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桐生光
呼び声と性感帯(R-18)
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音無がいい表情を浮かべている。
自分がさっきまで酔っていたことも、爆弾発言をいくつか落としたことも全て覚えていた。酔っていたとは言え、恥ずかし過ぎる言動と年下の恋人からいいようにされたままでは、やはり黙っていることは無理だった。
「おれがおまえの弱点を知らないとでも?」
「そんなっ、さっきまであんなふにゃふにゃになってたのに…」
背中に1本人差し指の爪先を当てて、つぅっと下になぞる。音無の”いいところ”だ。
「あぁぁっ…!」
背中を逸らして悶える音無は、それだけで悲鳴を上げてしまうくらいには飢えているらしい。涙目で何かを懇願しているが、それが何かまでは分からない。音無のシャツを剥ぐように脱がせると綺麗なピンク色の先端が現れ、おれの理性が狂わされてしまいそうになった。
「…今度はおれから聞こうか。どうしてほしい?」
「うっ、ひかるさん…ずるい…かっこいい…すき…いっぱいちゅーして、気持ちよくなりたい…」
「まったく…欲張りなやつめ」
むずむずするような台詞の羅列に思わず笑ってしまい、お望み通り唇を重ねてやる。啄むように繰り返すと、美影が何か思い出したかのようにおれをソファに押し倒し、四つん這いになった。その弾みで顕になった美影の足の裏に手を伸ばし、すかさず土踏まずを指圧すると悲鳴を上げる。
「そこ、なんで…っ!」
「気持ちよくなりたいんだろ。なら、ここからだな」
足の裏も性感帯になりえると知っていたから、もしやとは思っていたが……指の付け根を擽ると音無はあられもない声を上げて、思い切り背中を仰け反らせた。
「ふあっ…!それだめ、だめだってっ…」
「ん?あんなにクセになると言っていたのに?」
足の指と爪の間をカリカリと爪の先で刺激すると、堪らないのか指先がキュッと丸まり悶えるように震えている。さっきまでリードしていたと思わせておきながら、されるがままになるのはさぞ予想できなかった事だろう。
「…先にイくのを我慢できたら、おれの事を好きにしていい」
「そんなっ…!まさか…足の裏なんて…」
「…試してみるか?」
美影は余裕そうな顔をしているが、表情とは裏腹に身体は正直だ。足指の間の付け根、ちょうど股のようになっている箇所に人差し指を擦り付ければ悲鳴が聞こえ、それと同時に足だけでなく腰も大きくしなった。
「ゆ、赦してっ…!いっ...だめぇ…おかしくなるっ…」
俺の身体に寄り掛かる美影の身体の一部が誇張しているのが分かり、仕方なしに足は解放してやる。しかし目の前に見える紅色の突起に、何もしない理由はなかった。
「…なら、こっちを気持良くしてやろうな」
「んふぁっ…あぁっ!」
音無の乳首は薄紅色で、とても綺麗な色をしていた。…こいつに散々弄られて、少し変色し始めていたおれのとは大違いだ。それの先端を指先で擽るように撫で、次いで摘まんでやり捩るとその声は更に大きくなった。自分にサディスティックな趣味はないが、音無の声を聞いているだけでおれも確実に興奮しているのを自覚してしまう。
「ここ、好き?」
「ん…うん…。はぁっ…ひかるさん…」
「なんだ?」
「俺、光さんにめちゃくちゃにされるの、堪らないなぁ…って思いましたけど、やっぱり俺はひかるさんの可愛いとこが見たい。とろっとろに蕩けた顔が見たい…。ねぇ、俺、ちゃんと我慢しましたよ…?」
「っ…!」
ワイシャツからはだけていたおれの胸元に手の平を押し当て、指先でまさぐると美影が乳首を緩く摘まんできた。痛みと同時に訪れた強烈なそれは…それまでの何もかもを吹き飛ばす勢いがあったのは認めざるを得ない。
「…まったく、おあずけ喰らった大型犬みたいだな…。『よし』」
