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42・新たな依頼 下
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話し合いの後、私はエリス様と市場へ行った。討伐に出るため、今日までアンナさんをお休みにしていたので、夕食は私が作ることにしたのだ。食材の買い出しに行くと言ったら、エリス様が一緒に行くと言い出した。
グリフ様とウェイン様は朝から乗ってきた馬の世話をし、カイン様は明日からの行動予定を報告に、また王宮へ行った。
「出発はカインの馬、帰りはグリフの馬。なら買い物は僕でちょうどいいよね」
……平等に、ということなのでしょうか。まあ、私にすれば、誰と一緒でも、1人でも、騒がれることに違いはないのだけど……。
お肉を買い、足りない野菜を少し買い足した。
「あら、ミア様ね? 今日はエリス様とお買い物ですか?」
お店で何か見ていると、必ずそんな声をかけられる。基本的に、にっこり笑って頷き、それ以上は話さない。声を出して返事をしてしまうと、相手はその先の会話まで求めてしまうから。
これはエリス様に教わった。
「笑顔を見せておくことで、相手は反応してくれたと思ってくれるんだよ」
あとは、あまりに不躾な質問をする人にも、同じようににっこり笑うだけにする。これは意外に、きっぱりと拒否が伝わるらしい。
さすがエリス様。
「きゃー、エリス様よ! ミア様と一緒だわ」
「お、あれが『エメラルドの乙女』か! 初めて見た!」
「3人の中で、誰が本命なのかしら?」
「ミア様、胸でけぇ……」
外から聞こえてくる、この手の声は聞こえないふり。笑顔、笑顔。……ふう。それにしてもいつの間に、こんな騒がれる立場になっちゃったんだろう……?
「ミア、ずいぶん町の人の扱いに馴れたね」
市場を出て、ようやく静かに歩ける道に差し掛かった時、エリス様がそう言って笑った。
「エリス様が教えて下さったおかげです。……でも、まだ馴れてはないですよ?」
「大丈夫、そうは見えないから」
「……カイン様やグリフ様も同じなんでしょうか?」
ふと思いついて聞くと、エリス様がまた笑う。
「カインは見れば分かるでしょ? 根っからの騎士で『勇者』だから、周りの思惑なんか気にしないし。……グリフは、見た目恐いからね。何も知らない人は迂闊に声かけたりしないよ」
「……そうですね」
エリス様と顔を見合わせて笑って、私達は館へ帰っていった。
そして夜、扉が叩かれた。
「カイン様?」
扉を開くと、カイン様が飛び込むように入ってきて、そのまま私を抱きしめる。まだ扉が閉まっていないのに。
「きゃっ!? 待って、カイン様っ!!」
「駄目だ、待たない」
カイン様は抱きしめた私を引きずるようにベッドに向かい、私の唇を捕らえようとする。
「ああ、せめて鍵っ……んんっ!」
口づけられた瞬間に、必死に魔法を放つ。風にあおられた扉が音をたてて閉まった。
でも、私の手で内鍵を閉じていないので、これだけでは封の術が発動しない。呪文を唱えれば封の術はかけられるけれど、口は塞がれている。
「んん、や、カインさ……んむぅ!」
逃れてもまた捕らえられ、術をかけられない。
いつの間にか私の足が、ベッドの台にふれた。カイン様は私を押し倒し、口づけながら胸のボタンを外していく。
どうして? カイン様、今日は何故こんな……?
あまりの性急さに戸惑いながらも、カイン様の激しい口づけは確実に私を蕩けさせていく。
「んん、んは……、ん!」
ああ、術をかけなくちゃ……。そう思うのに、胸元を広げられ、カイン様の手で触れられると……。
「んっ……、はあぁん!」
カイン様の唇が胸に移り、口が解放された。今のうちに、と口のなかで呪文を唱えようとする。それなのに、
「ぁ!」
「んっ……!」
乳首を摘ままれ、甘噛みされ、その度に呪文が口のなかで消えてしまう。
どうしよう、このままじゃ術をかけられなくなってしまうかも……、扉が閉まっていれば声は漏れないだろうか? ああ、でももし……!?
