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『GW編・五日目 思わぬ出会い(6)』
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『GW編・五日目 思わぬ出会い(6)』
「……うーむ。非の打ちどころのないイケメン、かつ、陽の者」
オレも自分を卑下するほど陰の者というわけでもないが、あそこまでハツラツとは振舞えない。性格だな。
だが陰の者はともかく、淫の者としてはあれくらいコミュニケーションに強い方が良さそうではある。
とにかく、せっかくのカフェオレが冷めてしまう。
オレは今空いたばかり四人がけを一人で使う事に少々のためらいもあったが、せっかく彼にすすめてもらったわけだし遠慮なく座らせてもらおう。
「フルーツサンド。初めて見た時はサンドイッチに甘いものなんて、と思ったけど案外イケる」
そんなわけで小腹を満たした満足感以上に、良い知り合いが増えた満足感とともにオレは店を出た。
「次に会える時が楽しみかな」
他校の生徒と知り合えるというのは、交友の幅が広がるという事。
あわよくば違う制服の女の子ともキャッキャッウフフしたいと思うのは、ビッチを標榜するものとして当然の事だろう。
しかし、再会は思ったより早かった。
通りかかった店の前で元気よくビラを配っていた人に、それを手渡されたのだが。
「……あれ?」
「お。さっきぶり!」
シマ先輩だった。
彼はさきほどから三十分経っていないのに、同じ商店街の中にある居酒屋の前で割引券を配っていたのだ。
「なにしてるんですか?」
「見てわかんねぇか? ビラとクーポン配りのバイトだよ!」
さきほどまでのシュッとした恰好と違って、腰エプロンに黒ティーシャツという恰好の先輩の手には、確かに後ろにある飲み屋さんビラがあった。
「……先輩、未成年ですよね?」
「おう。別に年をごまかしてるってわけじゃないぞ。オレは基本的に店内に入れないからな。あくまで店舗屋外の清掃員って形で雇ってもらってんだ。制服は店舗スタッフと一緒ってだけで。ほれ、ホウキもあるだろ」
……いいのか、それは。
確かに先輩はホウキをわきに抱えているし、アルコールを扱うバイトではない、という言い訳もできそうだ。なんだろう、イベント開示用の案内札を持って立っているバイトに近い匂いがする。
「シマ君、クーポン頂戴~」
「あいよ!」
「アタシもー。ああー、シマ君のぬくもりが残るクーポン! 使わずに持って帰ろうかな!」
「まいど! けど、使ってくれ! じゃないとオレがサボってると思われちまう!」
けげんな目をしたオレと会話している間にも、明らかに通りかがりではない客が先輩からビラを受け取っている。
気のせいでなければ……。
「あ、さっきのボク。でも、ダメよー、ここは未成年は入れないからね?」
と、オレは覚えはないがあちらはオレを覚えている女性客の団体が、バイバイと手を振りながら店の中へと入っていった。
「……うーむ。非の打ちどころのないイケメン、かつ、陽の者」
オレも自分を卑下するほど陰の者というわけでもないが、あそこまでハツラツとは振舞えない。性格だな。
だが陰の者はともかく、淫の者としてはあれくらいコミュニケーションに強い方が良さそうではある。
とにかく、せっかくのカフェオレが冷めてしまう。
オレは今空いたばかり四人がけを一人で使う事に少々のためらいもあったが、せっかく彼にすすめてもらったわけだし遠慮なく座らせてもらおう。
「フルーツサンド。初めて見た時はサンドイッチに甘いものなんて、と思ったけど案外イケる」
そんなわけで小腹を満たした満足感以上に、良い知り合いが増えた満足感とともにオレは店を出た。
「次に会える時が楽しみかな」
他校の生徒と知り合えるというのは、交友の幅が広がるという事。
あわよくば違う制服の女の子ともキャッキャッウフフしたいと思うのは、ビッチを標榜するものとして当然の事だろう。
しかし、再会は思ったより早かった。
通りかかった店の前で元気よくビラを配っていた人に、それを手渡されたのだが。
「……あれ?」
「お。さっきぶり!」
シマ先輩だった。
彼はさきほどから三十分経っていないのに、同じ商店街の中にある居酒屋の前で割引券を配っていたのだ。
「なにしてるんですか?」
「見てわかんねぇか? ビラとクーポン配りのバイトだよ!」
さきほどまでのシュッとした恰好と違って、腰エプロンに黒ティーシャツという恰好の先輩の手には、確かに後ろにある飲み屋さんビラがあった。
「……先輩、未成年ですよね?」
「おう。別に年をごまかしてるってわけじゃないぞ。オレは基本的に店内に入れないからな。あくまで店舗屋外の清掃員って形で雇ってもらってんだ。制服は店舗スタッフと一緒ってだけで。ほれ、ホウキもあるだろ」
……いいのか、それは。
確かに先輩はホウキをわきに抱えているし、アルコールを扱うバイトではない、という言い訳もできそうだ。なんだろう、イベント開示用の案内札を持って立っているバイトに近い匂いがする。
「シマ君、クーポン頂戴~」
「あいよ!」
「アタシもー。ああー、シマ君のぬくもりが残るクーポン! 使わずに持って帰ろうかな!」
「まいど! けど、使ってくれ! じゃないとオレがサボってると思われちまう!」
けげんな目をしたオレと会話している間にも、明らかに通りかがりではない客が先輩からビラを受け取っている。
気のせいでなければ……。
「あ、さっきのボク。でも、ダメよー、ここは未成年は入れないからね?」
と、オレは覚えはないがあちらはオレを覚えている女性客の団体が、バイバイと手を振りながら店の中へと入っていった。
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