実際にはないけれど、音無の尻からはち切れんばかりに振られている尻尾が見えた気がする。
とうとう観念して、俺は美影に大人しく抱かれてやることにした。
× × ×
ベッドに移動することすら煩わしくなり、二人はソファの上で互いに着ているものを次から次へと脱がしていった。ソファの近くには脱ぎ散らかされた衣服が散乱し、たまたまおねこの寝ている猫ベッドの上に桐生の着ていたシャツが被さる。余程心地いいのかぐるると喉を鳴らし、おねこは再び眠りについたようだ。
これで目撃者は誰もいなくなったと、音無は目の前で裸体を晒す桐生に容赦なく歯を立てた。
白い肌には歯形や吸われた痕が残り、赤ん坊のように桐生の乳首を口に含めて舌先で転がした。桐生の喉奥から細い嬌声が漏れ、我慢しようと奥歯を噛み締めるがそれは叶わず、艶めかしい吐息が漏れてしまう。
「んぅっ…あぁっ…音無…っ!」
「ふふ、何だかぞくぞくする…光さん、俺のこと好き?」
「っ…わかってるだろ…?」
「えぇ?ちゃんと言わないと分からないよ」
「…、美影」
「ん?」
「…だいすき」
向かい合っている音無の後頭部を引き寄せ、桐生が音無の唇に自分の唇を重ねる。ちゅっ、と可愛らしい音を立てて唇を離すと、「こんなのでいいのか…?」と恥ずかしそうに首を傾げた。
「はぁっ…ひかるさん、かわいいよぉ……!」
堪らず音無は桐生の顔中にキスを落として、全身の血液と羞恥心が集まっている桐生の滾りを優しく握った。
「ここ、もうこんなになってる…」
「っ…あ…!そこは、まだ…っ!」
「こんなにトロットロにさせて、まだ強がってるなんて…。なら、こっちがいいかな」
音無が桐生の秘部に指を添えると、入口の周りをゆっくり指の腹でなぞった。収縮するそこに少しだけ力を入れて指を差し込むと、すんなりと音無の指の侵入を許してしまう。指の第一関節まで入ると内部の締め付けが強くなってきて、音無は何度も抽挿を繰り返した。次第に第二関節、指の付け根と咥えるようになった頃には、桐生の表情には苦悶の表情は微塵も現れておらず、必死に何かと戦っているようだった。少し奥の方まで指先を侵入させ、少し掻き回すと我慢しきれずに、鈴口から粘度のある体液が滴り落ちた。もう一本増やした音無の指が根元まで入り込み、ばらばらと胎内を掻き回す様に指先を動かせば、あられもない嬌声が断続的に漏れ出てしまう。膝を曲げた両足を押し上げ、突き出された臀から指を引き抜いて、涎を垂らし痙攣するそこに音無が既に反り返った剛直を当てがう。
「あァっ…!」
「もしかして、光さん…自分で弄ってました…?」
「んうっ…それは…その…」
「初めてなのにこんなにすぐ、入らないですよね…」
「うっ、うるさい!小説の参考に…少しだけ…っ」
「へへっ…ひかるさん、エッチだぁ…ん…っ…ほら、俺のが入ってるの、わかります?力、抜いて…」
水音を撒き散らしながら進んでいき、最初は優しく、次第に激しく何度も何度も腰を動かすと、桐生が好きそうな場所に当たる感触がした。桐生の中は生温かくて柔らかく、それなのに締め付けるので音無も既にどうにかなりそうだった。初めて感じるその温度は、昂る感情を更に熱く掻き立ててしまう。
「くっ、ん、そこ…」
「そこ?」
「当たって…あぁぁ…!やめ…強い…!」
急に肉壁の締め付けが強くなり、それと同じくしてしこりのような箇所が少し柔らかくなってきたような気がした。桐生の両手が音無の背中を鷲掴みにし、汗ばむ素肌へ爪痕を遺す。
「ん…っ…この辺り、かな…?」
「やっ…!みか、そこだめ…!」
「ダメって言う割に気持ちよさそうですね?これが前立腺なのかな…」
喉が乾いて引き攣った声を上げ、桐生の足がソファの海で溺れる。憧れの上司を組み敷いている体勢が煽情的で、これでもかと音無を誘い込んだ。
「光さん、どう?」
「っ、なか、…きもちい…」
