46 / 72
第十二章 聖女と聖女
6
しおりを挟む
「大地が……光っている」
イウリスは、思わず魔物と向かい合っていることを忘れ、手を止めた。エウジェも同様に辺り一面の光に動きを止めた。
大地を覆うその光は暖かく、心地よく、そして目が離せなくなるほどに綺麗だった。
そう感じたのはイウリスやエウジェだけではなく、各地で魔物と対峙していた騎士や神官達、魔物溢れの兆候に怯えていた人々、そして港町で捉えられていた隣国の者も皆、動きを止めてその光を見た。
「素敵な光ね」
エウジェの言葉にイウリスは頷き、それから魔物の只中に居た事を思い出し、我に返ると辺りを改めて見回した。
「魔物が消えている」
先ほどまで二人を取り囲んでいた魔物はすっかりと姿を消し、そこには本来の姿を取り戻し、大地を駆け去って行く獣達が居るばかりだった。
命を奪わずに元に戻すことはできないはずの魔物達が、ただの獣に戻っている。
「聖女がやってくれたか」
ははっと笑い、イウリスは思わず地に座り込むと、エウジェの袖を引いた。エウジェがよろめいて待ち構えていたイウリスの腕に収まる。
「もう魔力も限界だ、一緒に休んでくれるか?」
「メイ様とルルタ殿下が戻るまででよろしければ」
そう言いつつも大人しくイウリスの胸に身を預けるエウジェ。既に二人共に魔力は尽きる寸前だった。
「後は王都の奴らを片づけるだけだが、後はカルス辺りがなんとかするだろう。正直そっちまでは手が回らん」
天を仰ぐイウリス、少しウトウトとしているエウジェ。そんな穏やかな二人の時間は、戻って来たルルタの言葉によって終わりを告げる。
「メイが、メイナが、目を覚さない」
メイナをぎゅっと抱きかかえ、真っ青な顔でルルタはそう、縋る子供の様な声で訴えた。
「ここは?」
魔力の流れと一つになった様な感覚がして、その先に女神が繋がっていると分かった途端に私は、光の中に居た。
目を射るような強い光ではなくて、柔らかくて優しい。それは女神シウナクシアの笑顔みたいな光。
「シア様?」
光の先に呼びかける。そこにきっと女神が居ると、そう思った。だけどそこに居たのは、女神だけではなかった。
杖を翳し、険しい顔で私を振り返ったのは、前聖女ケイナーンその人だった。
イウリスは、思わず魔物と向かい合っていることを忘れ、手を止めた。エウジェも同様に辺り一面の光に動きを止めた。
大地を覆うその光は暖かく、心地よく、そして目が離せなくなるほどに綺麗だった。
そう感じたのはイウリスやエウジェだけではなく、各地で魔物と対峙していた騎士や神官達、魔物溢れの兆候に怯えていた人々、そして港町で捉えられていた隣国の者も皆、動きを止めてその光を見た。
「素敵な光ね」
エウジェの言葉にイウリスは頷き、それから魔物の只中に居た事を思い出し、我に返ると辺りを改めて見回した。
「魔物が消えている」
先ほどまで二人を取り囲んでいた魔物はすっかりと姿を消し、そこには本来の姿を取り戻し、大地を駆け去って行く獣達が居るばかりだった。
命を奪わずに元に戻すことはできないはずの魔物達が、ただの獣に戻っている。
「聖女がやってくれたか」
ははっと笑い、イウリスは思わず地に座り込むと、エウジェの袖を引いた。エウジェがよろめいて待ち構えていたイウリスの腕に収まる。
「もう魔力も限界だ、一緒に休んでくれるか?」
「メイ様とルルタ殿下が戻るまででよろしければ」
そう言いつつも大人しくイウリスの胸に身を預けるエウジェ。既に二人共に魔力は尽きる寸前だった。
「後は王都の奴らを片づけるだけだが、後はカルス辺りがなんとかするだろう。正直そっちまでは手が回らん」
天を仰ぐイウリス、少しウトウトとしているエウジェ。そんな穏やかな二人の時間は、戻って来たルルタの言葉によって終わりを告げる。
「メイが、メイナが、目を覚さない」
メイナをぎゅっと抱きかかえ、真っ青な顔でルルタはそう、縋る子供の様な声で訴えた。
「ここは?」
魔力の流れと一つになった様な感覚がして、その先に女神が繋がっていると分かった途端に私は、光の中に居た。
目を射るような強い光ではなくて、柔らかくて優しい。それは女神シウナクシアの笑顔みたいな光。
「シア様?」
光の先に呼びかける。そこにきっと女神が居ると、そう思った。だけどそこに居たのは、女神だけではなかった。
杖を翳し、険しい顔で私を振り返ったのは、前聖女ケイナーンその人だった。
0
お気に入りに追加
213
あなたにおすすめの小説
クそッたレなセかイのナかデ-異世界にもルクハラはあったとさ
社会不適合者
ファンタジー
『異世界は素晴らしいところだ』なんて無責任な台詞、誰が言ったんだ?
