11 / 17
insider
第三話(3)愛す女 *
しおりを挟む
本当の自分がこんなにも淫らだなんて知らなかった。――例えば、サッカー選手は足を、まるで手のように器用に扱う。パラリンピックの選手も。
セックスと、神聖なるスポーツを比較検討するのもおかしな話かもしれまいが、多恵子のなかで、友哉のペニスは確固たる意志を持った手の如く動いた。
狡猾に。流麗に。
「――あ。あ、あぁああああーーっ!」
出したことのない、大声が出る。股を開き、足の先を突っ張らせ。
と、その足の指先を撫でられ、
「頑張り屋さんなんだね……多恵ちゃん」
友哉の言うところが分からず、絶頂のさなか、硬直する多恵子に、
「かたーくなっちゃうから。力、入っちゃうんだよねうんうん。
機会があったらオナニーの仕方も教えてあげるからうん。
あんまり、自分を追い込まない方向で、自分を解放させるやり方を、覚えといたほうがいいね。やっぱヨガだよなー」
そして多恵子のからだに伸し掛かり、ぴっちり上半身を密着させる。二人は、まるで、絡まる糸だ。全身で多恵子の欲動を味わおうとせん友哉が、
「ああ多恵ちゃんの、びくびく、ってする感じ気持ちいい……幸せ」
大部分が圧倒的なる快楽に支配されながらも、1%くらいの多恵子が冷静に問いかける。――演技。それとも本音?
恐ろしいことに友哉の腰使いは止まらない。高みにのぼりつめているさなかの多恵子に、また新しい景色を見せようとしているのだ。
赤子のように、多恵子は大泣きした。泣き叫んだ。感覚も声も馬鹿になったみたいだった。
信じられないマグマの渦に投じられ、その中心にいるのは他の誰でもない、自分自身――なのだった。
帰り際、ふたりは言葉少なだった。
建物を出ると、友哉が、
「もし――それを恥ずかしいことだと思っているのなら、それは、違う。
人間は、さらけ出す生き物なんだよ。多恵ちゃん。
赦し、赦されて生きていくんだ――。
使えるものは、なんだって使ったっていい。
頼ることが、恥ずかしいことだなんてぼくは思わない――なにも、ぼくが、こうしたサービスの提供者であること関係なしにね。
ひとに言えない秘密なんか、誰だってあるさ。ぼくにもある。
だけど――多恵ちゃん。
いつかきっと、ぼくの言う意味が分かる日が来る。いまはまだ、混乱のさなかにいるかもしれないけれども。
多恵ちゃん――ぼくは、きみのために出来ることがあるのなら、なんだってするから。
遠慮なく、言って。ね?」
ご丁寧にも別れ際に、行きつけのバーの名刺も渡してくれた。
ひとり、帰宅した多恵子は、先ず、自分を追い込んだ後に、友哉の渡した名刺を見る。素敵なデザイン。フォントも色も凝っている。押しつけがましくならない程度に個性を出すこういうのには、オーナーの性格が露骨に出る。
それでも、多恵子は。
友哉に会うときはあくまで客の顔を貫こうと決めた。
それは、限りない絶頂に導いてくれた友哉のサービスに対する敬意に基づいてのことであった。
*
セックスと、神聖なるスポーツを比較検討するのもおかしな話かもしれまいが、多恵子のなかで、友哉のペニスは確固たる意志を持った手の如く動いた。
狡猾に。流麗に。
「――あ。あ、あぁああああーーっ!」
出したことのない、大声が出る。股を開き、足の先を突っ張らせ。
と、その足の指先を撫でられ、
「頑張り屋さんなんだね……多恵ちゃん」
友哉の言うところが分からず、絶頂のさなか、硬直する多恵子に、
「かたーくなっちゃうから。力、入っちゃうんだよねうんうん。
機会があったらオナニーの仕方も教えてあげるからうん。
あんまり、自分を追い込まない方向で、自分を解放させるやり方を、覚えといたほうがいいね。やっぱヨガだよなー」
そして多恵子のからだに伸し掛かり、ぴっちり上半身を密着させる。二人は、まるで、絡まる糸だ。全身で多恵子の欲動を味わおうとせん友哉が、
「ああ多恵ちゃんの、びくびく、ってする感じ気持ちいい……幸せ」
大部分が圧倒的なる快楽に支配されながらも、1%くらいの多恵子が冷静に問いかける。――演技。それとも本音?
恐ろしいことに友哉の腰使いは止まらない。高みにのぼりつめているさなかの多恵子に、また新しい景色を見せようとしているのだ。
赤子のように、多恵子は大泣きした。泣き叫んだ。感覚も声も馬鹿になったみたいだった。
信じられないマグマの渦に投じられ、その中心にいるのは他の誰でもない、自分自身――なのだった。
帰り際、ふたりは言葉少なだった。
建物を出ると、友哉が、
「もし――それを恥ずかしいことだと思っているのなら、それは、違う。
人間は、さらけ出す生き物なんだよ。多恵ちゃん。
赦し、赦されて生きていくんだ――。
使えるものは、なんだって使ったっていい。
頼ることが、恥ずかしいことだなんてぼくは思わない――なにも、ぼくが、こうしたサービスの提供者であること関係なしにね。
ひとに言えない秘密なんか、誰だってあるさ。ぼくにもある。
だけど――多恵ちゃん。
いつかきっと、ぼくの言う意味が分かる日が来る。いまはまだ、混乱のさなかにいるかもしれないけれども。
多恵ちゃん――ぼくは、きみのために出来ることがあるのなら、なんだってするから。
遠慮なく、言って。ね?」
ご丁寧にも別れ際に、行きつけのバーの名刺も渡してくれた。
ひとり、帰宅した多恵子は、先ず、自分を追い込んだ後に、友哉の渡した名刺を見る。素敵なデザイン。フォントも色も凝っている。押しつけがましくならない程度に個性を出すこういうのには、オーナーの性格が露骨に出る。
それでも、多恵子は。
友哉に会うときはあくまで客の顔を貫こうと決めた。
それは、限りない絶頂に導いてくれた友哉のサービスに対する敬意に基づいてのことであった。
*
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
親戚のおじさんに犯された!嫌がる私の姿を見ながら胸を揉み・・・
マッキーの世界
大衆娯楽
親戚のおじさんの家に住み、大学に通うことになった。
「おじさん、卒業するまで、どうぞよろしくお願いします」
「ああ、たっぷりとかわいがってあげるよ・・・」
「・・・?は、はい」
いやらしく私の目を見ながらニヤつく・・・
その夜。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
“5分”で読めるお仕置きストーリー
ロアケーキ
大衆娯楽
休憩時間に、家事の合間に、そんな“スキマ時間”で読めるお話をイメージしました🌟
基本的に、それぞれが“1話完結”です。
甘いものから厳し目のものまで投稿する予定なので、時間潰しによろしければ🎂
「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話
赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。
「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」
そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる