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出会い
六、
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「おーい、そんな怪訝な表情浮かべてどうした?」
「いや、イメージとの差に困惑してんだよ。吸血鬼ってみんなそうなの?あんまり人の血吸わないの?」
「今はそう」
「今は?」
今はという言葉が気になり、聞き返す。
「昔は恐れる人間の中にも退治しようとしてこようとする連中も多くて、怒った当時の吸血鬼たちは無闇に襲いまくってたんだ。だけど次第に退治よりも防御一択になっていって、やり過ぎたと反省した吸血鬼たちは人間たちとは距離をおこうって、一時的に人間界への出入りを禁止した。暫く吸血鬼はいなくなったから、人間たちは当時のことを忘れて、吸血鬼を空想上の生き物だと思ってるだろ?なのにいきなり現れたら怖がられることなんてわかってるし、今の距離感がみんな丁度いいから極力姿は現さないようにしてるんだよ」
ケリーの言葉を聞いても、不思議な気持ちになる。人間達を襲っていた時代もあったというけど、こちらから退治しようと仕掛けたからだし、本質的には優しい生き物なのだろう。当時の人間達が受け入れていれば、もしかしたらどちらかの世界で共存していた可能性もあるのだろうか。
そう思いかけた所でいや、と考え直す。そもそも人間の中でさえ諍いは起きるのだから他種族なんて難しいだろう。吸血なんて人によっては恐ろしいだろうし、一度受け入れてもまたどこかのタイミングでいちゃもんをつける人がいないとも限らない。
「なんか、吸血鬼も大変だな」
「そう?楽しく生きてるよ?今は制限も緩和されて、基本的に吸血鬼とはバラさないようにとはなってるけど自由に行き来できるようになったし」
「人間界来て楽しい?」
「楽しい!」
一際嬉しそうにそう言われ、それなら良かったとらしくもないことを思った。
しかし、自由に行き来できるようになっても吸血鬼だとバラさないようにしてるなら、なぜ母の前に現れて血を吸ったのだろう。母が言っていた吸血鬼はおじさんだったと言っていたから別人だろうし、ケリーに聞いて何かわかるだろうか。
「俺のお母さん、吸血鬼に会ったって言ってたけどなんでそいつは現れたんだ?」
「それは俺も気になってた!吸血鬼として現れることは無いはずなんだけどな……俺みたいに相当困ってたとか?」
母は風邪で寝込んでいる時に、窓から入ってきた吸血鬼に血を吸われたと言っていた。困っていて助けを求めたとは考え辛い。だが、ケリーに聞いても詳しいことは分かりそうもなく、これ以上聞くのは面倒くさくなり、「なるほど」と、納得したふりをした。
「あ、でもバラさないっていうのも例外はあるよ。今日の俺みたいに倒れて限界がきて仕方なく血を分けてもらうこともあるし、吸血鬼だって秘密にして人間界で生活して、人間と恋に落ちて伴侶を持つ奴もいるし」
「……え?」
(今サラッととんでもないこと言わなかった?)
「吸血鬼が生活してるの?こっちで?」
「ああ、制限が緩和されてもう何年も経ってるし普通にいるよ」
「……今まで会ったことないよ」
「うん、だから隠してる」
「……でも伴侶って……子どもできないと周りからなんか言われたりとかして面倒じゃ……」
「子どもできるよ」
「……は?」
理解が追いつかず、驚きすぎて空いた口が塞がらない。
(子どもできるのか…?)
俺の様子に気づかず、ケリーが続ける。
「吸血鬼と人間って生まれ方が違うから、母体のお腹から生まれた子は人間だし知らぬ間に吸血鬼を育ててたってことはないけど、伴侶ができた場合はその人間の血しか吸えなくなるからどうしても吸血鬼だって知ってもらっておかないといけくてさ。まあ、あの……行為に及ぶまでに人間じゃないって普通は気付くし、吸血さえ我慢してくれたら人間と変わらないしそんなに不都合は……」
「ちょっと、あの、ごめん待って」
一気に理解できる範疇を超えてきて、たまらず静止させる。想像していた吸血鬼が本物とは全然違う性質と性格だったとかいう事実に驚いていたのが、今思うと心底どうでもよくなってきた。
(母体のお腹から生まれる?吸血鬼と人間がセックスするの?)
