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第四章 真っ暗聖女、王子の約束
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そんな風に話しながら歩いていると、どこかから金属がぶつかり合う様な音が何度も耳に届いた。気になってキョロキョロと辺りを見回していると、動きで気がついてくれたのかレイリが足を止める。
「この音は、騎士達の訓練でしょう」
「お城の騎士といえば、お城を護る『内』の騎士と、魔物浄化の支援に出る『外』の騎士が居ると聞いたことがあるのですが」
神殿で学んだ事を思い出しながらそう言う私に、レイリは笑顔で答えた。
「王国騎士と聖騎士ですね。今訓練をしておりますのは、外の騎士である『聖騎士』の方々でしょう。訓練の様子をご覧になられますか?」
「はい!」
私は、その提案に飛びつく。『騎士』というものに興味があったから。
村にも時々は魔物が迷い込んできていた、でもその対処にやって来るのは近隣の神官と、田舎ではよくお世話になる冒険者達。
なので、あまり『騎士様』を見たことがない。
嬉しくて思わず足を早める私の目の前で廊下が終わり、扉の向こうにぱっと訓練場の様子が広がった。
「運が良かったですね、今日は執務であまり参加されていないルルタ殿下がいらっしゃいますよ」
「ルル様が、訓練に?」
「ご存じなかったのですか? 殿下は聖騎士を率いる騎士団長でもあられるのですよ」
そんな事も知らなかったのかと責める意図はなかったんだろうけど、私はちょっとだけ居心地悪く感じてしまう。
「あちらです」
レイリが指し示す方へ目をやると、大剣を持った全身鎧の相手に、身を守るものは胸当てだけの軽装で向き合っているルルタの姿が。体格差、およそ2倍。
「え! ルル様は大丈夫なんですか?」
止めるのは野暮なのはわかる、でも、もし怪我をしたらすぐにでも駆けつけようと、私は思わず拳を握って見守る。
「心配は無用かと、殿下はお強い方ですから」
呑気なレイリの言葉。
怖くて目を瞑りたい、でも目が離せない。
次の瞬間、振り下ろされた大剣に私は「ひっ」と小さな声を上げる。
だが、私の心配したような事態は訪れず、ルルタは軽く身を捻ると最小限の動きで大剣を躱した。そして、空振った大剣が地に突き刺さるのを横目に、身を屈めて一気に跳ぶ。
「わぁっ!」
思わず声が出るくらい、鮮やかな蹴りが放たれる。ルルタの脚は抉る様に全身鎧の首の継ぎ目を捉えていた。
どうっと鈍い音を立てて相手が倒れる。倒れてしまえば全身鎧はハンデでしかない。もう反撃する余裕もないだろう。
「すごい」
ルルタに賛辞の声をかけよう……と思ったところで、私はピタリと動きを止めた。
「ルル様……?」
ルルタが倒れた相手の傍らに立つと、無造作に脚を持ち上げ、もう一度振り下ろす。
鈍い音と、苦悶の声が上がった。
「魔物を相手にしようと言うのに、その程度の対応力では話にならないだろう? 分かったら早く立て」
冷たい言葉、表情が抜け落ちた顔。……いつも私に向けてくれるような優しい笑みは何処にもない、まるで別人に見えた。
「この音は、騎士達の訓練でしょう」
「お城の騎士といえば、お城を護る『内』の騎士と、魔物浄化の支援に出る『外』の騎士が居ると聞いたことがあるのですが」
神殿で学んだ事を思い出しながらそう言う私に、レイリは笑顔で答えた。
「王国騎士と聖騎士ですね。今訓練をしておりますのは、外の騎士である『聖騎士』の方々でしょう。訓練の様子をご覧になられますか?」
「はい!」
私は、その提案に飛びつく。『騎士』というものに興味があったから。
村にも時々は魔物が迷い込んできていた、でもその対処にやって来るのは近隣の神官と、田舎ではよくお世話になる冒険者達。
なので、あまり『騎士様』を見たことがない。
嬉しくて思わず足を早める私の目の前で廊下が終わり、扉の向こうにぱっと訓練場の様子が広がった。
「運が良かったですね、今日は執務であまり参加されていないルルタ殿下がいらっしゃいますよ」
「ルル様が、訓練に?」
「ご存じなかったのですか? 殿下は聖騎士を率いる騎士団長でもあられるのですよ」
そんな事も知らなかったのかと責める意図はなかったんだろうけど、私はちょっとだけ居心地悪く感じてしまう。
「あちらです」
レイリが指し示す方へ目をやると、大剣を持った全身鎧の相手に、身を守るものは胸当てだけの軽装で向き合っているルルタの姿が。体格差、およそ2倍。
「え! ルル様は大丈夫なんですか?」
止めるのは野暮なのはわかる、でも、もし怪我をしたらすぐにでも駆けつけようと、私は思わず拳を握って見守る。
「心配は無用かと、殿下はお強い方ですから」
呑気なレイリの言葉。
怖くて目を瞑りたい、でも目が離せない。
次の瞬間、振り下ろされた大剣に私は「ひっ」と小さな声を上げる。
だが、私の心配したような事態は訪れず、ルルタは軽く身を捻ると最小限の動きで大剣を躱した。そして、空振った大剣が地に突き刺さるのを横目に、身を屈めて一気に跳ぶ。
「わぁっ!」
思わず声が出るくらい、鮮やかな蹴りが放たれる。ルルタの脚は抉る様に全身鎧の首の継ぎ目を捉えていた。
どうっと鈍い音を立てて相手が倒れる。倒れてしまえば全身鎧はハンデでしかない。もう反撃する余裕もないだろう。
「すごい」
ルルタに賛辞の声をかけよう……と思ったところで、私はピタリと動きを止めた。
「ルル様……?」
ルルタが倒れた相手の傍らに立つと、無造作に脚を持ち上げ、もう一度振り下ろす。
鈍い音と、苦悶の声が上がった。
「魔物を相手にしようと言うのに、その程度の対応力では話にならないだろう? 分かったら早く立て」
冷たい言葉、表情が抜け落ちた顔。……いつも私に向けてくれるような優しい笑みは何処にもない、まるで別人に見えた。
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