「ですよね?俺も…はじめてなのに、すんなり溶け込んじゃって…もう癖になりそう…」
こちゅ、とちゅ、と不思議な音を鳴らしながら中を掻き混ぜられ、桐生は頭の中が音無の色で埋め尽くされていくのを感じた。
「おとなし…みか…っ、あっ、うぁっ…!」
「ね、中、出して、いいですか…!」
「はやく…もう、我慢できな…っ」
「はぁ…っ…イっ…!!!ひかるさんっ!好きっ!」
「んあぁっ!」
音無が腰を思い切り奥まで突き出すと、音無の目の前が明滅して桐生の中に白濁をぶちまけた。初めて感じた快感は、何よりも『きもちがいい』と頭がはっきり憶える。一方桐生も言葉にできない程の衝撃を感じ、頭の中が真っ白になった。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、音無が桐生からまだ衰えていないそれを引き抜くと、白い体液がごぼりと零れた。
「くっ…美影!…少しは手加減しろっ…!」
「えへへ…でも、きもちよかったでしょ?」
返事は返らず、吐息と共に桐生が恥ずかしそうに小声で唸っているのが真実を物語っていた。
× × ×
土日に互いの部屋を行き来しようと提案したのは、平日の間に放ったらかしにしてしまう愛しい人を悲しませたくなかったから。平日は何かに追われるように働き詰めていたから、今となっては徹夜なんて以ての外だ。三食キッチリ食べて夜は人並みに寝ることをこの自由奔放な部下に課せてからは、どうやら体調がすこぶる良くなったらしい。
「はぁ…すっごかった…光さん、大丈夫ですか?」
「次はちゃんとゴムしろよ…しないのなら…おれがつけてやるから」
「なにそれ超コーフンする」
「ははっ…なんだそれ、ばかやろう」
おれに身体を預ける美影の体温が心地いい。おれよりも少しばかり平熱が高い彼の素肌は、情事の間だけひんやりと心地がよかった。多分こちらの方が火照ってしまうから、そう感じているのだろう。
あれから美影は風邪ひとつ引くことなく、定休日以外元気に毎日出勤している。それは上司としても…とても安心できるし、もう弱った美影を見たくはなかった。食欲旺盛で睡眠もたっぷり取れているようで、ひとまずは大丈夫らしい。
しかしその所為なのか、音無の体力や性的欲求も…底が無くなったようだ。
おれ自身は体力が底を尽きたような体の重さは否めないけれど、既に日付が変わって日曜日になった。まだ休みだし、明日は明日のおれがなんとかしてくれるだろう。今は美影と過ごす、この甘ったるくて気だるい時間を大切にしたいと心から願う。
「…美影こそ、無理してないか…?」
「よしてくださいよ。俺はいつでも余裕ですから!それに…ずっとお預け喰らっててやっと桐生さんとえっちできたんですよ?1回で終わらせる筈ないでしょう」
今夜は寝かせませんからね、なんて爆弾発言を言って、寝落ちするのが目に見えていたのに。
ソファから場所を移し、ベッドの上で頬杖をつきながらおれを見降ろして、くくっと笑う彼の笑顔は…俺なんかより、相当様になっていると思う。と言うよりどんな表情の音無も好きすぎて、これが要するに『惚れた弱み』なのだろうと実感する。こいつはおれのことを可愛いだのかっこいいのだと言うが、おれは所詮中年に足が掛かったオジサンに過ぎない。多少体形は気にするようになったけれど、何処にでもいる普通のサラリーマンだ。それなのに美影は横たわったおれの隣に寝転んで、『かわいくて超かっこいい俺のひかるさん』なんて呼びながらおれの髪を優しく撫でた。可愛いのはお前の方だと散々言った筈なのに。さっきのお返しのつもりなのだろうか。
お互い下着1枚だけの姿ですら、付き合いたての頃は心臓に悪かった。けれど今はすっかり見慣れてしまって、美影の逞しい胸筋がすぐ近くにあるのに安心感すら感じている。
「…おまえ、ずっと鍛えていたのか?やけに筋肉質になったと思ったが…」
「え?まぁ、俺は元々陸上やってましたから…それに鍛えればみんな大体そうなるんじゃないんですか?」