なんだか血を吸われるより怖いと感じてしまうのは俺だけだろうか。
「あ!ごめん、この話は嫌だったか?じゃあやめておこう」
「嫌というかちょっとびっくりしすぎて。でもそうだな、これ以上はいいや。人間界に吸血鬼が生活しているのはわかった」
「いや、イメージとの差に困惑してんだよ。吸血鬼ってみんなそうなの?あんまり人の血吸わないの?」
「今はそう」
「今は?」
今はという言葉が気になり、聞き返す。
「昔は恐れる人間の中にも退治しようとしてこようとする連中も多くて、怒った当時の吸血鬼たちは無闇に襲いまくってたんだ。だけど次第に退治よりも防御一択になっていって、やり過ぎたと反省した吸血鬼たちは人間たちとは距離をおこうって、一時的に人間界への出入りを禁止した。暫く吸血鬼はいなくなったから、人間たちは当時のことを忘れて、吸血鬼を空想上の生き物だと思ってるだろ?なのにいきなり現れたら怖がられることなんてわかってるし、今の距離感がみんな丁度いいから極力姿は現さないようにしてるんだよ」
ケリーの言葉を聞いても、不思議な気持ちになる。人間達を襲っていた時代もあったというけど、こちらから退治しようと仕掛けたからだし、本質的には優しい生き物なのだろう。当時の人間達が受け入れていれば、もしかしたらどちらかの世界で共存していた可能性もあるのだろうか。
そう思いかけた所でいや、と考え直す。そもそも人間の中でさえ諍いは起きるのだから他種族なんて難しいだろう。吸血なんて人によっては恐ろしいだろうし、一度受け入れてもまたどこかのタイミングでいちゃもんをつける人がいないとも限らない。
「なんか、吸血鬼も大変だな」
「そう?楽しく生きてるよ?今は制限も緩和されて、基本的に吸血鬼とはバラさないようにとはなってるけど自由に行き来できるようになったし」
「人間界来て楽しい?」
「楽しい!」
一際嬉しそうにそう言われ、それなら良かったとらしくもないことを思った。
しかし、自由に行き来できるようになっても吸血鬼だとバラさないようにしてるなら、なぜ母の前に現れて血を吸ったのだろう。母が言っていた吸血鬼はおじさんだったと言っていたから別人だろうし、ケリーに聞いて何かわかるだろうか。
「俺のお母さん、吸血鬼に会ったって言ってたけどなんでそいつは現れたんだ?」
「それは俺も気になってた!吸血鬼として現れることは無いはずなんだけどな……俺みたいに相当困ってたとか?」
母は風邪で寝込んでいる時に、窓から入ってきた吸血鬼に血を吸われたと言っていた。困っていて助けを求めたとは考え辛い。だが、ケリーに聞いても詳しいことは分かりそうもなく、これ以上聞くのは面倒くさくなり、「なるほど」と、納得したふりをした。
「あ、でもバラさないっていうのも例外はあるよ。今日の俺みたいに倒れて限界がきて仕方なく血を分けてもらうこともあるし、吸血鬼だって秘密にして人間界で生活して、人間と恋に落ちて伴侶を持つ奴もいるし」
「……え?」
(今サラッととんでもないこと言わなかった?)
「吸血鬼が生活してるの?こっちで?」
「ああ、制限が緩和されてもう何年も経ってるし普通にいるよ」
「……今まで会ったことないよ」
「うん、だから隠してる」
「……でも伴侶って……子どもできないと周りからなんか言われたりとかして面倒じゃ……」
「子どもできるよ」
「……は?」
理解が追いつかず、驚きすぎて空いた口が塞がらない。
(子どもできるのか…?)
俺の様子に気づかず、ケリーが続ける。
「吸血鬼と人間って生まれ方が違うから、母体のお腹から生まれた子は人間だし知らぬ間に吸血鬼を育ててたってことはないけど、伴侶ができた場合はその人間の血しか吸えなくなるからどうしても吸血鬼だって知ってもらっておかないといけくてさ。まあ、あの……行為に及ぶまでに人間じゃないって普通は気付くし、吸血さえ我慢してくれたら人間と変わらないしそんなに不都合は……」
「ちょっと、あの、ごめん待って」
一気に理解できる範疇を超えてきて、たまらず静止させる。想像していた吸血鬼が本物とは全然違う性質と性格だったとかいう事実に驚いていたのが、今思うと心底どうでもよくなってきた。
(母体のお腹から生まれる?吸血鬼と人間がセックスするの?)
なんだか血を吸われるより怖いと感じてしまうのは俺だけだろうか。
「あ!ごめん、この話は嫌だったか?じゃあやめておこう」
「嫌というかちょっとびっくりしすぎて。でもそうだな、これ以上はいいや。人間界に吸血鬼が生活しているのはわかった」
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