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第2章 召喚術師と黒魔術師
魔術闘技祭
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「ほら、もっと欲しいっていってごらん」
俺はギルバートの手を力強くぎゅっと握る。
エネルギーが血を渡って受け継がれていくように。
「ふっざけんな、気色悪い言い方するんじゃねぇ」
「そんな風だと、もう手を繋ぐのはやめにするよ」
ギルバートは物凄い不快な顔で、俺に嫌悪した目を向ける。
「黙れ」
*
そんなこんなで俺はギルバートの家に住むことになった。
この街の相場は分からないが、流石に今、宿屋に毎日泊まるだけの資金はない。
それに『ギルバートへの定期的な魔力供給』といえば、苦い顔はされたが文句は言われなかった。
ラルフは悪いからといって、物置小屋に寝袋を持ち込んで寝ることになった。
「お前、魔女のことが知りたいんだったな」
ギルバートは俺が魔女の情報を知りたいといったことについて話してくれた。
―――まぁ、知っているも同然なんだが。
しかしここは、大人しく何もわからない振りを決めていこう。
「お前の言う魔女は、実はこのキサスの街が出身と言われている。ただ300年ほども前の話だ」
「300年前!?」
それは初耳だった。
俺は胸にある紫色のペンダントの事を考える。
頭の奥で誰かの笑い声が聞こえた気がした。
「そんな年齢だったのか……」
「俺も魔女について詳しいことは知らん」
ギルバートは本当に魔女についてはそれ以上、知らないようだった。
ではユウリのおじいさんは何故ギルバートを紹介したのだろうか。
「ただ俺も黒魔術の専門家だからな。わかることもある。……お前にかけられた呪い、生命を吸い取られたものとは別の何かがあるな」
俺はその言葉にドキッとした。
もしも、ギルバートにこの呪いの正体に気づかれてしまったなら。
軽蔑されるにちがいない―――
「だって、そもそもおかしいだろう。何の意味もなく1年分だけ生命を残すだと、バカげている」
「いや、魔女は気まぐれ、なんだって……」
俺が必死にごまかそうと、おろおろする。
しかしそんな俺を前に、ギルバートは表情一つ変えない。
やがてギルバートは呆れたようにため息を吐く。
「……どうでもいいな。興味がない。呪いのことは自分で考えるんだな」
危機一髪!
ギルバートは俺に何の興味もなかった!
―――悲しいかな。
まぁ、おかげで詮索をされずに済んで、助かったことには間違いがないようだ。
「それよりお前『魔術闘技祭』に出ろ」
「で、出ろって……。なんだ、それ?」
俺が聞き返すと、自分で言ったにも関わらず、ギルバートは面倒くさそうに俺の方を見る。
そんなに俺は嫌われているのか―――
「魔術闘技祭はこの街で1年に1度開かれる殺し合いだ。優勝者には10万ギルと今年は副賞に『真実の鏡』が手に入る」
「殺し合い!? そんなもの出るわけないだろ」
「安心しろ、この街はコルリよりも魔術に精通している。めったな傷じゃなければ、審判に助けられる」
めったな傷じゃなければって―――。
しかし、ギルバートの真意はなんだろう。
「お前が優勝して賞金を獲ってこい」
はい、なるほど。
「……ギルバートは出ないのか?」
「闘技祭は1ヵ月後だ」
言葉を完全に無視されている。
俺はため息を吐き出した。
「それで、その『真実の鏡』ってのは、なんなんだ」
「相手の本音、というものが覗けるらしい。……興味はないがな」
相手の本音が覗ける―――!?