「おれのは…おまえに散々揉まれた所為で、人よりは柔らかくなったけどな…」
美影の引き締まった胸元から腹筋にかけて指先でなぞると、擽ったそうに美影が笑う。まるで彫刻のように無駄のない体つきは、普段から身体を動かしている証拠だろう。
一方本番はなかったと言えど、付き合ってから二人で会う度に美影に揉まれ、舐られているおれの胸はだらしない肉がついてしまった。この方が揉み甲斐があるとか、気持ちイイ顔してると音無に言われて以来、無理に鍛える必要もないと思ってしまっていたからだ。
流石に重いモノを持ち上げる筋力くらいはある。それに、筋トレするよりも小説の執筆に時間を割きたいが為の言い訳でもあった。少なくとも今は誰にも読ませられない、秘密の話を。
「そっか…胸、揉まれるとおおきくなるんですね」
「いや、それは女性だけだと…思うが」
「でも光さんだっておっきくなってるでしょう?はぁ…柔らかい…」
「大きくなっているんじゃなくて、垂れてるの間違いじゃないのか?」
伸ばされた手がおれの胸元を優しく掴む。どうやらまたスイッチが入ってしまったらしい。普段なら翌日に備え、既に寝ている真夜中なのだろうに目が冴えてしまって、俺も美影も暫く眠れそうにない。
さっき散々おかしくされた仕返しにと、音無の乳首も摘んでやる。
「っ、やめ、…!」
「美影もそこ、気持ちイイんだろ」
「なに言ってるんですか、こんなの…あんっ…!」
「ふふ、やってみないと分からないことばかりだな」
音無の胸元をまさぐると、小さな突起が少しだけ隆起した。表情は擽ったそうな、微妙な顔。更に乳首のその周りをなぞって、顔を近づける。唇で挟んだり軽く舌先で撫でるとどうやら興奮はしてるみたいで、おれの息が掛かる度に音無の息が上がった。
「ねっ、ひかるさん…っ!駄目だって…!」
「ここは…、まだまだって顔してるけど」
”まだ”と言う単語が適切かどうかは分からないけれど、おればかりが気持ちよくなってるのは申し訳ないから。
今度は彼の番だ。
自分がさっきまで酔っていたことも、爆弾発言をいくつか落としたことも全て覚えていた。酔っていたとは言え、恥ずかし過ぎる言動と年下の恋人からいいようにされたままでは、やはり黙っていることは無理だった。
「おれがおまえの弱点を知らないとでも?」
「そんなっ、さっきまであんなふにゃふにゃになってたのに…」
背中に1本人差し指の爪先を当てて、つぅっと下になぞる。音無の”いいところ”だ。
「あぁぁっ…!」
背中を逸らして悶える音無は、それだけで悲鳴を上げてしまうくらいには飢えているらしい。涙目で何かを懇願しているが、それが何かまでは分からない。音無のシャツを剥ぐように脱がせると綺麗なピンク色の先端が現れ、おれの理性が狂わされてしまいそうになった。
「…今度はおれから聞こうか。どうしてほしい?」
「うっ、ひかるさん…ずるい…かっこいい…すき…いっぱいちゅーして、気持ちよくなりたい…」
「まったく…欲張りなやつめ」
むずむずするような台詞の羅列に思わず笑ってしまい、お望み通り唇を重ねてやる。啄むように繰り返すと、美影が何か思い出したかのようにおれをソファに押し倒し、四つん這いになった。その弾みで顕になった美影の足の裏に手を伸ばし、すかさず土踏まずを指圧すると悲鳴を上げる。
「そこ、なんで…っ!」
「気持ちよくなりたいんだろ。なら、ここからだな」
足の裏も性感帯になりえると知っていたから、もしやとは思っていたが……指の付け根を擽ると音無はあられもない声を上げて、思い切り背中を仰け反らせた。
「ふあっ…!それだめ、だめだってっ…」
「ん?あんなにクセになると言っていたのに?」
足の指と爪の間をカリカリと爪の先で刺激すると、堪らないのか指先がキュッと丸まり悶えるように震えている。さっきまでリードしていたと思わせておきながら、されるがままになるのはさぞ予想できなかった事だろう。
