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『保健室での打ち合わせ(3)』

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『保健室での打ち合わせ(3)』

「ともかく、そういう事情なら。うむ、そうだな。教室の方は片付いているのか? 春日井の小便は」
「小便って……もう少しオブラートに包んでください。多少、濡れていたり、匂いが残っているかもしれませんけど、ハッキリとそれとわかるほど痕跡はないと思います」
「よし、ならお前が春日井を教室で目撃した時点でコイツが気絶していた事にしよう。オナっていた事実はなかった。小便に関してはお前だけが知っているというていで通せ。いいか? お前は忘れ物を取りに教室に戻った春日井が気絶していたのを偶然見つけ、私に報告、そして私が春日井をここまで連れてきたんだ」

うーん。

要するに春日井さん視点だと、オレの机でオナっていたのは隠し通したが、小便は漏らしてしまった、と。

で、そのショックで気絶していたがオレが気を使って後始末をして? 先生に報告して、上手い事こうなったと。

いくら春日井さんが前後不覚になっていても……通るのそんなの?

「さっさと着替えて視聴覚室に戻れ。いいか、科学の先生に聞かれたら、春日井さんが調子が悪いとの事で保健室に連れていったと言っておけ。山崎先生は不在だが、私がついている、という事もな」
「わかりました。そこまで先生が言うのであれば、おまかせしてもいいですか?」
「うむ。なに、こういう事は力押しでいけば、案外誤魔化せるものだ」
「……だといいんですけど」

オレは着替えを終えて視聴覚室に戻る。

ずいぶんと時間が経ってしまったが戻らないわけにもいかない。

視聴覚室に戻ったオレはその後、科学の先生に事情を説明し、春日井さんは保健室で休んでいる事と冬原先生がついている事も伝えた。

そんな波乱の五限目が終わり、六限目が始まっても春日井さんは戻ってこなかった。

冬原先生も帰りのホームルームに姿をあらわさず、別の先生がホームルームを行った。

その際。

「冬原先生は、体調を崩した春日井さんを送っていかれました。ああ、特に問題はないものの念のため、という事なので心配は無いそうです」

そう伝達して一組から出ていく。

春日井さんを心配する声がちらほらあがり、仲の良い友人たちはメールなどを打っているようだ。

ちなみに五限はサボリといった夏木さんは六限にも出てこなかった。

こちらは心配するような話じゃなくて、色々と気持ちよくなっちゃったら最後の一時間とか出たくないかも、という話だろうから心配はしないが。

しかし、本当にあんな雑なごり押しで春日井さんをごまかせるんだろうか……?

明日、春日井さんに顔を合わせるのが少しおそろしい。



***



――やや時間はさかのぼり、宮城が保健室を出ていった直後。

宮城が後ろ手にドアをしめて、保健室から出ていったのを見届けて私はため息をつく。

「いくらなんでも、そんな誤魔化し方でどうにかなる状況ではなかろう」

私はベッドで転がるジャージ姿の春日井に向かい。

「お前はどう思う、春日井? 起きているんだろう? さあ、女同士の話を始めようか」

と、声をかけた。
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