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第三章 黎明と黄昏
〇三七 自己防衛おじさん①
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死を受け入れる必要はない。
生きたってことを叫べばいいのだ。
その二つはいつだって表裏一体なのだから。
俺は絶望的に言葉が足りていなかったけれど、エリアスは俺の言いたいことを正しく理解してくれた。
俺は泣いて泣いていっぱい泣いて、泣き疲れて眠っている間にロスの創造都市ゴルゴヌーザを後にしてルヴァ魔導帝国へと戻されていた。
目を覚ましたら、見覚えのあるルヴァ王宮のアール・ヌーボー様式の寝室のベッドで寝かされていて、ベッドサイドに引き寄せた椅子に座っていたエリアスが俺の手を握っていたのだ。
もうゴルゴヌーザは懲り懲りだからいいけど、何があったのかはエリアスが大体報告済みらしく、俺は何故か病人みたいにベッドに寝かされ、お見舞いに来てくれる人たちから腫物に触るような扱いを受けている。
大体な、お見舞いってなんだよお見舞いって!
俺は別に病気でもなんでもねえぞ!?
徹夜でセックスして寝不足で風呂で溺れかけたけど身体は至って健康だし!
でもな、エリアスの顔見たら何も言えなかった。
エリアスがな、起きてもりもり飯食ってる俺を見て泣きそうな顔で笑うんだよ。
今度はなんというか、エリアスから母性を感じるのは俺だけだろうか。
やっぱりBボタンを押したい。
その進化を止めたい。
だが心配かけたのは事実だし、そんな顔見たらもうエリアスの気の済むようにしてやろうと覚悟を決めた。
俺が大人しく寝ているだけでエリアスを安心させられるなら安いもんだしな。
何より驚いたのは、あしながおじさんがお見舞いのついでに例の課題を受け取りに来たときのことだ。
先触れの後、白髪に白い髭を蓄えた壮年の紳士――あしながおじさんが部屋に入って来るなり、エリアスは瞠目したかと思うと素早く立ち上がってぴしりと背筋を伸ばす。
「前皇帝陛下……」
待って♡
エリアス、今なんて?
しかし、寝ていていい雰囲気ではないので俺もベッドに肘をついて起き上がろうとすると制止の声が掛けられる。
「ナナセくん、ああ起きるな。そのままでいい。今回は大変だったね。それにご苦労だった」
おじさんは俺にそう微笑みかけてから、今度はエリアスに向き直った。
「エリアスくん。私は既に退位した身だよ。今はナナセくんのあしながおじさんとしてここにいる。この意味がわかるね?」
「……は」
あーこの喋り方、なるほど誰かの喋り方に似てると思ってた現皇帝陛下の喋り方とそっくりだわ。
なるほどな。おじさんの息子だったか。
俺の理解が追い付こうとしている間にもエリアスとあしながおじさん――ルヴァの前皇帝陛下の会話は進む。
「そしてそれが例の魔導書だね。本当に成功したんだね……」
「『黎明と黄昏』です。この為に一人犠牲に……」
提出するために用意しておいた「黎明と黄昏」をエリアスが差し出したが、おじさんは手を伸ばしかけたものの触れる直前で指を折って手を引っ込めた。
「そうか……いや、この件について私に発言する権利はないな。止めておこう。それに使用者も恐らく君たち二人に限定されていることだろう。私には閲覧権限がない」
どうするのだろうと思って見ていると、おじさんは引っ込めた手で髭をひとつ撫でてから高らかに宣言する。
「魔導書『黎明と黄昏』の提出により卒業に必要な条件を十分に満たしたものとする。これを以て卒業を認める」
待って♡
だからねえ、待って♡
さっきから超展開過ぎない!?
生きたってことを叫べばいいのだ。
その二つはいつだって表裏一体なのだから。
俺は絶望的に言葉が足りていなかったけれど、エリアスは俺の言いたいことを正しく理解してくれた。
俺は泣いて泣いていっぱい泣いて、泣き疲れて眠っている間にロスの創造都市ゴルゴヌーザを後にしてルヴァ魔導帝国へと戻されていた。
目を覚ましたら、見覚えのあるルヴァ王宮のアール・ヌーボー様式の寝室のベッドで寝かされていて、ベッドサイドに引き寄せた椅子に座っていたエリアスが俺の手を握っていたのだ。
もうゴルゴヌーザは懲り懲りだからいいけど、何があったのかはエリアスが大体報告済みらしく、俺は何故か病人みたいにベッドに寝かされ、お見舞いに来てくれる人たちから腫物に触るような扱いを受けている。
大体な、お見舞いってなんだよお見舞いって!
俺は別に病気でもなんでもねえぞ!?
徹夜でセックスして寝不足で風呂で溺れかけたけど身体は至って健康だし!
でもな、エリアスの顔見たら何も言えなかった。
エリアスがな、起きてもりもり飯食ってる俺を見て泣きそうな顔で笑うんだよ。
今度はなんというか、エリアスから母性を感じるのは俺だけだろうか。
やっぱりBボタンを押したい。
その進化を止めたい。
だが心配かけたのは事実だし、そんな顔見たらもうエリアスの気の済むようにしてやろうと覚悟を決めた。
俺が大人しく寝ているだけでエリアスを安心させられるなら安いもんだしな。
何より驚いたのは、あしながおじさんがお見舞いのついでに例の課題を受け取りに来たときのことだ。
先触れの後、白髪に白い髭を蓄えた壮年の紳士――あしながおじさんが部屋に入って来るなり、エリアスは瞠目したかと思うと素早く立ち上がってぴしりと背筋を伸ばす。
「前皇帝陛下……」
待って♡
エリアス、今なんて?
しかし、寝ていていい雰囲気ではないので俺もベッドに肘をついて起き上がろうとすると制止の声が掛けられる。
「ナナセくん、ああ起きるな。そのままでいい。今回は大変だったね。それにご苦労だった」
おじさんは俺にそう微笑みかけてから、今度はエリアスに向き直った。
「エリアスくん。私は既に退位した身だよ。今はナナセくんのあしながおじさんとしてここにいる。この意味がわかるね?」
「……は」
あーこの喋り方、なるほど誰かの喋り方に似てると思ってた現皇帝陛下の喋り方とそっくりだわ。
なるほどな。おじさんの息子だったか。
俺の理解が追い付こうとしている間にもエリアスとあしながおじさん――ルヴァの前皇帝陛下の会話は進む。
「そしてそれが例の魔導書だね。本当に成功したんだね……」
「『黎明と黄昏』です。この為に一人犠牲に……」
提出するために用意しておいた「黎明と黄昏」をエリアスが差し出したが、おじさんは手を伸ばしかけたものの触れる直前で指を折って手を引っ込めた。
「そうか……いや、この件について私に発言する権利はないな。止めておこう。それに使用者も恐らく君たち二人に限定されていることだろう。私には閲覧権限がない」
どうするのだろうと思って見ていると、おじさんは引っ込めた手で髭をひとつ撫でてから高らかに宣言する。
「魔導書『黎明と黄昏』の提出により卒業に必要な条件を十分に満たしたものとする。これを以て卒業を認める」
待って♡
だからねえ、待って♡
さっきから超展開過ぎない!?
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