「んん!」
カイン様が私の乳首をひねる。
「何を考えてる? さっきから上の空だろう」
胸元からじっと私を見るカイン様の目が細められた。
「違うの、カイン様、鍵……」
「鍵……? ああ、大丈夫。誰も来やしない」
「いや、お願いカイン様……」
カイン様が苦笑して聞いた。
「そんなに恥ずかしいものか?」
私は涙目で頷く。その私を見て、カイン様のアイスブルーの瞳が揺れて、急にまた深く口づけた。
「んん!?」
そのまま、激しい愛撫に戻ってカイン様が言う。
「なら、そのまま恥ずかしがってろ。……おまえのその顔が、たまらないんだ」
「や、カイン様……!」
「鍵のことなんか気にする余裕、なくしてやる」
ちがうの、封の術が、と言いたいのに、私の口からはもはや喘ぎ声しか出てこない。せめて外に漏れないように、と口許を押さえる私を、カイン様は許してくれない。私の両腕を絡め取って、ひとまとめに枕に押さえつけて……。
「ああっ!」
空いた手で、いきなり下着がはぎ取られた。シャツはまだ、胸元が開いただけで袖が通っているのに。
「カイン様……?」
いつもと違うカイン様に、声が震えてしまう。
「ミア、すまない。……今日は優しく出来ないかも……」
言いながらズボンの前を開け、既に反り返るほどになったものを取り出して軽く扱く。
「……どうして……?」
おずおずとたずねる私の声は、口づけでまた塞がれ、一気に貫かれた。
「んんん━━━━っっ!?」
上からも下からもカイン様に塞がれて揺さぶられ、カイン様の言う通り、私は何も考えられなくなってしまう。
「んん! んはぁ……! あん、カイン様ぁ!」
「ミア、もっと、俺の名を呼べ……!」
「あぁ、カイン様、カイン様!」
「もっとだ、ミア、俺の名を呼んで、感じて、イってくれ……!」
カイン様は私の片脚を掴み、さらに深く突き入れた。
「あああああ!!」
そして一方の手で花芯を探り、指先できゅっと摘まむ。
「んやあぁ、それダメ、イっちゃう! あ、あぁ……カイン様ぁっ! あああああっっ!!」
「もっとだ、まだイけるだろ?」
「あん、ダメぇ……またぁ……! あぁ、イ、くぅ……っ!?」
「まだだ、ミア! イけよ、ほら!」
「あ、あ! もうダメ! カインさま、あ━━━!」
結局、完全に封の術の事など忘れてあられもない声をあげさせられ、カイン様が果てたときには声が枯れていた。
それもすぐに魔法で回復し、私は思いきってカイン様に聞いてみる。
「ね、カイン様?」
カイン様がけだるそうに私を見る。もうさっきまでの激しさはない。
「今日は……あの、どうして、こんなに……?」
「激しかったか、って?」
私は赤くなって頷く。
横を向いて抱き寄せた私の胸に顔を埋めて、カイン様が呟くように言った。
「すまない、……妬いたんだ」
「え……?」
「昨夜、グリフとしただろう? それは当然だと思ってたんだ。でも今日、エリスと楽しそうに歩いてるのを見たら、何だか分からないが……どっちにも妬けて仕方なくなってしまって……。怖かったか?」
意外な言葉に驚いたけれど、私は黙って首を振り、カイン様の頭を抱く。前に2人が言っていた、カイン様の完璧でないところを出してくれたように思って、少しだけ、カイン様を愛おしいと思った。
カイン様は私のそんな気持ちを分かってくれたのかどうか、胸に顔を埋めながら私の腰に手を回して抱きしめる。抱き合ったまま目を閉じて、カイン様との夜は更けていった。
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