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『冬原の部屋にあったのはかつての名機』

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『冬原の部屋にあったのはかつての名機』

黒いボディのシルエットが見覚えのあるモノと微妙に違うのは、モデルチェンジ前のものだからだろうか。

だがこの存在感。

間違いなくブラックサンダーの系譜だ。

「知っているのか、宮城!?」

えらく驚いた様子でオレを見る先生。

つまりこれが……先生の初めての人? というわけか。

しかも部活の先輩からゆずってもらったとか言っていたが、それって衛生的にどうなんだろう?

「あの、先生」
「なんだ」

先生はこちらも見ずに、ブラックサンダーの電源ケーブルをベッドの近くまで延びる延長コードに差し込んでいた。

「それって先輩からもらったんですよね?」
「ああ。部活なんてやってるとバイトもできないしな。小遣いなんかじゃ手が出ない高級品だし、とてもありがたかった」

いや、そういう事を聞きたいんじゃない。

ブラックサンダーの電源をオンにする先生。

ブブブブと部屋に響くモーター音。

「うむ。まだ現役だな。初めてを迎えて以来、よくお世話になっていたが今でも問題なさそうだ」

十年以上は輪姦? されていだろうブラックサンダーだが、名機と呼ばれるだけあって耐久性も高いようだ。

そんなことはどうでもいい。

「先生。その、使いまわしとか、不衛生じゃないですか?」
「さすがにそのまま使わないぞ? 先輩もそうだが私だってコレの世話になるときは毎回コンドームを使っていた」

あー、それはそうか。

「……時効だから言うがな」

急に声をひそめる先生。

「コレもそうだがコンドームだって数を使うとなると安いものじゃない。学生の小遣いなんぞはしれたものだし、消耗品に使うくらいならエロ本を買う」
「はぁ」

一体、何の話だと思っていると。

「当時、私は山崎先生の目を盗んでは保健室の戸棚からコンドームをパチっていた」

こう見えて先生、なかなかの過去をお持ちだった。

「見つからなかったんですか?」
「数が減っているのは山崎先生も把握していたからな。山崎先生が隠れて見張っていた時、手を出した犯人は捕まったよ」
「先生が?」
「いや、先輩だ」

振動するブラックサンダーを左右に振る先生。

「先輩は廊下で正座で三時間説教をされ、さらし者になっていたよ」

いたましい事件だった、と悲しげな顔をする先生だが色々な意味でかける言葉が見つからない。

「けれど先生。道具を使って処女ではない、というのはどうなんでしょうか?」
「……男に抱かれなければ処女のままだと言いたいのか?」
「ボクの感覚ではそうなんですが」

先生が難しい顔をする。

「男に処女を散らしてもらう、というのは全ての女の夢だろうが現実はそんなに甘くない。だいたいコレかお野菜が相手だ」

ああ、野菜もありえるのか。

今度から制服で野菜を買っている子をみると想像してしまいそうだ。

「んー、けれど、やっぱりそれはノーウカントでは? 先生の処女はボクが頂いたかなって思いますけど」

ブラックサンダーに先を越されたのがちょっと悔しくて言い張ってみる。

すると先生の難しかった顔が一気に涙目になった。
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