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15・責任を取れ? 前

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 ……頭がいたい。いつもの頭痛と違う。ガンガンと鐘が鳴り響いてるみたい。

「おはようございます、シャルロットお嬢様」
部屋に入って来たメイドさんが、カーテンを開けていく。
「う……」
朝日がやけに眩しくて、掛け布団を引き上げようとした。ところが、わずかに身体を動かしただけで頭に激痛が走り、ぐわんぐわんと世界が揺れて轟音が響いた。
「!?」
 おまけに痛いのは頭だけじゃなかった。身体中が重くてだるくて動けない。
 ―――ああ、そうだった。
あたしはそこでやっと、昨夜のことを思い出した。





 テレーズの嫌がらせから、ジェラールのほくろを確認することに決めたあたしは、ブランデーの酔いも手伝って、まるで痴女よろしくジェラールのズボンを脱がせようとした。ところがこの世界の男性の服に疎いあたしが前立てと格闘していると、ジェラールが諦めたように大きな息を吐き、自分で上着を脱ぎ、前立てを緩めてくれた。

「本当に、見るのかよ」
ジェラールの目が冷たく光っている。低く絞り出すような声は、いつものあたしなら震えあがったかもしれない。
「見る。見せて、早く」
今のあたしなら、昨夜のあたしをぶっ飛ばしてもやめさせたい。もちろん昨夜のあたしはそのまま突っ走ったのだけれど。まったく恥じらいというものをどこかにやっていたのは、やはり酔っていたからなのだと思う。


 盛大なため息と舌打ちと一緒に、ジェラールがズボンの中から取り出したモノは……、赤黒くて、太くて大きくて……酔ってても口に出さなかった自分をほめてもいいと思うけど、ものすごくグロテスクな代物だった。
 ……これ、本当にあたしの中に入ったの? この一週間で何度か抱かれてるし、日本人だからそのくらい知ってたつもりだったけど。それでも間近で見た現物は……なかなか強烈だった。

 ちょっとズボンも下げて、根本がみえるくらいに足を開いて、ジェラールが言った。
「ほら、これでいいだろ。ほくろなんかない」
「……確認する」
 ―――誰か! あたしを止めてください! ここならまだ間に合うんです!
あたしはジェラールのモノに手を伸ばした。


 根本を確認するには、コ・レ・をちょっと……よけないといけない。見た目の恐ろしさに少しビビりながらも、あたしはそっと中ほどを掴んだ。
「……ふっ!」
触れた瞬間、ジェラールが声を漏らし、手の中の塊がびくっと震えた。
 ―――上と右側には、何もない。なら反対側……。
左手から右手にそれを持ち替え、外したほうの手が先の丸いところを掠めた。

「くっ……」
ジェラールの声はさっきよりも苦しそうで、あたしは上目遣いにジェラールの様子を窺う。眉間の皺は過去最高クラスになっていて、やっぱり怒ってるのかと不安になったあたしは、なるべく早く確認しようと思った。握った手を今度は右側に傾けて、左の根元を覗き込む。ほどいていた髪が、ジェラールの下腹にさらりと流れた。

「え……?」
 手の中のモノが、急にむくむくと質量を増した。あたしの手の中でくったりと傾いていたはずが、言うことを聞かないように立ち上がって、さっきより固くなっている。

「もう、いいだろ……? いい加減に……」
何やら苦しげなジェラールを制し、あたしは言った。
「まって、もう少し」
そう、ジェラールが自分では見られないところが、まだ残ってる。
「おいやめろ、本気か」
 慌てるジェラールを無視して、あたしは両手で大きくなってきたそれを腹側に押しつけるようにして、顔を近づけた。

「―――ない。ほくろなんて1個もない……!」
顔をあげてジェラールに叫んだあたしは、嬉しさのあまりまだ手の中にあったモノに……きゅっと力を込めてしまった。
「ふぐぅっ!!」
聞いたことのない呻きを発して、ジェラールの額に脂汗が浮かんだ。
「……もう分かったろ、馬鹿。……ほら、手を放せ」


 ジェラールの言葉はもう聞こえなかった。あたしは安心のあまり、泣きだしてしまっていたから。
「うわぁん、良かったジェラールぅ! ごめんなさい、信じたくないけど怖かったの……っ!」

 いきなり泣き出したあたしに、ジェラールはぎょっとしたようだった。ところがあたしは何と……握りしめたまま放さなかった、らしい。
「だって、あの女あたしより色っぽいし胸も大きいし……! それにあたし可愛くないしぃ!」
「お、おいシャル……! 大丈夫、分かったから手を……」
「でもジェラールが好きなの! ジェラールじゃなきゃ、嫌なのお!」
「分かった安心しろ、俺もシャルしか……って、頼むから手を……くぅっ!」

 そこでやっとあたしの手を掴んで放させたけれど、あたしの記憶はそこまでだ。しばらく泣いて、あたしはそのまま眠ってしまったらしい。眠りに落ちる寸前に、ジェラールの深いため息が聞こえた気がした……。





 そこまで無事に思い出したのはいいけれど、頭が割れるように痛くて、ベッドから起き上がることもできなかった。
そして自分のやらかしたことの重大さに、あたしは恐れおののいていた。どうしよう、もうジェラールの顔をまともに見られない……。その前に許してもらえるだろうか?


 そこへノックの音がして、お母様が入って来た。
「シャルロット、なんて馬鹿な事をしたの!!」
 ―――お母様ごめんなさい。謝りますから、どうかもう少し小さな声で……。
 こってりとお説教をされた後、お母様が教えてくれた。

 ジェラールは今朝早くお母様に面会し、あたしが謂れのない中傷に傷ついてお酒を飲んだこと、おそらく二日酔いで起きられないだろうから夕方にもう一度来ることを伝え、それから帰っていったらしい。

「いくら辛いことがあったからって、結婚前の娘があんなにお酒を飲むなんて……」
驚くことにあたしは昨夜、ブランデーの瓶を半分近く開けたらしい。そりゃ二日酔いにもなるわけだ。
 お父様は娘の失態に苦笑しながらも、秘伝の二日酔い回復薬を届けてくれた。おかげで、その日ジェラールが来る頃には、あたしはどうにか復活していた。






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