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第八章 真っ暗聖女、企みを知る

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 そこにカルスが再び顔を出し、空気を変える様にぱんぱんと手を叩いた。
『はいはい。そういうのは、解決してからゆっくりやろうな。で、まずは大事なお話し。神殿の諜報部から情報が入った。起きた事を手短に言うぞ。この大地が女神の体でできていると言うのは知っているだろう。王城、そしてその中でも神殿はちょうど女神の心臓の中心辺りにある。そこに闇の魔力で出来た杭が打ち込まれた。そのせいで一気に魔力の巡りが狂っている』
 ラウミはその話を事前に聞いていたのか、身内の起こした事態に唇を噛み締めて耐えている。

 ここに飛ばされた時、女神は姿を現さなかった。もうその力もなかったんだろう。打ち込まれた『杭』は、女神の魔力を乱すだけの力があるという事。

『神殿に沸いた魔物は聖女を名乗った女が消して見せたそうだが、杭についてはメイナがやった事で、対処方法がないと言っているらしい。その上、今後は女神に何かあってはいけないからと聖堂を封鎖してしまった。……結果、魔力の巡りは狂い、各所で一斉に魔物が湧き始めている。今は神官、騎士が対応に向かってなんとか抑えられているようだが』
「いずれは、人の住む街や村にまで溢れてくるということ、かな」
 ルルタの言葉に、思わず皆が言葉を失う。
「そんな……」

 この村にだって魔物が現れることは稀にあった、でもそれは人が対処できる程度のはぐれ魔物くらい。それと、『魔物溢れ』とは訳が違う。どれだけの被害が出るか想像もつかない。

『さて、正直手詰まりなんだよな~。王は偽聖女の『祈りを捧げ、国中の魔物を封じて見せます』って言葉を全面的に信じちゃってるっぽいし。その上、ルルタが誘拐されたって言って、捜索に王国騎士総動員してるし』
 そこまでの言葉を聞いて、まさかとルルタは呟き、カルスに問う。
「待て、カルス。……その話から行くと、今、城の護りは?」
『王国騎士は王子様捜索で不在、聖騎士は魔物溢れに備えて各地に出てる。今厳重に守られているのは、聖堂だけだな』
「ほぼ、城は空じゃないか……陛下は馬鹿なのか」
 王子でもさすがにそれは不敬なのではと、私は、ハラハラしながら二人のやりとりを聞いていた。

「ラウミ、ロウデル伯爵と隣国に繋がりは?」
『……ございます』
 口にするのも嫌だ、という顔でラウミがそう答えた。
『姉が隣国の商人に嫁いだことから繋がりができただけだったのです。そこからどうも怪しい誘いがあったようで、叛意ありと見なされかねないので、誤解される様な事はやめる様にと言っていたのですが……』
「なるほどね、少し見えてきたよ」
 ルルタが目を細めて呟くと、思考の海に沈んでしまう。
 
『とにかく、なんとかしてあの杭を抜いてやらにゃいかん。でも、聖堂に準備なく入り込む事はかなり難しい。魔物を呼び出したのがあの偽聖女なら、のこのこ出向いていけば、簡単に魔物の餌だ。……手が思いつかん』
「手はあるよ」

 声に振り返る。そこには、ケイナーンが一本の白い杖を掲げて立っていた。
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