「…先にイくのを我慢できたら、おれの事を好きにしていい」
「そんなっ…!まさか…足の裏なんて…」
「…試してみるか?」
美影は余裕そうな顔をしているが、表情とは裏腹に身体は正直だ。足指の間の付け根、ちょうど股のようになっている箇所に人差し指を擦り付ければ悲鳴が聞こえ、それと同時に足だけでなく腰も大きくしなった。
「ゆ、赦してっ…!いっ...だめぇ…おかしくなるっ…」
俺の身体に寄り掛かる美影の身体の一部が誇張しているのが分かり、仕方なしに足は解放してやる。しかし目の前に見える紅色の突起に、何もしない理由はなかった。
「…なら、こっちを気持良くしてやろうな」
「んふぁっ…あぁっ!」
音無の乳首は薄紅色で、とても綺麗な色をしていた。…こいつに散々弄られて、少し変色し始めていたおれのとは大違いだ。それの先端を指先で擽るように撫で、次いで摘まんでやり捩るとその声は更に大きくなった。自分にサディスティックな趣味はないが、音無の声を聞いているだけでおれも確実に興奮しているのを自覚してしまう。
「ここ、好き?」
「ん…うん…。はぁっ…ひかるさん…」
「なんだ?」
「俺、光さんにめちゃくちゃにされるの、堪らないなぁ…って思いましたけど、やっぱり俺はひかるさんの可愛いとこが見たい。とろっとろに蕩けた顔が見たい…。ねぇ、俺、ちゃんと我慢しましたよ…?」
「っ…!」
ワイシャツからはだけていたおれの胸元に手の平を押し当て、指先でまさぐると美影が乳首を緩く摘まんできた。痛みと同時に訪れた強烈なそれは…それまでの何もかもを吹き飛ばす勢いがあったのは認めざるを得ない。
「…まったく、おあずけ喰らった大型犬みたいだな…。『よし』」
実際にはないけれど、音無の尻からはち切れんばかりに振られている尻尾が見えた気がする。
とうとう観念して、俺は美影に大人しく抱かれてやることにした。
× × ×
ベッドに移動することすら煩わしくなり、二人はソファの上で互いに着ているものを次から次へと脱がしていった。ソファの近くには脱ぎ散らかされた衣服が散乱し、たまたまおねこの寝ている猫ベッドの上に桐生の着ていたシャツが被さる。余程心地いいのかぐるると喉を鳴らし、おねこは再び眠りについたようだ。
これで目撃者は誰もいなくなったと、音無は目の前で裸体を晒す桐生に容赦なく歯を立てた。
白い肌には歯形や吸われた痕が残り、赤ん坊のように桐生の乳首を口に含めて舌先で転がした。桐生の喉奥から細い嬌声が漏れ、我慢しようと奥歯を噛み締めるがそれは叶わず、艶めかしい吐息が漏れてしまう。
「んぅっ…あぁっ…音無…っ!」
「ふふ、何だかぞくぞくする…光さん、俺のこと好き?」
「っ…わかってるだろ…?」
「えぇ?ちゃんと言わないと分からないよ」
「…、美影」
「ん?」
「…だいすき」
向かい合っている音無の後頭部を引き寄せ、桐生が音無の唇に自分の唇を重ねる。ちゅっ、と可愛らしい音を立てて唇を離すと、「こんなのでいいのか…?」と恥ずかしそうに首を傾げた。
「はぁっ…ひかるさん、かわいいよぉ……!」
堪らず音無は桐生の顔中にキスを落として、全身の血液と羞恥心が集まっている桐生の滾りを優しく握った。
「ここ、もうこんなになってる…」
「っ…あ…!そこは、まだ…っ!」
「こんなにトロットロにさせて、まだ強がってるなんて…。なら、こっちがいいかな」
音無が桐生の秘部に指を添えると、入口の周りをゆっくり指の腹でなぞった。収縮するそこに少しだけ力を入れて指を差し込むと、すんなりと音無の指の侵入を許してしまう。指の第一関節まで入ると内部の締め付けが強くなってきて、音無は何度も抽挿を繰り返した。次第に第二関節、指の付け根と咥えるようになった頃には、桐生の表情には苦悶の表情は微塵も現れておらず、必死に何かと戦っているようだった。少し奥の方まで指先を侵入させ、少し掻き回すと我慢しきれずに、鈴口から粘度のある体液が滴り落ちた。もう一本増やした音無の指が根元まで入り込み、ばらばらと胎内を掻き回す様に指先を動かせば、あられもない嬌声が断続的に漏れ出てしまう。膝を曲げた両足を押し上げ、突き出された臀から指を引き抜いて、涎を垂らし痙攣するそこに音無が既に反り返った剛直を当てがう。
「あァっ…!」
「もしかして、光さん…自分で弄ってました…?」
「んうっ…それは…その…」
「初めてなのにこんなにすぐ、入らないですよね…」
「うっ、うるさい!小説の参考に…少しだけ…っ」
「へへっ…ひかるさん、エッチだぁ…ん…っ…ほら、俺のが入ってるの、わかります?力、抜いて…」
水音を撒き散らしながら進んでいき、最初は優しく、次第に激しく何度も何度も腰を動かすと、桐生が好きそうな場所に当たる感触がした。桐生の中は生温かくて柔らかく、それなのに締め付けるので音無も既にどうにかなりそうだった。初めて感じるその温度は、昂る感情を更に熱く掻き立ててしまう。
「くっ、ん、そこ…」
「そこ?」
「当たって…あぁぁ…!やめ…強い…!」
急に肉壁の締め付けが強くなり、それと同じくしてしこりのような箇所が少し柔らかくなってきたような気がした。桐生の両手が音無の背中を鷲掴みにし、汗ばむ素肌へ爪痕を遺す。
「ん…っ…この辺り、かな…?」
「やっ…!みか、そこだめ…!」
「ダメって言う割に気持ちよさそうですね?これが前立腺なのかな…」
喉が乾いて引き攣った声を上げ、桐生の足がソファの海で溺れる。憧れの上司を組み敷いている体勢が煽情的で、これでもかと音無を誘い込んだ。
「光さん、どう?」
「っ、なか、…きもちい…」
「ですよね?俺も…はじめてなのに、すんなり溶け込んじゃって…もう癖になりそう…」
こちゅ、とちゅ、と不思議な音を鳴らしながら中を掻き混ぜられ、桐生は頭の中が音無の色で埋め尽くされていくのを感じた。
「おとなし…みか…っ、あっ、うぁっ…!」
「ね、中、出して、いいですか…!」
「はやく…もう、我慢できな…っ」
「はぁ…っ…イっ…!!!ひかるさんっ!好きっ!」
「んあぁっ!」
音無が腰を思い切り奥まで突き出すと、音無の目の前が明滅して桐生の中に白濁をぶちまけた。初めて感じた快感は、何よりも『きもちがいい』と頭がはっきり憶える。一方桐生も言葉にできない程の衝撃を感じ、頭の中が真っ白になった。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、音無が桐生からまだ衰えていないそれを引き抜くと、白い体液がごぼりと零れた。
「くっ…美影!…少しは手加減しろっ…!」
「えへへ…でも、きもちよかったでしょ?」
返事は返らず、吐息と共に桐生が恥ずかしそうに小声で唸っているのが真実を物語っていた。
× × ×
土日に互いの部屋を行き来しようと提案したのは、平日の間に放ったらかしにしてしまう愛しい人を悲しませたくなかったから。平日は何かに追われるように働き詰めていたから、今となっては徹夜なんて以ての外だ。三食キッチリ食べて夜は人並みに寝ることをこの自由奔放な部下に課せてからは、どうやら体調がすこぶる良くなったらしい。
「はぁ…すっごかった…光さん、大丈夫ですか?」
「次はちゃんとゴムしろよ…しないのなら…おれがつけてやるから」
「なにそれ超コーフンする」
「ははっ…なんだそれ、ばかやろう」
おれに身体を預ける美影の体温が心地いい。おれよりも少しばかり平熱が高い彼の素肌は、情事の間だけひんやりと心地がよかった。多分こちらの方が火照ってしまうから、そう感じているのだろう。
あれから美影は風邪ひとつ引くことなく、定休日以外元気に毎日出勤している。それは上司としても…とても安心できるし、もう弱った美影を見たくはなかった。食欲旺盛で睡眠もたっぷり取れているようで、ひとまずは大丈夫らしい。
