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『保健室での打ち合わせ(1)』
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『保健室での打ち合わせ(1)』
「……ふむ。状況がよく見えんが、それはこれから説明してもらうとして」
冬原先生は何個かの紙袋をかつぎながらベッドの方にやってくる。
オレにもたれかかるようにして気絶している春日井さんを見て。
「まさかの春日井か。意外な生徒が出てきたな。いや、こういうお堅い娘が好みだったか?」
「そういうわけではないんですけど、成り行きというか、流れというか、偶然というか」
「つまり、決して春日井が一方的なお前を襲ったわけではないんだな?」
ああ、なるほど。
そういう教師としての配慮からの質問だったか。
「はい。ちょっと雰囲気が良くなったかな? と思ったら春日井さん少し暴走してしまって」
「暴走させるような事を言ったんじゃないか? 私の時みたいに」
「いえ。そうなったらいいなぁと思ってかける言葉を選んでいた所なんですけど、ボクが口説き落とす前に春日井さんが先走ったというか……ただ、どうやら正気じゃなかったようでして」
今の半裸のオレの胸に頭をうずめた春日井さんの目が覚める様子はない。
「……やはり春日井は二人目なわけか。若い娘は可愛いな、宮城?」
オレが春日井さんを抱き留めるようにしているせいか、嫉妬まるだしでオレをにらむ先生。
もちろん先生が二人目で春日井さんが三人目、一人目は夏木さんでしたー、なんて余計な事はここでは言わない。順番なんて些細な事だ。だがごまかしという名のフォローはする。
「心配性ですね。ボクが最初に孕ませるのは……初めての相手は先生ですよ」
初めて、という言葉を強調してみる。
先生は初体験の相手ではないが、そう聞こえてもおかしくないし、先生がそうとらえたとしてもそれは誰も不幸にならないウソだろう。
「初めて……そうか、そうだな。初めての相手としては他の女にも寛容になるべきだ。お前を信用していないわけじゃないんだ。だがついそう言ってほしくなって聞いてしまう。情けない……」
安心が欲しい、そういうことだろう。
「いつも大人な先生がそうやってかわいく嫉妬してくれる所、ボクは好きですよ。もっといじめたくなります」
「いや、すまん。アレ以上いじめられると私の身がもたない」
そんな冗談まじりの会話を冬原先生としつつ、オレはこの状況の落としどころを考える。
「どうするつもりだ?」
「それを今まさに考えているんですけど、何かいい案ありませんか?」
「……本当に正気じゃなかった、もしくは夢と思っていたような振る舞いだったんだろう? ま、実際、正気にもどった瞬間に気絶するくらいだしな」
「はい。普段の春日井さんとは思えない言動でした」
「ならそれでゴリ押すしかあるまい。私も口裏を合わせて協力してやる。だから今回の事はなかった事にしろ。口説き落とすならタイミングをあらためる事だな」
「ゴリ押せますかね?」
「うまくやるしかなかろう。そうだな、とりあえお前はこれに着替えろ」
先生がオレに紙袋をおしつける。
中を見ればやはり同じ黒いシャツとズボン、そして下着だった。
「あの、先生。なんでこんなに男性用の着替えを持ってるんですか?」
「……色々と事情があるが、私のものじゃない。私の車に積んであった預かりものだ」
「預かりもの?」
「先輩の私物だ。言っておくが女の先輩だぞ。話した事があったたろう。学生時代の空手部の先輩の事は」
冬原先生の先輩というと……ああ。
「ブラックサンダーの前のオーナー?」
「そうだ。あそこの棚から最も多くのコンドームを拝借していた先輩だ」
先生が保健室内のガラス棚を指さす。
そこが定位置なのかコンドームらしき箱が奥の方に見える。
「で? その先輩はなんで男物の服を先生の車に? そもそも女性なのに紳士服をなぜそんなに持っているんですか?」
「……むなしい話を聞きたいか?」
「え?」
「卒業後も続く体育会系の上下関係の厳しさと、男っけのない女社会の闇の深さを知りたいか?」
