにそう返したもののも、宮城君も驚いていた。
こういう時、不思議とタイミングが重なってしまう。
「いいよ、春日井さんからお先にどうぞ」
「う……うん」
宮城君が言いかけた用件も気になるけれど、せっかくゆずってくれたのであれば私から。
それに、この勢いと覚悟がなくなれば、私はもう口が開けなくなるかもしれない。
「え、えっと……その」
聞くべき事、言うべき事は決まっているのに、声がでない。
「先生にもうまく誤魔化してくれたさっきの事……このまま黙ってて欲しいの……」
なんとか絞り出した。
この年でお漏らしをした女の事なんて、汚らしいとしか思えないはずなのに。
先生に嘘をついて、自分で水をかぶってまで、私をかばってくれた宮城君なら、と信じて。
「もちろん。ボクらも年頃だからね。性欲が良くないカンジに爆発する事だってあると思うよ。大丈夫、誰かにこの事を言ったりしない。ボクは春日井さんが好きだから」
――え?
私は耳を疑った。
今、宮城君は確かにこう言った。
性欲と。性欲が爆発した、と。
「性欲? え? み、宮城君……あの、私、お漏らし……じゃなくて、もしかして……見てたの?」
「あ」
もう間違いない。
宮城君は見ていた。
私が彼の机で自慰をしていた事を見ていたのだ!
けれど、私にそうと気づかせないまま、それをやめさせようと……。
「それで……あんなに大声を出してたの? 私が気づくように?」
大きな声をあげながら、廊下を歩いてたのだ。
するとそれが正解だったように、宮城君が慌てた声で。
「あ、うん。その、ね? ボク見なかった事にすれば丸くおさまるかなーって。大丈夫、ボクは誰にもこの事は言わないから!」
「……宮城君、本当に……?」
本当に、言わないでいてくれる。
その言葉に間違はない。
だってそれはつまり、一度、教室にやってきて、私のあんな姿を見て?
わざわざ戻って、道化を演じるように声を出してまた戻ってきた?
そんな事までして、私の犯罪行為を無かったことにしてくれようとしたのだから。
だから、きっと宮城君は決して他言しない。
……でも、それって宮城君にメリットが何も無い。
さすがにそれは看過できない。私にできることであれば、と言い出そうとして。
「ねぇ、春日井さん。もしボクが黙っている代わりに何か一つ言う事を聞いて欲しいって言ったらどうかな?」
「わ、わかったわ。そうね、そうよね。そういうものだってちゃんとわかってるわ。私は大丈夫」
考える前に即答した。
私にできることはあまり多くないだろうけれど、宮城君が何かを望むのであれば否やも無い。
そして唐突に閃いた。
さっき宮城君はなんと言っただろうか?
『もちろん。ボクらも年頃だからね。性欲が良くないカンジに爆発する事だってあると思うよ。大丈夫、誰かにこの事を言ったりしない。ボクは春日井さんが好きだから』
そう、確かにこう言った。
互いに若く、性欲が抑えられなくなることもある、と。
そして私の事を好き、だとも。
であれば求められるのは……私自身?
男の子だって性欲はあると、女だけの授業で習っている。
ただ、男の子から女に対してそう言う事を要求することは非常にハードルの高い事だとも想像がつく。
もし誘って乱暴にされたら? もし写真や動画を撮られたら? そういった危険が常に付きまとう。
しかし私であればどうだろう?
私は宮城君にとんでもない事をしてしまったし、良くも悪くも弱みを握られている。
つまり、安心して言う事をきかせられる”女として使える”と宮城君が思ってくれたのなら?
いや、もう他にない。それしかない。
私は彼の性欲のはけ口として選ばれた!
そう悟った瞬間。
『――テステス。聞こえますか。ふふ、貴女、実に良いですね。私の目に狂いはなかった。さあ、無礼な転生者に神罰覿面です』
と、さきほど頭に響いた幻聴と同じ声が聞こえたような気がした。
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