91 / 108
第八十五話 暗い森の中で
しおりを挟む工藤(海斗と亜紀ちゃんみたいな関係にずっと憧れてたんだけどなー……)
辺りは暗くなり風の音が聞こえる中で食事の準備を終えた一同は楽しく話しているが先程色々と見せつけられてしまった工藤は少しだけ元気がない様子を見せている
クシア「工藤さん?どうかしたのでしょうか?」
工藤「えっ!? 何でもないですよ……」
クシア「……そうですか」
違和感に気がついたクシアが声をかけるが嘘をついているというのはクシアも理解した上で頷いたのである
そしてしばらく時間が経つと海斗は今日聞けなかった事などをクシアやエナに尋ね始めた
海斗「そう言えば昼くらいにアリスは王国に入らない方が都合が良いみたいな事言ってたけどあれはどう言う事なの?」
クシア「その事なのですが……」
質問を受けたクシアは説明を始める、クシア達がレオス王子と出会い直接話を聞いた事でアリスをこの国には入れない方が良いと判断したとの事であった
その理由が最近この国に居たダイナ族の男が裏切って王国を守る兵士の多くを引き連れて行方をくらませており同じダイナ族のアリスが獣人達から酷い目に遭う可能性があると感じたからなのであった
海斗「そうだったのか……外で待機してたのは幸いだったって事か」
クシア「それもそうですね、その裏切ったダイナ族はこの国を守る兵士で最強と呼ばれるほどの実力を持っていたそうなのです」
海斗「アリス以外のダイナ族か……気になるな」
アリス「そうだったんだ……でもその人のせいでこの国を守る人達が殆ど居なくなったんだよね?」
アリスが悲しそうな声でクシアに尋ねると少しだけ間を置いて返事を返す
クシア「……嘘をつくのも悪いですから正直に言いますアリスさんも相応の覚悟があって着いてきたのでしょうから、ハッキリ言うとかなり滅茶苦茶になっているのが現状です」
普段は穏やかなクシアは真剣な表情となりアリスを真っ直ぐに見つめて事実を話し始める
クシア「その人達が居なくなってしまったせいで国の治安が悪くなっています」
海斗「そうなると悪い奴らがやりたい放題ってなるからな」
工藤「うん……そのせいで昼みたいな子供を攫う奴らが現れたりして大変みたいなの」
海斗「だから門の前の兵士はあんなにピリピリしてたって訳か……」
アスフェア「少し揉めちゃったけどそんな事情があるなんて知らなかったわ」
海斗「お前はどんな状況でも絶対揉めてたと思うけどな」
アスフェア「うるさいわね 大体あんただってその原因に……」
いつもの言い争いをしようとする二人にクシアは優しく微笑みかける
その表情には威圧感があり察した二人は黙り込んで静かになったのでクシアは話を続ける
クシア「それで私達が問題を解決する為にマールさんがここに行くように指示されたのですよ」
エナ「少しだけなら聞いたことはあったけどそんなに酷い状態だったなんて知らなかったな……」
海斗「別に今日中じゃなくても良いと思ってたけどマールが俺達を急いで行かせた理由も何となく分かった気がする」
アスフェア「まじで怒られるわよあんた」
クシア「そんな事もあってかマザーサルビア等の悪人を捕まえる余裕がないみたいです」
工藤「今は守る事で精一杯だから私達が頑張らないといけないって事ですね」
海斗「この国が大変だってのは分かったけど……やっぱり今日会った盗賊の奴らは少し違和感を感じたな」
クシア「やはり逃したのですね」
海斗「そうですね、話したのは少しだったけど俺はあいつらが悪い奴には見えなかった」
エナ「うん……私もそう思った」
海斗「やっぱりエナもそう思うんだね」
工藤「でも子供を攫っていたのは事実だよ?」
海斗「確かにそうだけど……上手く言葉にできないや」
工藤「確かに捕まえた子達はまだ子供って感じで根っこは良さそうな感じがしたけど……だからって許される理由にはならないと思う」
クシア「その辺はまた明日にでもゆっくり考えましょうか」
海斗「そうだな 遅い時間になってきたしな」
クシア「今からは二人ペアで見張りをしつつ他の人は風呂などを済ませていきましょう」
エナ「そうした方がよさそうだね、それでペアと順番はどうする?先に見張りをした人から寝ていくって感じでいいんだよね?」
