266 / 266
番外編 シュノー・ブリューテ
聖者の聖水③ 【完】
しおりを挟む
ナナセの尻穴を指で押し広げ、子種で膨らんだ腹を片腕で抱き締めるように押すと、中に溜まっていた大量の子種がブシャッと勢いよく床に放出される。
「うっ! ああっ……! あっ、あっ、ああああっ!」
それから何度かに分けてブピューッブピューッと腹の中の子種を床の上に粗方出し切るとナナセは放心してくたりと私に体重を預けた。
寝室には昼間の執務室以上の惨状が広がっている。
だがこれで聖水が人手に渡ることはないだろう。
「……聖水って……なんつーか、エリーだもんな。エリーらしいっつーか……でも俺はまだ許したわけじゃねえからな」
恨みがましそうに口を尖らせて憎まれ口を利いているが、その実、もう殆ど許していて、諦めの境地に達しているようにも見えた。
しかし私は次の瞬間に、咄嗟に口を滑らせる。
「いっそ許さないでくれ」
そうだ。ナナセは私を許してはいけない。
先程の背徳的な官能が許されてしまえば、すべてが台無しになる予感がした。
「えっ?」
「決して許さず、私を罰してくれ」
身勝手にも私は罰を望んだ。
ナナセが私を振り仰いだが、今度は私の方が目を合わせられず、細い肩口に顔を埋める。
「お願いだ」
私の懇願に、ナナセは何も訊かず、幾許かの猶予の後、静かに口を開いた。
「……わかった。絶対に許さねえから」
ナナセが何を思ってそうしてくれたのかは、きっと私には一生理解できないだろう。
ただ、ナナセが許さない限り、あの官能は恒久的に私のものなのだということだけは私にも分かった。
しな垂れかかってくる身体を抱き上げて浴室へ連れて行こうとして、不図、床に一輪の白い花が落ちているのが目に留まった。
ナナセを片腕で抱え直しながら空いている方の手を伸ばして拾い上げる。
ついさっきまでナナセの陰茎に挿していたあの花だ。
「……雪の花」
手に取って知らず花の名前を呟くと、ナナセが怪訝そうに私の手元の花を覗き込む。
しかしすぐに昨日の花だと気付いたのか、あからさまに動揺している。
「何?」
「この花の名前だ。『雪の花』と言う」
「へえ。それ、食える?」
「食べたことはないが、どうかな。今度訊いておく。食べたいのか?」
「ううん――」
興味というものが微塵も感じられない気のない相槌が返される。
ナナセが興味を持つのは主に金属と食べ物だ。
金属で出来た花か食べて美味しい花なら反応もまた少しは違ったのだろう。
そういえば婚礼衣装を飾る花の候補は、この雪の花の他にもう一つあり、そちらは星の花という星型の花だったことを思い出す。
――決めた。
婚礼衣装を飾るのは、この雪の花にしよう。
他の星など必要ない。
私の星はここにあるのだから。
番外編 シュノー・ブリューテ【完】
「うっ! ああっ……! あっ、あっ、ああああっ!」
それから何度かに分けてブピューッブピューッと腹の中の子種を床の上に粗方出し切るとナナセは放心してくたりと私に体重を預けた。
寝室には昼間の執務室以上の惨状が広がっている。
だがこれで聖水が人手に渡ることはないだろう。
「……聖水って……なんつーか、エリーだもんな。エリーらしいっつーか……でも俺はまだ許したわけじゃねえからな」
恨みがましそうに口を尖らせて憎まれ口を利いているが、その実、もう殆ど許していて、諦めの境地に達しているようにも見えた。
しかし私は次の瞬間に、咄嗟に口を滑らせる。
「いっそ許さないでくれ」
そうだ。ナナセは私を許してはいけない。
先程の背徳的な官能が許されてしまえば、すべてが台無しになる予感がした。
「えっ?」
「決して許さず、私を罰してくれ」
身勝手にも私は罰を望んだ。
ナナセが私を振り仰いだが、今度は私の方が目を合わせられず、細い肩口に顔を埋める。
「お願いだ」
私の懇願に、ナナセは何も訊かず、幾許かの猶予の後、静かに口を開いた。
「……わかった。絶対に許さねえから」
ナナセが何を思ってそうしてくれたのかは、きっと私には一生理解できないだろう。
ただ、ナナセが許さない限り、あの官能は恒久的に私のものなのだということだけは私にも分かった。
しな垂れかかってくる身体を抱き上げて浴室へ連れて行こうとして、不図、床に一輪の白い花が落ちているのが目に留まった。
ナナセを片腕で抱え直しながら空いている方の手を伸ばして拾い上げる。
ついさっきまでナナセの陰茎に挿していたあの花だ。
「……雪の花」
手に取って知らず花の名前を呟くと、ナナセが怪訝そうに私の手元の花を覗き込む。
しかしすぐに昨日の花だと気付いたのか、あからさまに動揺している。
「何?」
「この花の名前だ。『雪の花』と言う」
「へえ。それ、食える?」
「食べたことはないが、どうかな。今度訊いておく。食べたいのか?」
「ううん――」
興味というものが微塵も感じられない気のない相槌が返される。
ナナセが興味を持つのは主に金属と食べ物だ。
金属で出来た花か食べて美味しい花なら反応もまた少しは違ったのだろう。
そういえば婚礼衣装を飾る花の候補は、この雪の花の他にもう一つあり、そちらは星の花という星型の花だったことを思い出す。
――決めた。
婚礼衣装を飾るのは、この雪の花にしよう。
他の星など必要ない。
私の星はここにあるのだから。
番外編 シュノー・ブリューテ【完】
0
お気に入りに追加
1,324
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(21件)
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
愛の宮に囚われて
梅川 ノン
BL
先の大王の末子として美しく穏やかに成長した主人公の磯城(八宮)は、非常に優秀だが鷹揚な性格で権力欲はなかった。
大王の長子(後東宮)である葛城は、幼い頃より磯城に憧れ、次第にそれは抑えきれない恋心となる。
葛城の狂おしいまでの執愛ともいえる、激しい愛に磯城は抗いながらも囚われていく……。
かなり無理矢理ですが、最終的にはハッピーエンドになります。
飛鳥時代を想定とした、和風ロマンBLです。お楽しみいただければ嬉しいです。
平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜
ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。
王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています!