元の世界でも虐げられる存在であった肥満体型の羽原木隆一(はばらぎりゅういち)は、そんな現世での生活から逃れたい一心で睡眠薬を大量に服用し、自殺を図った。次の人生は良いモノにしようと夢見て。
が、次の人生として放り出された異世界でも同じような位置づけだった!
といった感じでアンチ『異世界物語』というわけではありませんが、少し視点を変えてみました。
亜空間魔法の使い方~この魔法、こんな使い方があるんですよ?
いいたか
ファンタジー
「ポーターは戦闘をしない」 これは当たり前のことであった。 しかし、誰もが予想をしなかった。 亜空間魔法にこんな使い方があるなんて!
びっくり仰天の追放劇! ドラゴンを単騎で討伐出来るポーターは他に居るのか!?
一方で元パーティメンバーは...?
小説家になろう様、カクヨム様、アルファポリス様、ノベルアップ+様で掲載中。
隔週更新!
平和な異世界で競馬をはじめさせられました!
青井群青
ファンタジー
現代世界で競走馬の牧場従業員であった主人公はある日牧場まるごと異世界に転移してしまう。
転移先は長い戦乱が終わったばかりの平和になった異世界であった。
年上彼女と年下彼氏
naku0519
恋愛
これは彼と私の日常の何気ない会話です。
〰️章設定〰️
くが×ロンチー寸劇:原作。
未:cocomuに投稿されていないお話。
〰️イメージ元〰️
ろんち:@ronchimanzou
くが:@kugA_0519_
ーコラボ連動台本ー
マーク👉【c】cocomu投稿済み
【コラボ】年上彼女と年下彼氏(♂:1♀:1)|泣クさんの台本
http://cocommu.com/script/2a3182693f98479d9e6b117d761d062a #cocommu #ここみゅ
お姉様、ご自分が婚約破棄されたからと言って私の婚約者を奪わないで下さい
水月 潮
恋愛
シャルロット・ルーキエ公爵令嬢の姉・レジーヌは王太子・ダミアンと婚約しているが、レジーヌが彼の愛するマーシャ・オランド子爵令嬢を虐めたという理由で学園の卒業パーティーで婚約破棄される。
その数日後、両家の話し合いの場が設けられ、ダミアンとレジーヌの婚約は白紙に戻ることになった。
婚約破棄されたレジーヌは、自分にはもうまともな嫁ぎ先がないことを嘆き、ルーキエ公爵家の女当主としてシャルロットの婚約者であるエリック・ミュラ侯爵令息と結婚して、ずっと公爵家にいたいと主張する。
ちょっと待って下さい、お姉様。
ご自分が婚約破棄されたからと言って、私の婚約者を奪わないで下さい!
心から愛しているあなたから別れを告げられるのは悲しいですが、それどころではない事情がありまして。
ふまさ
恋愛
「……ごめん。ぼくは、きみではない人を愛してしまったんだ」
幼馴染みであり、婚約者でもあるミッチェルにそう告げられたエノーラは「はい」と返答した。その声色からは、悲しみとか、驚きとか、そういったものは一切感じられなかった。
──どころか。
「ミッチェルが愛する方と結婚できるよう、おじさまとお父様に、わたしからもお願いしてみます」
決意を宿した双眸で、エノーラはそう言った。
この作品は、小説家になろう様でも掲載しています。
【第一部完結】 龐統だが死んだら、魔法使いになっていた。どうすればいいんだ?
黒幸
キャラ文芸
中国・三国時代に三英傑の一人・劉備玄徳に仕えた軍師がいた。
惜しまれつつもこの世を去ったその者の名は龐統、字は士元。
主君の身代わりを務め、壮絶な死を遂げたはず……だったのに生きていた!?
露出狂変態巨乳女と旅をする羽目になった龐統の明日はどっちだ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる