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最終章 砂漠の薔薇

〇二四 涎が垂れているぞ②

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その後、領地の人へのお披露目のために外に出たんだが、寒いのが苦手だと言った俺のためにエリアスが用意してくれた、襟と袖口と裾と内側が銀色のファーで覆われたコートと揃いの帽子と耳当てグローブとブーツを身に着けていたから全然寒くないどころか暑いくらいだ。
領内の泉の畔を象くらいのデカさの真っ白なヘラジカの牽く橇で一周したんだが、ヘラジカのデカさにビビッて近寄れない俺氏をエリアスが抱き上げて橇に乗せてくれた。
別に怖かった訳じゃないんだぜ?
ただちょっと大きさにビビッてただけだからな?

だが、座らされたのは橇の座面ではなくエリアスの膝の上で、姫君扱いは未だ続行中だ。
しかも俺が母性を指摘した後で心境の変化があったのか軌道修正して、今のエリアスは貴公子然としている。
どうやら俺のBボタン連打が間に合ってエリアスの進化を阻止できたらしい。
辺り一面雪と氷に覆われた白銀の谷で見るエリアスに母性は感じられず、どこからどう見ても勇者様だった。
今、エリアスのそれは最早育児でも介護でもなくエスコート。
そう、完璧なエスコートだ。
爪先から頭の天辺まで完璧な勇者様にエスコートされてみろよ。
こんなん惚れるだろ。

それにエリアスは雪が恐ろしく似合う。
白が似合わない奴はいないと言うが、エリアスの似合う白は白騎士隊の制服の白よりもこの雪の白だったんだと知る。
振り仰げば雪帽子を被ったギュンター城をバックに、エリアスが微笑む。
神々しくて目が潰れるんじゃないかと思ったが、それでも見るのを止めることなんて出来ない。
この目と心に永遠に焼き付けておきたい光景だった。

お陰で周りの景色なんて目に入らず、ずっとエリアスの首っ玉にしがみついてエリアスだけをうっとり眺めていたから俺たちの結婚を祝福して泉の畔に詰め掛けていた辺境伯領の人たちに手を振るも忘れていたんだが、自信に満ち溢れ誇らしそうなエリアスの格好良かったことといったら口元が緩くなってしまっても致し方ない。

「ナナセ、涎が垂れているぞ」

おっと、いけない。
橇の上はエリアスが何か魔法を使ったのか、冷たい風に吹かれることはなく涎が凍ることはなかったが、エリアスの隣に立つ者として俺がだらしない格好をしていたんじゃエリアスの威信に関わる。

エリアスに指摘されて慌てて自分の口の端をぺろりと舐めたら、顔を近付けてきたエリアスの唇まで一緒に舐めちまった。
それをどう勘違いしたのか、エリアスは急に頬を赤らめたかと思うときょろきょろと視線を彷徨わせて動揺しだす。

「……誘っているのか? 嬉しいが、ここではまずい。せめてこれで我慢してくれ」
「ひゃっ!?」

レザーのグローブを付けたままのエリアスの手が俺のコートの合わせを割って器用に婚礼衣装の下に入り込んでくる。

「んっ……く! エリーッ!」

エリアスの手なのにエリアスの手じゃないレザーの肌触りにぞわぞわしていると慣れた手つきで乳首を指で挟んできゅっきゅっと何度か転がすように愛撫され、俺は瞬く間にメスイキしてしまった。
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