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「2書」 ミリエネッタ令嬢という女の子は

(22) お嬢様に従います

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急な休暇を終えて戻って来た見習い執事に、誰も文句を言う者も居ない。ミリエネッタ令嬢の命令は絶対なのだ。


「お帰り、コム。君は優秀だから直ぐに執事に昇格できる。お嬢様に従っているだけで良い待遇が受けられる。こんな給料の高い職場は無い事を忘れないように。」


ミリエネッタ令嬢が買い取るくらいに気に入った奴隷。自立心が芽生えて逃げないとも限らない。執事は釘を刺したのだ。

勿論、コムは辞めるつもりは無い。父親が教えてくれた自分が竜人の子孫だという事を教えてくれたお嬢様は恩人でもある。


「お嬢様、父も母も感謝してました。お礼を申し上げます。」


ミリエネッタは、数人の部下達に仕事の指示を与えながら答えた。


「そー、それは良かった。」


どう、とればいいのだろう。「へー」よりは、良いかも。そう、考えよう。

父親が驚いていたが、あの日時計は竜人の祭壇の側に有った神聖な物らしかった。栄えていた竜人の国が滅びた後、それも崩れ去ったという。

自分達の犯した罪に封じられたドラコ大王様の記録。その為に、竜人は竜人である事を隠して生きてきたのだ。

全ては、失われた。残されたものは、無い。でも、血の証しとしてドラコ大王様の身姿だけは脳裏に刻み付けられて受け継がれていた。

何故、竜人の魔力は失われたのか?

それは、巨大な力を持つ大王を封じる魔法を使った事で竜人の全ての魔力も消してしまったのだ。取り返しのつかない結果となった。

そして、ミリエネッタ令嬢がコムを買い取って召使いとし竜人の末裔である事を教えた理由は?


(お嬢様が、何を考えて僕を世話してるのか。そんな事、どうでもいい。僕には、ミリエネッタお嬢様がご主人様だから!)


下働きの奴隷で、いつ売られて家族がバラバラになるかも分からない生活だった。こうして、身分を与えてくれたのはミリエネッタお嬢様だから。恩は忘れませんから。





【コムの本音】※お時間のある方は、どーぞ!(^ ^)


「本当は買い取られると聞いた時に父さんから男奴隷の心得を教わったんだ。女主人に仕えるっていう時は大事な仕事だからって。女の人とナンチャッテをした事の無い子供の僕には理解できてない処が多いけど準備万端オーケー!


なのに、なのに、一度もお呼びがかからないんです。何でも、やるつもりだったのに。僕の外見が気に入って高い金額を前の主人から要求されたというのに。じゃあ、何の為にっていうか。分からないまま。


突然、婚約させるとか言われて。それも、貴族の令嬢とだって。驚くー!オマケに僕に公爵の爵位をくれるっていうから。お嬢様って、変わり者。



ミリエネッタお嬢様
「爵位を特別な物と考えたら駄目。あんなの、ゴメス商会へ行ったら物置に山ほど置いてあるわ。借金のカタに納められたらしいけど。不満なら、王様にしてあげるけど?」


お嬢様は、恐ろしい事を言われるんです。国も売りに出されてるのがあるとか。それくらいは、買えるとか。大金持ちなんですねー。







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