しかしその所為なのか、音無の体力や性的欲求も…底が無くなったようだ。
おれ自身は体力が底を尽きたような体の重さは否めないけれど、既に日付が変わって日曜日になった。まだ休みだし、明日は明日のおれがなんとかしてくれるだろう。今は美影と過ごす、この甘ったるくて気だるい時間を大切にしたいと心から願う。
「…美影こそ、無理してないか…?」
「よしてくださいよ。俺はいつでも余裕ですから!それに…ずっとお預け喰らっててやっと桐生さんとえっちできたんですよ?1回で終わらせる筈ないでしょう」
今夜は寝かせませんからね、なんて爆弾発言を言って、寝落ちするのが目に見えていたのに。
ソファから場所を移し、ベッドの上で頬杖をつきながらおれを見降ろして、くくっと笑う彼の笑顔は…俺なんかより、相当様になっていると思う。と言うよりどんな表情の音無も好きすぎて、これが要するに『惚れた弱み』なのだろうと実感する。こいつはおれのことを可愛いだのかっこいいのだと言うが、おれは所詮中年に足が掛かったオジサンに過ぎない。多少体形は気にするようになったけれど、何処にでもいる普通のサラリーマンだ。それなのに美影は横たわったおれの隣に寝転んで、『かわいくて超かっこいい俺のひかるさん』なんて呼びながらおれの髪を優しく撫でた。可愛いのはお前の方だと散々言った筈なのに。さっきのお返しのつもりなのだろうか。
お互い下着1枚だけの姿ですら、付き合いたての頃は心臓に悪かった。けれど今はすっかり見慣れてしまって、美影の逞しい胸筋がすぐ近くにあるのに安心感すら感じている。
「…おまえ、ずっと鍛えていたのか?やけに筋肉質になったと思ったが…」
「え?まぁ、俺は元々陸上やってましたから…それに鍛えればみんな大体そうなるんじゃないんですか?」
「おれのは…おまえに散々揉まれた所為で、人よりは柔らかくなったけどな…」
美影の引き締まった胸元から腹筋にかけて指先でなぞると、擽ったそうに美影が笑う。まるで彫刻のように無駄のない体つきは、普段から身体を動かしている証拠だろう。
一方本番はなかったと言えど、付き合ってから二人で会う度に美影に揉まれ、舐られているおれの胸はだらしない肉がついてしまった。この方が揉み甲斐があるとか、気持ちイイ顔してると音無に言われて以来、無理に鍛える必要もないと思ってしまっていたからだ。
流石に重いモノを持ち上げる筋力くらいはある。それに、筋トレするよりも小説の執筆に時間を割きたいが為の言い訳でもあった。少なくとも今は誰にも読ませられない、秘密の話を。
「そっか…胸、揉まれるとおおきくなるんですね」
「いや、それは女性だけだと…思うが」
「でも光さんだっておっきくなってるでしょう?はぁ…柔らかい…」
「大きくなっているんじゃなくて、垂れてるの間違いじゃないのか?」
伸ばされた手がおれの胸元を優しく掴む。どうやらまたスイッチが入ってしまったらしい。普段なら翌日に備え、既に寝ている真夜中なのだろうに目が冴えてしまって、俺も美影も暫く眠れそうにない。
さっき散々おかしくされた仕返しにと、音無の乳首も摘んでやる。
「っ、やめ、…!」
「美影もそこ、気持ちイイんだろ」
「なに言ってるんですか、こんなの…あんっ…!」
「ふふ、やってみないと分からないことばかりだな」
音無の胸元をまさぐると、小さな突起が少しだけ隆起した。表情は擽ったそうな、微妙な顔。更に乳首のその周りをなぞって、顔を近づける。唇で挟んだり軽く舌先で撫でるとどうやら興奮はしてるみたいで、おれの息が掛かる度に音無の息が上がった。
「ねっ、ひかるさん…っ!駄目だって…!」
「ここは…、まだまだって顔してるけど」
”まだ”と言う単語が適切かどうかは分からないけれど、おればかりが気持ちよくなってるのは申し訳ないから。
今度は彼の番だ。
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