俺はサムの顔を思い浮かべる。
あの日、俺がサムに告白してしまったあの時。
サムが俺を嫌っているのか、あの時何を考えていたのか、わかるかもしれない。
「……わかった。一つ条件がある」
「なんだ」
「もし俺が優勝したら、コルリの街に送ってくれ。金は全額渡す。それから真実の鏡をもらいたい」
「……まぁいいだろう。優勝できれば、な。俺は金が欲しいだけだ」
そして、俺は闘技祭に出るための1ヵ月の訓練を積むことになった。
俺はギルバートの手を力強くぎゅっと握る。
エネルギーが血を渡って受け継がれていくように。
「ふっざけんな、気色悪い言い方するんじゃねぇ」
「そんな風だと、もう手を繋ぐのはやめにするよ」
ギルバートは物凄い不快な顔で、俺に嫌悪した目を向ける。
「黙れ」
*
そんなこんなで俺はギルバートの家に住むことになった。
この街の相場は分からないが、流石に今、宿屋に毎日泊まるだけの資金はない。
それに『ギルバートへの定期的な魔力供給』といえば、苦い顔はされたが文句は言われなかった。
ラルフは悪いからといって、物置小屋に寝袋を持ち込んで寝ることになった。
「お前、魔女のことが知りたいんだったな」
ギルバートは俺が魔女の情報を知りたいといったことについて話してくれた。
―――まぁ、知っているも同然なんだが。
しかしここは、大人しく何もわからない振りを決めていこう。
「お前の言う魔女は、実はこのキサスの街が出身と言われている。ただ300年ほども前の話だ」
「300年前!?」
それは初耳だった。
俺は胸にある紫色のペンダントの事を考える。
頭の奥で誰かの笑い声が聞こえた気がした。
「そんな年齢だったのか……」
「俺も魔女について詳しいことは知らん」
ギルバートは本当に魔女についてはそれ以上、知らないようだった。
ではユウリのおじいさんは何故ギルバートを紹介したのだろうか。
「ただ俺も黒魔術の専門家だからな。わかることもある。……お前にかけられた呪い、生命を吸い取られたものとは別の何かがあるな」
俺はその言葉にドキッとした。
もしも、ギルバートにこの呪いの正体に気づかれてしまったなら。
軽蔑されるにちがいない―――
「だって、そもそもおかしいだろう。何の意味もなく1年分だけ生命を残すだと、バカげている」
「いや、魔女は気まぐれ、なんだって……」
俺が必死にごまかそうと、おろおろする。
しかしそんな俺を前に、ギルバートは表情一つ変えない。
やがてギルバートは呆れたようにため息を吐く。
「……どうでもいいな。興味がない。呪いのことは自分で考えるんだな」
危機一髪!
ギルバートは俺に何の興味もなかった!
―――悲しいかな。
まぁ、おかげで詮索をされずに済んで、助かったことには間違いがないようだ。
「それよりお前『魔術闘技祭』に出ろ」
「で、出ろって……。なんだ、それ?」
俺が聞き返すと、自分で言ったにも関わらず、ギルバートは面倒くさそうに俺の方を見る。
そんなに俺は嫌われているのか―――
「魔術闘技祭はこの街で1年に1度開かれる殺し合いだ。優勝者には10万ギルと今年は副賞に『真実の鏡』が手に入る」
「殺し合い!? そんなもの出るわけないだろ」
「安心しろ、この街はコルリよりも魔術に精通している。めったな傷じゃなければ、審判に助けられる」
めったな傷じゃなければって―――。
しかし、ギルバートの真意はなんだろう。
「お前が優勝して賞金を獲ってこい」
はい、なるほど。
「……ギルバートは出ないのか?」
「闘技祭は1ヵ月後だ」
言葉を完全に無視されている。
俺はため息を吐き出した。
「それで、その『真実の鏡』ってのは、なんなんだ」
「相手の本音、というものが覗けるらしい。……興味はないがな」
相手の本音が覗ける―――!?
俺はサムの顔を思い浮かべる。
あの日、俺がサムに告白してしまったあの時。
サムが俺を嫌っているのか、あの時何を考えていたのか、わかるかもしれない。
「……わかった。一つ条件がある」
「なんだ」
「もし俺が優勝したら、コルリの街に送ってくれ。金は全額渡す。それから真実の鏡をもらいたい」
「……まぁいいだろう。優勝できれば、な。俺は金が欲しいだけだ」
そして、俺は闘技祭に出るための1ヵ月の訓練を積むことになった。
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