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11・何も考えるな 前

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「えっ、ちょっとジェラール!? 何、やめて!」
私は一瞬血の気が引いた。もしかしてジェラール……そういう趣味の人だったの!? やだ、それはやめてほしい。あたし初心者なんだから……そんな上級編は遠慮したい。
「ジェラール、お願い。ほどいて」
あたしの必死の懇願に、ジェラールは優しく笑った。

「安心しろ、こんな柔らかい布だ。おまえを傷つけることはない。結び目だってきつくないぞ」
ジェラールは縛った腕を頭の上で押さえつけ、ナイトガウンの胸のリボンをしゅるんと引っ張った。
「おまえは余計なことを考えすぎなんだ。気持ちいいのも恥ずかしいのも、おまえのせいじゃない」
 そして露わになった胸に指を這わせた。
「やだ、ジェラール……! 意味、分かんなっ……あっ!」
びくん、と身体が震える。

「だから、何も考えるな。ただ俺を感じてくれ」
何も考えるな、って……。それこそ無理。だいたいやだって言ってるのに、こんなことされて……あたしのせいじゃない……って何? もう、何を考えてるのか、本当に分からないよ?
「あんっ!」
だめ、自分のほうがもう考えるどころじゃない。ジェラールがあたしの胸に唇を寄せたから。


「ああ、だめぇ……!」
恥ずかしくて抗おうとしたけれど、縛った腕を軽く押さえられただけで身動きの取れない自分に、改めて気がつく。こうなっては、ジェラールに与えられる刺激を受け取ることしか出来ない。腕から力が抜けたのが分かったのか、ジェラールも押さえていた手を放した。

「あああ! 嘘、やあぁっ!?」
指と舌先で、両の乳首をくりくりと転がすようにされ、あたしは悶絶するかと思った。なんで? 胸だけで、こんなになっちゃうものなの? 
「胸、弱いんだなシャル……たまんねえ」
 その胸元でぼそっと呟かれてひくりと震えるあたしに見せつけるように、ジェラールはにやりと笑って舌を出し、両手で寄せた胸をこれ見よがしに舐め上げる。

「ひゃあん! ジェラ、ルぅ……やめっ……」
やだ、刺激が強すぎる……! なのに、あたしは泣きそうになりながらもジェラールから目を逸らすことが出来ない。
 そして、手首を縛られて動かせないことで、あたしは恥じらいからの無駄な抵抗をしようとはしなくなっていた。ジェラールが言っていたのは、たぶんこのことだったんだ。すると彼の言った通り、与えられる快感がすべてになっていく。

 ジェラールの瞳が細められ、そんなあたしを熱っぽく見つめていた。


「あ、あ、ジェラールっ……!」
脚のあいだから、くちゅくちゅと水音がしている。
 ジェラールがそこへ手を伸ばしたとき、あたしはもう縛られた手のことなど考えもしなかった。ところが潤いをたしかめるように優しくそこをなぞっていた指がするりと入り込んで思わず身体を捩ったとき、手首の戒めが急に緩んだ。
 ジェラールも別に気にもとめなかったし、あたしも解けたからと言って、もはや抵抗などする気はない。手首にスカーフが巻き付いたまま、枕の端を掴んで快感に耐えていた。

「ああっ、……も、やだぁ」
 ―――どうしよう、何でこんなに……気持ちいいの?
ジェラールの指は信じられないほど器用で、あたしはさっきまでの自分からは信じられない、鼻にかかった甘い喘ぎ声をあげていた。じわじわと追い詰められるように、快感がたかまってくる。
「あっ!?」
濡れた指の腹が、まだ触れられていなかった小さな尖りを見つけ出した。

「あ、やだ! そこだめ! やっ、ジェラール!」
そこに触れられると、身体中に電流が走ったみたいだ。耐えられずに身体を反らし、つま先まで震える。
「シャル、イけそうなのか?」
「わかん、ない……っ、ああだめぇ!」
 頭の隅で、これがそうなの? と思った気もするけれど、もう分からない。あたしは胸の上にいるジェラールの頭に手を伸ばして、サラサラの黒髪に指を入れた。

「や……ぁ! ジェラール、やだっ……!」
切ない痺れが、波のように繰り返してあたしを満たそうとする。
「大丈夫だシャル、ほら、―――イけよ」
ジェラールはあたしのなかの指はそのままに、痛いほどになった胸の頂に、そっと歯をたてた。
「ああああああっ!!」
甘い痺れが、激しく身体中を駆け抜けた。


 ―――すごい……何これ……。あたし、イっちゃった……?
ジェラールの頭を抱きしめたまま、あたしは少しの間呆然としていた。しばらくして彼が身体を起こして、あたしにキスをする。
「どうだ?」
「……なっ……馬鹿っ!」
額をくっつけるように囁かれた低い声にぞくっとしたけれど、口から出たのは可愛らしさの欠片もない言葉だった。だって、そんなこと聞かれたって、恥ずかしくて言えるわけないじゃない……!

「少しは素直になったかと思ったのに」
ジェラールは喉の奥で笑いながら、あたしの脇腹をすうっと撫で下ろし、足をつかんだ。
「や……!」
 びくん、と身体を震わせたあたしをまた笑い、ジェラールがあたしの脚をもう一度開く。
「え、ジェラール……? や、だめっ!」
 ジェラールが顔を寄せる先が分かって、あたしは狼狽えた。慌てて彼の頭を押さえようとしたけれど、もちろんまったく効果はなくて、あたしの脚はジェラールにがっちりと押さえられてしまった。

「ほら、素直にいいって言えよ?」
あたしを見上げるジェラールの目が、妖しくきらりと光った。



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