※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。
※現在連載中止中で、途中までしかないです。
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
Thanks for uplifting everyone’s morale, for pushing the boundaries and lifting everyone during the difficult times. You’re an irreplaceable asset to your own work.https://www.ox369.com/..
連載終了お疲れ様でした(*^-^*)そしてとても楽しい時間をありがとうございました(*^▽^*)!
「絶対に許さねぇ」って言ったナナセ君は、エリアスの内心を見抜いてその発言をしたのかな? 鋭い人ですからね……。
そう言えば昔ちょっとブームになった「空(から)の境界(奈須きのこ氏著)」って小説で、人を殺したヒロインに主人公が「絶対に許さない」って言ったシーンを思い出しました。シチュエーション、違っていたのに?
で、ご指摘頂き前の章を読み返してハッ! と気づきました。あ、してたわアソコにぶっさし……。
―――タシカニ、ソンナシーンガアリマシタネ……。
まぁあの時のナナセ君は重要な「目玉商品」でしかなく、エリアスの「命より大切な人」ではなかったので、お清めセックスで良い思い出に昇華出来たって事で、うんめでたいめでたい×∞。
エリアスの星(ナナセ君)とエリアスに幸あれ♪
本当にありがとうございました~♪
無事連載終了出来ました。
楽しんで頂けたなら何よりです。
もう感想頂けなくなると思うと寂しいですが、これまでたくさんの感想ありがとうございました。
常日頃から多面的な視野を持ちたいと思っていても、自分一人では限界があるので、みけのさんから色々な感想を伺えて毎回「なるほどそういう読み方もあるのか!」と視野が広がる思いでした。
内覧会のアレ、思い出して頂けましたか。
毎回お清めセックスまでがワンセットなところを踏まえて読み返して頂くと「このときもあのときもそのときも、色々されてたんかな……」と感慨深いと思います。
絶許発言は「果たしてこれは読者に受け入れられるんだろうか?」と疑問に思いながら、元々読む人を選ぶ作品だし、ここまで読んでくれた方なら理解してくれるはずと信じて攻めてみました。
結果、信じてよかったと思っています。
エリアス視点だとナナセが何考えてるか分からないし、逆も然りなんですが、でも基本的に仲良しなので上手くいってますね。
どうか二人が駆け抜けた一万年後の未来へ空想を飛ばして貰えたらと思います。
ありがとうございました。
「脇が火を吹く」の意味がよう――やく、分かってきたところで、次はコレですか……。エリアス、どんどん扉を開けられていますね(@_@。
治癒力がある分、かなりマニアックなプレイが出来るようですね……。一輪挿しの辺りとか想像だけで痛そう……いや、闇魔法っぽいです。
ナナセ君、自称「フツメンの擬人化」なのに知識と度胸だけはあるからドンと来い! ですね。
うん、無茶だけはしないでね……とか、思ってしまいました。
思い出してください。
ナナセは一輪挿しの花瓶を最終章の競売の内覧会で一度やってるんです。花ではなかったですが。
それから、一章の「頑張りましたね」と、二章の「真・お清めセックス本番」でエリアスはナナセが他の男にされたことを詳細に聞き出して自分も同じことして上書きしてたことも思い出してください。
以上を踏まえて、これは本編に書かれていないことなんですが、最終章でも同様に、エリアスが上書きしていたと推測されます。
ナナセは環境適応能力が高いのできっともう一輪挿しも慣れちゃったんじゃないでしょうか。
ちなみにナナセの感覚では挿入なしなら全部軽いプレイだと思っているようです。
あと1話、今夜の更新で完結ですが、楽しんで頂けると嬉しいです。