「……」
なんだろう。
先生が今まで見たこともないような昏い顔になった。
「……ふむ。状況がよく見えんが、それはこれから説明してもらうとして」
冬原先生は何個かの紙袋をかつぎながらベッドの方にやってくる。
オレにもたれかかるようにして気絶している春日井さんを見て。
「まさかの春日井か。意外な生徒が出てきたな。いや、こういうお堅い娘が好みだったか?」
「そういうわけではないんですけど、成り行きというか、流れというか、偶然というか」
「つまり、決して春日井が一方的なお前を襲ったわけではないんだな?」
ああ、なるほど。
そういう教師としての配慮からの質問だったか。
「はい。ちょっと雰囲気が良くなったかな? と思ったら春日井さん少し暴走してしまって」
「暴走させるような事を言ったんじゃないか? 私の時みたいに」
「いえ。そうなったらいいなぁと思ってかける言葉を選んでいた所なんですけど、ボクが口説き落とす前に春日井さんが先走ったというか……ただ、どうやら正気じゃなかったようでして」
今の半裸のオレの胸に頭をうずめた春日井さんの目が覚める様子はない。
「……やはり春日井は二人目なわけか。若い娘は可愛いな、宮城?」
オレが春日井さんを抱き留めるようにしているせいか、嫉妬まるだしでオレをにらむ先生。
もちろん先生が二人目で春日井さんが三人目、一人目は夏木さんでしたー、なんて余計な事はここでは言わない。順番なんて些細な事だ。だがごまかしという名のフォローはする。
「心配性ですね。ボクが最初に孕ませるのは……初めての相手は先生ですよ」
初めて、という言葉を強調してみる。
先生は初体験の相手ではないが、そう聞こえてもおかしくないし、先生がそうとらえたとしてもそれは誰も不幸にならないウソだろう。
「初めて……そうか、そうだな。初めての相手としては他の女にも寛容になるべきだ。お前を信用していないわけじゃないんだ。だがついそう言ってほしくなって聞いてしまう。情けない……」
安心が欲しい、そういうことだろう。
「いつも大人な先生がそうやってかわいく嫉妬してくれる所、ボクは好きですよ。もっといじめたくなります」
「いや、すまん。アレ以上いじめられると私の身がもたない」
そんな冗談まじりの会話を冬原先生としつつ、オレはこの状況の落としどころを考える。
「どうするつもりだ?」
「それを今まさに考えているんですけど、何かいい案ありませんか?」
「……本当に正気じゃなかった、もしくは夢と思っていたような振る舞いだったんだろう? ま、実際、正気にもどった瞬間に気絶するくらいだしな」
「はい。普段の春日井さんとは思えない言動でした」
「ならそれでゴリ押すしかあるまい。私も口裏を合わせて協力してやる。だから今回の事はなかった事にしろ。口説き落とすならタイミングをあらためる事だな」
「ゴリ押せますかね?」
「うまくやるしかなかろう。そうだな、とりあえお前はこれに着替えろ」
先生がオレに紙袋をおしつける。
中を見ればやはり同じ黒いシャツとズボン、そして下着だった。
「あの、先生。なんでこんなに男性用の着替えを持ってるんですか?」
「……色々と事情があるが、私のものじゃない。私の車に積んであった預かりものだ」
「預かりもの?」
「先輩の私物だ。言っておくが女の先輩だぞ。話した事があったたろう。学生時代の空手部の先輩の事は」
冬原先生の先輩というと……ああ。
「ブラックサンダーの前のオーナー?」
「そうだ。あそこの棚から最も多くのコンドームを拝借していた先輩だ」
先生が保健室内のガラス棚を指さす。
そこが定位置なのかコンドームらしき箱が奥の方に見える。
「で? その先輩はなんで男物の服を先生の車に? そもそも女性なのに紳士服をなぜそんなに持っているんですか?」
「……むなしい話を聞きたいか?」
「え?」
「卒業後も続く体育会系の上下関係の厳しさと、男っけのない女社会の闇の深さを知りたいか?」
「……」
なんだろう。
先生が今まで見たこともないような昏い顔になった。
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