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14・魔王の服従 中
しおりを挟む「や、ちょっと……何を」
謙斗の手がゆっくりと脚を撫であげ、片脚をひじ掛けに乗せた。
「やっ……!」
スカートは完全に開いてはいない。でも身動きひとつで、将軍たちの前に晒されてしまうだろう。階の下には、アードンたち7人が謙斗を見上げて立っているのだから。
思わずスカートの方へ手を伸ばしたその時、腰を押さえていた謙斗の手が動いた。
「あっ!」
いかにもわざとらしく身体の前をなぞり上げ、顎を掴む。驚いて仰け反った私の耳を、謙斗が噛んだ。
「ひぁっ」
思わず開いた口に、謙斗の親指がするりと入り込んだ。節くれだった太い指に、私の口は塞がれてしまう。
「見ての通りだ。魔王オリアニスは俺に服従を約束した」
「!?」
―――ちょっと待って、そんなこと言ってない。
そう言いたいけれど謙斗に舌を押さえられている私は、鼻にかかった呻き声しか出ない。いやだ、これじゃまるで……。おまけに謙斗は、椅子にかけた私の脚を、さっきからずっと撫でまわしているのだ。
これではどう見たって私は、負けた代償に勇者に身体を差し出した女王だ。……悔しいことに、それは王としてならありえない事とは言い切れない。
将軍たちの前で見せつけるように身体を撫で回され、私はたぶん屈辱で顔を真っ赤にしていただろう。そんな私にだけ分かるように謙斗は耳元で笑い、それから彼らに向けて言った。
「お前ら、下がっていいぞ。とりあえずいつも通りに動いていろ。―――ああ、俺の連れには構わずに、国へ帰してやれ」
「畏まりました、創造主」
アードンが返事をすると、全員頭を下げて出て行く。そのときちらりと振り返ったギエルムの目に、わずかに残念そうな表情が浮かんだのが見えた。それを見て私は悟る。
―――あれは、操られてるんじゃない。本当に謙斗に従っているんだ。
ギエルムの様子に、謙斗も気付いたらしい。低い声で一言、
「行け。余計なことを考えるなよ」
と付け加える。ギエルムは狼狽えたように視線を逸らし、急ぎ足で出て行った。
扉が閉まると、広間は再び静寂に包まれた。
私は今のことに衝撃を受けて、謙斗の膝にいるのも忘れたまま、閉じられた扉を眺めていた。
「……んっ!」
急にむず痒い感覚が走り、私は慌てた。ドレスの中へ入り込んだ手が、脚の間を撫でている。口を塞いでいた手が肩に移り、私の髪をかき上げた。
「やっ! 謙斗、離して!」
「……ふうん、俺が謙斗だって分かるんだな」
「……だって、それは……。あっ、やめて!」
私のドレスは、デコルテを広く開けている。するりと胸元を押し広げられると、自慢のおっぱいがぷるんと零れ出た。私は反射的に謙斗の腹に肘を入れようとして、愕然とする。
「嘘っ……。もう、何で?」
どうしてなのか、思ったように動けないのだ。この私、魔王オリアニスともあろうものが―――まるで小説のなかの乙女のように、弱々しく首を振るだけなんて。いったいどうしたというの?
「だから言ったろ、この世界で俺に逆らえる者はいないって。―――いい加減諦めろよ」
謙斗が後ろから私のおっぱいを包み、両手で捏ねるように揉み始めた。
「デカい胸にして、正解だったな」
私はカッと頭に血が昇った。確かに、人間だったころの私の胸は、決して豊かとはいえなかった。でもそれを、当時の謙斗にだって言われたことはなかったはず。それなのに……!
「悪かったわね!」
やはり私は、怒ったときが一番パワーが出せるらしい。咄嗟に謙斗を振り払い、次の瞬間、私は自分の部屋へ消えたのだった。
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