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35-信頼を深めましょう。

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「大悟っ!」
 気がついたら、大悟をベッドに押し倒してた。
 うれしい。大悟が笑った。ちゃんとした笑顔だ。こんな表情、初めて見た。

 そして、その笑顔を見たとき、気づいてしまった。
 大悟の言った『我が侭』は、きっと俺の裸を見たかったってだけじゃない。恥ずかしいとか怖いとかを理由にして自分を隠したがる俺が、ありのままを大悟に示すことだったんだ。

 俺は、ゲイだってことや男漁りしてたことを、大悟にずっと隠してきた。唯一無二の親友として信頼はしていても、本当の自分を知られることがどうしても怖かったからだ。
 親友にも言えない秘密を抱えることは、それが自分の望みであっても苦しかった。でもきっと、気づいていながら知らないふりをしてくれていた大悟は、俺よりもっとつらかっただろう。

 誤魔化さないし、隠さない。それはふたりで決めたルールだ。だけど、ルールだからってだけじゃなく、いまなら大悟に何を知られても大丈夫だと心から信じられる。
 さっきの、俺が恥ずかしさを堪えながらも「見られたい」と告白し、自分で脱いでみせたことが、それを証明することになった。その証明を望んだことが大悟の『我が侭』で、だから『ありがとう』だったんだ。


 大悟がこんなに喜んでくれるなんて……。大悟がうれしいと、俺もうれしい。すごく恥ずかしかったけど、がんばってよかった。
 うれしい気持ちそのままに、ベッドへ倒れた大悟の上に四つん這いになる。端正な顔を見おろすと、そこには俺の急襲に驚いてはいても、笑っている瞳があった。

「俺がリードするんじゃなかったっけ?」
 やや楽しげな声で抗議されて、そういえばそうだったと思い出す。いくらうれしかったからとはいえ、飛びついて押し倒したのは失敗だったか。
 仕切り直すべきかどうか悩んでいると、大悟が四つん這いになってる俺の下を、足元のほうへとするする潜っていった。

「ああ、やっぱりきれいなピンクだ」
 俺の乳首の位置までずれた大悟が、俺の脇腹に手を添えながら、そんな感想をもらす。するりと這いあがってくる大きな手に、ベッドに着いたままの腕が震えた。

「この前は、もっと熟れたような赤色だったな。強くしたつもりはなかったんだけど、もしかして、ゆきなりは皮膚が薄いのかな」
 目標を定めて進んでくる指先に気をとられつつも、頭のなかでは、大悟の言葉を理解するのに必死だった。


 赤色だったって、なんのことだ? この前の夜は、乳輪まで膨らんだやらしい乳首を見られたくなくてシャツを脱がなかったはずだ。その乳首を初めて見られるんだと思ったから、俺はさっきあんなにも。

「んあっ」
「この格好、悪戯し放題だな」
「ふ、ぁんん、」
 昂ぶって、やはりふくりと膨らんでしまった乳輪を、やさしい指先にくるりと辿られる。気をつけないと、腕の力が抜けて大悟を押し潰してしまいそうだ。

「寝てるゆきなりを好きに世話するのも楽しかったけど、起きてるゆきなりを好きにできるのもなかなか」
 あっ、そうか、風呂だ! この前のセックスで俺ひとりが寝落ちして、そのあと大悟に世話をかけたんだった。

 なんだ。てことは、大悟には、すでに全部見られてるんだ。感じまくったエロい乳首も、精液まみれのペニスも、大悟を受け入れて腫れてしまったアナルも。何もかも全部。
 そこまで知られているなら、もう恥ずかしいことは何もない。そう思えば、羞恥も緊張もいくらか和らいだ。


 尖った乳首の先にそっと触れられて、ぴりりと走った痺れに背がしなり顎があがる。続けざまにつつかれて、鼻にかかった甘え声も堪えきれず、たちまち息が荒れた。

「ゆきなりは、どうしてほしい?」
 胸元から大悟の潜めた声がする。悪戯な指先が乳首から少しだけ遠のいた。

「ゆきなりがしてほしいこと、なんでもしてやる」
 いまのうちにと息を整えようにも、今度は大きな手で大胸筋をやわやわと押し揉まれて叶わなかった。わずかに食い込んで肋骨のかたちを確かめていく指先に、身体の深い部分がぞくぞくと震えてやまない。

 どうしてほしいかなんて、わかりきってる。この前みたいに、わけがわからなくなるくらい、どろどろにしてほしい。大悟といっしょに前後不覚になるまで気持ちよくなりたい。
「どうされるのが好き? 教えて、ゆきなり」
 甘さを含んだ声にそうねだられて、頭の奥がふわっと腫れるみたいに熱を持った。

 言っても、いいのかな。なんでもって大悟は言うけど、言ったら言ったで引かないかな。ついさっき、何を知られても大丈夫だと思ったはずなのに、また不安に囚われた。
 でも。でも大悟がしてくれるって。
 俺、大悟に。
「ち、ちくび……なめてほし」
 不安に欲が勝って、小さな声でだったけど言ってしまった。

 すると、わずかに笑んだ気配と同時に、背中に腕をまわされ抱き寄せられた。大悟を潰すまいと抗ったけど、力でこの男に敵うわけもない。あえなく肘を折って、待ち構える大悟の上に裸の胸元を差し出すことになった。


「あっああッ」
 乳首を乳輪ごと押し潰すようにして、濡れた熱が押し当てられる。そのままベロリと舐めあげられて、甘く鋭い痺れに息がとまった。

「舐められるの、好き?」
「す、すきっ」
 大悟に導かれるようにして本心を言葉にした途端、腫れたと思ってた乳輪がぎゅっと凝る。乳首がこりこりして痛い。その小さくて痛い粒を大悟がキスするみたいに、食んで、吸いあげ、引っぱり、齧る。終いには、大きく開いた口で、はむはむと大胸筋ごと甘噛みされた。

「ぅあっ、あん、も、だめっ」
 舐めてと言っただけなのに……こんなに激しい愛撫を乳首にされたことはない。痛いのに気持ちよくて、怖いのにうれしい。相反したような、そんな自分の反応も初めてだった。


「ああ、ごめん。片方だけ真っ赤になった」
 そう言われて、緩んだ抱擁のなか胸元に視線をやると、さんざん嬲られた乳首はそのあたり一帯が赤く熟れていて、乳輪の外側にはうっすらと歯形まで残っていた。放置されていたもう一方の乳首とは、すでに別物だ。

「こっちも舐めようか?」
 大悟が、やっぱり皮膚が薄いんだろうな、と言いながら、まだ無事なほうの乳首を摘まむ。
「ぃあッ、だめ、やだ」
 拒絶の言葉は、乳首を舐められていたあいだじゅう叫んでたせいで、早くも掠れていた。

「ああ、もうイキそう? 一度イッとく?」
「あああッ」
 ふいにペニスの先端をクルリと撫でられて、腰が引け膝が浮く。覗き込んでわかったが、大悟の腹には俺のものと思われる先走りがかなりの範囲で散っていた。どうやら、胸への愛撫を受けているあいだ、大悟にホールドされたまま相当に暴れたらしい。


「だめだめっ、そこはやだ、でちゃうからあっ」
 かろうじて支えていた身体を放棄して斜めに崩れながら手を伸ばし、腫れあがったペニスの先に悪戯を仕掛ける困った手を掴んでとめた。

「おちんちん、いや?」
 前回羞恥に塗れながら使った幼児語でからかうように問われたけど、恥ずかしいとか悔しいとか、そんなことに構える余裕はすでになかった。
「ん、いや」
「おちんちんでイクより、おしりが好き?」
「ぅん、すき、」

「じゃあ、ゆきなりのおしり、見せて?」
 男の色気を思わせる低く響く艶声で、えっちなことをあどけなくねだられた。
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