クシア「はいその通りです一応工藤さんと私で結界を貼ってますが念には念をいれておいた方が良いかと。順番は今日一番疲れているアリスさんと海斗からが良いかと思います」
工藤「私もそうした方が良いと思うかなー」
エナ「……そうだね」
エナは二人の時間がほしかったのか少し寂しそうな表情を浮かべている
海斗「そんなに疲れてはないけどみんながそう言うなら先に行かせてもらおうかな アリスもそれで良い?」
アリス「うん」
海斗「なら行くか、交代の時間はどれくらいにする?」
クシア「1時間程で次の人と交代する形でいきましょう それと何か異常があったら大声で知らせてくださいね」
海斗とアリスは元気よく返事をしてその場から離れて行きエナ、クシア、工藤、アスフェアがその場に残りフェンリルはぐっすりと眠っている
エナ「次は誰が行く?」
クシア「次はエナと工藤さんが行ってもらって良いですよ 私が最後に行くつもりだったので」
工藤「それだとクシアさんが一人になっちゃいます」
クシア「フェンリルとホーリアーがいるので安心してください」
工藤「それなら大丈夫そうですね なら私はエナさんと一緒で良いですか?」
エナ「うん大丈夫だよ」
クシア「決まりですね フェンリルがいるので恐らく大丈夫だとは思いますが油断なさらぬようにお願いします」
工藤「ふふふ、やっぱりクシアさんはしっかりしてますね」
工藤の褒め言葉にクシアは照れくさそうにしており嬉しそうにしている
エナ「でも時々抜けてるところもあったりするよねー」
工藤「あーそれ分かりますクシアさんは王宮での授業中に転んだりうっかりとネタバレしちゃったりしてて可愛いって思ってました」
クシア「ううぅー 恥ずかしいです」
アスフェア「クシアのエピソードで盛り上がりそうね」
クシアのエピソードやソルセリの事などを中心に話が盛り上がり時々海斗とアリスの事も話に入れつつ全員が楽しそうにしており微笑ましい雰囲気が広がっている
その頃アリスと海斗は自分達の事を話されているとも知らずに見張りをしつつ話していた
アリス「クチュン」
海斗「なんだアリス?風邪でも引いたのか?」
可愛いらしいくしゃみをするアリスに海斗が話しかけるとその後に海斗も豪快なくしゃみをしてしまったのでアリスが笑っている
アリス「あはは 海斗お兄ちゃんもじゃん」
海斗「そうみたいだな また誰か噂でもしてるんだろうな」
アリス「んー?どう言う事?」
海斗「大人になれば分かるぜ」
海斗はうっすらと聞こえるクシア達の話し声の方向へと耳を傾けながらアリスに話す
アリス「私も一応15だし大人だよー」
海斗「そういえばこの世界ではそうだったな」
アリス「でもダイナ族の15はまだ子供だってマールお姉ちゃんが言ってた」
海斗「そうなのか そういやアリスは何で着いてきたの?」
アリス「私もティラお姉ちゃんみたいに世界の為に頑張りたいって思ったからだよ」
海斗「それにしてもあんなに外に出るなって感じだったのにあの人も変わったな」
アリス「それは海斗お兄ちゃんのおかげだよ だから私も変われたの」
海斗「そんなに大した事はしてないさ 最後に決めたのはアリスなんだから」
アリス「確かにそうかもしれないけど海斗お兄ちゃんに会えなかったら私はずっとあのままだったと思う」
海斗「……でもアリスが差別されてるって事を知ったら危険な目に合わせたくないってなる気持ちはかなり分かるんだよな」
アリス「それはマールお姉ちゃんが私を思ってやってたって事は分かってる」
海斗「それでもアリスはティラお姉ちゃんを見習って外に飛び出したんだろ?」
アリス「うん!!私にはそれなりの力があるからその力を悲しんでいる人達の為に使いたいって思ったから」
海斗「アリスは立派だな」
アリス「えへへ」
海斗はアリスの頭を撫でるとアリスは懐いた子犬のようになりとても嬉しそうにしている
海斗「でもまだ子供な部分はあるな」
アリス「もーう」
アリスと戯れ合いながら過ごしていると時間はあっという間に過ぎ去りエナと工藤がやってきて交代の時間となったのであった
0
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる