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第一部 予兆
#01-03.立証
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夫となる成岡雅哉と出会ったのは、お見合いパーティーの場であった。めでたく両想いとなった二人は、互いに職場が近いということもあり、仕事帰りに何度か飲んだ。
当時、雅哉は三十六歳。周りの皆が結婚しており、焦りを感じていたようであった。
鳴海の目から見て、取り立てて雅哉に悪い点があるとは思えなかった。見た目がよく、感じもいい。軽妙なトークに時々自虐や自尊を織り交ぜる。その手腕に、いつしか魅了される自分がいた。
年齢も年齢なので、思い切って、四回目のデートで鳴海のほうからプロポーズをした。あのときの、雅哉の嬉しそうな顔は、いまだ忘れられない。それなのに。
なのに――。
結婚すると、雅哉は、鳴海に、仕事を辞めるように言った。鳴海としては、それは別に構わなかったのだが、部屋がすこしでも散らかっていると雅哉は激怒した。二人は結婚を機に、中古マンションを購入したのだが、それにしてもその部屋に対する執着ぶりは、度を過ぎているように思えた。
トイレは、毎日掃除しなければ彼は怒り、洗濯のされていないワイシャツがあろうものならまた――切れた。廊下にごみが落ちてようものなら舌打ちをする。大の大人なのだから、それくらい、自分ですればいいのに、と鳴海は思ったが、その疑問を口にすることはなかった。三十六年も実家で甘やかされて育つとこうなるのか。鳴海の前で雅哉はまるで子どもだった。金を稼ぐご長男。対して鳴海は、三十二歳。男をよりどりみどり選べる年頃は過ぎた。出会いはないというわけではなかったが、二十代の丸々八年間、彼女は不倫をしていた。その男があまりに魅力的で、他の男になど興味が持てなかった。いま思えば、あれは、あの男が他の女のものだからこそそそられたのだと、そう冷静に振り返られるようになったが。
よって鳴海にとって、新婚時代は、甘酸っぱいものでもなんでもなく、雅哉という暴君をなだめすかすことに費やした、苦い記憶を伴う期間であった。特に結婚して一年間は、毎日さめざめと泣いていた。喜びと悲しみを一度に手に入れた彼女が思いだすのはそう――妹のことであった。
同じ、佐渡島出身の妹。愛らしい見た目を持ち、ちょっとドジで、皆が、助けざるを得なくなる得な性格の持ち主……。頭の回転が鈍く、瞬発力のない、無能な女の子……五歳離れた妹に対する鳴海の評価は、そんなだった。
クールビューティ。鳴海の外見を一言で評するならそれだ。それに対し、愛くるしいビジュアルの妹、詩文……。鳴海を産んだあと、母は一度流産をした。それだけに、第二子である詩文への思い入れは強かったはずだが……強すぎたようにも思えた。
勉強も、スポーツも、八十点程度の女の子。百点を取ることはなかった。鳴海の目に見て、妹はなにかが足りなかった。五歳も離れていると価値観を共有するのは難しい。悩む問題のレベルが違うのだ。友達にはなれなかった。妹はあくまで、妹でしかなかった。鳴海が女友達にいじめられて辛い思いをしていたとき、あの子は、外で転んで目の上を切って母親に泣いて甘えていた。そのことはいつまでも深い傷として鳴海のなかに残った。――母を、奪ったのは、あの子だ。
遅れを取る娘に対し、最初は丁寧に話を聞いてやっていた母であるが、ある時点から突き放すようになった。能力に秀でた鳴海の価値に気づき、なにかにつけて『おねえちゃんに比べてあんたは!』……叱り飛ばすようになった。
ざまあみろと思う自分が八割。……可哀想に、と気の毒がる感情が鳴海のなかの一割程度を占めていた。五歳六歳の頃、――最も母親に甘えたい時分に母を奪ったのはあの子だ。あれは――天罰だ。わたしからお母さんを奪った罰を食らったのだ。自業自得だと鳴海は思った。
やがて、母親からそしられることに慣れてしまった妹がなにをしでかしたというと――引きこもり。当時は、登校拒否と呼ばれており、不登校などという呼称はなかった。酒屋を営む富田(とみた)家にとって、娘の不登校は大きな痛手であった。世間から後ろ指をさされ、詩文だけではない、姉である鳴海ですらも、外出すれば近所の人間から色眼鏡で見られるという、不快な事態を経験した。
わたしが、学校さぼっているわけではないのに。
といつも鳴海は思った。悔しかった。悲しかった。妹のせいで、両親は口論が絶えず――無理に学校に行かせようとする父に殴打され、いい加減になさい、と絶叫する母……地獄絵図だった。血塗られた青春がそこにはあった。なので、故郷に対して、いい思いを鳴海は抱いていない。
部屋から出ることもままならなかった妹は、通信制の高校に通った。必要なときは近所の目を盗み、親のどちらかに連れ出してもらい、上京していたようだ。詩文が高校生のときには、既に鳴海は東京に出ていたので、仔細を知らない。帰省しても妹は引きこもりっきりで鳴海を無視した。ただ、貞子みたいに髪がやたら長く、不気味だったことを記憶している。
だから、妹が上京し、髪型を変え、メイクを学び、別人のように生まれ変わったさまに驚愕した。元々素材は、よかったのだ。そして、なにかにつけて要領の悪かった妹は、経験値を重ねることでその知力のなさをカバーしていたように見えた。メイクについては雑誌を読んだり、友達から聞いたり……。鳴海が、初めての仕事や不倫で悩んでいるさなか、遅れながらも輝かしい青春を満喫する姿はあまりに眩しく――鳴海のこころを、妬いた。
夜中に電話を受けたときは心臓が止まるかと思った。酒の席でよく覚えていないというのが、不幸中の幸いであった。合意のものであるのかそれすら定かではないという状況下で、訴えることも出来なかった。妊娠していないのが、不幸中の幸いであった。あのとき妹に告げた台詞を、いまだに鳴海は記憶している。――騙されるほうが悪いのよ。
悪いことをしたなどとは、思っていない。因果応報。自業自得という、便利な言葉が世の中にはある。
妹は未婚だ。彼氏が出来たという話を聞くことはあれど、長続きしないようである。三十一歳。そろそろ、女としての幸せを意識してよい年頃であろうが、妹とさほど親しいわけではないので、口にするのは憚られた。それに、妹に、関心などなかった。妹の存在は常に、故郷でつけられた癒えない傷を刺激してくれる。それから、妹に対する一言では言い表せない感情を。妹という存在は常に、自尊心を、劣等コンプレックスを、刺激してくれる。
鳴海にとって、結婚生活は、忍耐であった。すぐに子どもでも授かれば事態は違っていたろうが、なかなか子どもが出来ず、そのことについても、彼女は、悩んでいた。こんな悩みなど、誰にも言えやしない。鳴海にとって夫は常に、暴君だった。あれをしておけこれをしておけと命ぜられ、それが出来ないと露骨に機嫌が悪くなる――。自分の姿と、なにかにつけて要領の悪かった妹の姿が重なった。遅ればせながら鳴海は、妹の苦悩を、体感することとなる。誰かと比較されることがどれほどの苦痛を伴うのか。夫の雅哉が比べているのは明らかに母親――鳴海の義母であった。美人でなんでもパーフェクトにこなせる専業主婦であった義母は、確かに素晴らしいひとであった。だが、雅哉は、鳴海と結婚したのだ。義母ではない。雅哉は時々、自分ではなく、義母を映し出した完璧な妻を求めている――そう思えることが、あった。やがて、鳴海は、幾多もの口論を重ねるうちに、意識的に夫の要求に応える、完璧で貞淑は妻を、演ずるようになった。苦悩に満ちた結婚生活が四年目に突入したある日、鳴海は、震える手で郵便受けに入れられた白い紙きれを手にした。そこには、
――富田詩文と、成岡雅哉は不倫関係にある。
パソコンで打たれた文字で、誰がなんのために投下したのか、分からなかった。驚いたが――真実であろう、と確信に近いものを鳴海は抱いた。
詩文と雅哉が関係を結んで一年が経過した頃であった。鳴海は、違和感には気づいていた。時々夫は遅く帰る。遅く帰った日はやたら機嫌がいい。メールをこまめに削除している。その晩、鳴海は、夫の携帯を盗み見た。通話履歴を消すところまでは思い至らなかったらしい。一度紹介したきり……結婚式で顔を合わせたきりのふたりが、密に連絡を取り合う理由など、どこにも思い当たらない。
夫は、裏切ったのだ。こんなにも誠心誠意、尽くす、わたしを……。
ヘドロのように、黒々とした感情が腹の底から湧いてくる。鳴海の苦しみを知らず、のうのうと睡眠を貪る夫を刺し殺そうかと、思ったほどだ。
台所にて顔を洗い、鳴海は冷静さを取り戻した。――やられっぱなしでいいの? と内なる鳴海が囁く。こんな、……暴君野郎のために、尽くして尽くして。仕事まで辞めて、生活費を切り詰めて……。それがどれほどの苦労を伴うものなのか、あの男は理解――していないのよ。馬鹿なやつ。他人に保険を斡旋する仕事をしているくせに。無能なやつ。
――さあ。どうする。
あくまで、着信履歴を見る限りでは、事実に違いない。誰があんな手紙をよこしたのかは別として――では、どうする? 離婚する? 妹と夫をから慰謝料をむしり取る――? いいや。
そんな生易しい手段では、足らない。
もっともっとやつらを苦しめる――鳴海の服従と献身を無下にしたやつらを足蹴にする、そんな手段はないものか。悩んで悩んで、鳴海は眠れぬ夜を過ごした。この煩悶を、苦しみを、やつらに与えてやりたい――。
腹の奥で渦巻く感情を直視し、鳴海は、保留するという決断を下した。待っていればいつか、チャンスは来るはず。罰せられるべきやつらに、天罰を食らわせられる夜が。夜明けが待ち遠しいと思いながら、鳴海はベッドに入り、目を閉じた。朝はもう、間もなくであった。
*
当時、雅哉は三十六歳。周りの皆が結婚しており、焦りを感じていたようであった。
鳴海の目から見て、取り立てて雅哉に悪い点があるとは思えなかった。見た目がよく、感じもいい。軽妙なトークに時々自虐や自尊を織り交ぜる。その手腕に、いつしか魅了される自分がいた。
年齢も年齢なので、思い切って、四回目のデートで鳴海のほうからプロポーズをした。あのときの、雅哉の嬉しそうな顔は、いまだ忘れられない。それなのに。
なのに――。
結婚すると、雅哉は、鳴海に、仕事を辞めるように言った。鳴海としては、それは別に構わなかったのだが、部屋がすこしでも散らかっていると雅哉は激怒した。二人は結婚を機に、中古マンションを購入したのだが、それにしてもその部屋に対する執着ぶりは、度を過ぎているように思えた。
トイレは、毎日掃除しなければ彼は怒り、洗濯のされていないワイシャツがあろうものならまた――切れた。廊下にごみが落ちてようものなら舌打ちをする。大の大人なのだから、それくらい、自分ですればいいのに、と鳴海は思ったが、その疑問を口にすることはなかった。三十六年も実家で甘やかされて育つとこうなるのか。鳴海の前で雅哉はまるで子どもだった。金を稼ぐご長男。対して鳴海は、三十二歳。男をよりどりみどり選べる年頃は過ぎた。出会いはないというわけではなかったが、二十代の丸々八年間、彼女は不倫をしていた。その男があまりに魅力的で、他の男になど興味が持てなかった。いま思えば、あれは、あの男が他の女のものだからこそそそられたのだと、そう冷静に振り返られるようになったが。
よって鳴海にとって、新婚時代は、甘酸っぱいものでもなんでもなく、雅哉という暴君をなだめすかすことに費やした、苦い記憶を伴う期間であった。特に結婚して一年間は、毎日さめざめと泣いていた。喜びと悲しみを一度に手に入れた彼女が思いだすのはそう――妹のことであった。
同じ、佐渡島出身の妹。愛らしい見た目を持ち、ちょっとドジで、皆が、助けざるを得なくなる得な性格の持ち主……。頭の回転が鈍く、瞬発力のない、無能な女の子……五歳離れた妹に対する鳴海の評価は、そんなだった。
クールビューティ。鳴海の外見を一言で評するならそれだ。それに対し、愛くるしいビジュアルの妹、詩文……。鳴海を産んだあと、母は一度流産をした。それだけに、第二子である詩文への思い入れは強かったはずだが……強すぎたようにも思えた。
勉強も、スポーツも、八十点程度の女の子。百点を取ることはなかった。鳴海の目に見て、妹はなにかが足りなかった。五歳も離れていると価値観を共有するのは難しい。悩む問題のレベルが違うのだ。友達にはなれなかった。妹はあくまで、妹でしかなかった。鳴海が女友達にいじめられて辛い思いをしていたとき、あの子は、外で転んで目の上を切って母親に泣いて甘えていた。そのことはいつまでも深い傷として鳴海のなかに残った。――母を、奪ったのは、あの子だ。
遅れを取る娘に対し、最初は丁寧に話を聞いてやっていた母であるが、ある時点から突き放すようになった。能力に秀でた鳴海の価値に気づき、なにかにつけて『おねえちゃんに比べてあんたは!』……叱り飛ばすようになった。
ざまあみろと思う自分が八割。……可哀想に、と気の毒がる感情が鳴海のなかの一割程度を占めていた。五歳六歳の頃、――最も母親に甘えたい時分に母を奪ったのはあの子だ。あれは――天罰だ。わたしからお母さんを奪った罰を食らったのだ。自業自得だと鳴海は思った。
やがて、母親からそしられることに慣れてしまった妹がなにをしでかしたというと――引きこもり。当時は、登校拒否と呼ばれており、不登校などという呼称はなかった。酒屋を営む富田(とみた)家にとって、娘の不登校は大きな痛手であった。世間から後ろ指をさされ、詩文だけではない、姉である鳴海ですらも、外出すれば近所の人間から色眼鏡で見られるという、不快な事態を経験した。
わたしが、学校さぼっているわけではないのに。
といつも鳴海は思った。悔しかった。悲しかった。妹のせいで、両親は口論が絶えず――無理に学校に行かせようとする父に殴打され、いい加減になさい、と絶叫する母……地獄絵図だった。血塗られた青春がそこにはあった。なので、故郷に対して、いい思いを鳴海は抱いていない。
部屋から出ることもままならなかった妹は、通信制の高校に通った。必要なときは近所の目を盗み、親のどちらかに連れ出してもらい、上京していたようだ。詩文が高校生のときには、既に鳴海は東京に出ていたので、仔細を知らない。帰省しても妹は引きこもりっきりで鳴海を無視した。ただ、貞子みたいに髪がやたら長く、不気味だったことを記憶している。
だから、妹が上京し、髪型を変え、メイクを学び、別人のように生まれ変わったさまに驚愕した。元々素材は、よかったのだ。そして、なにかにつけて要領の悪かった妹は、経験値を重ねることでその知力のなさをカバーしていたように見えた。メイクについては雑誌を読んだり、友達から聞いたり……。鳴海が、初めての仕事や不倫で悩んでいるさなか、遅れながらも輝かしい青春を満喫する姿はあまりに眩しく――鳴海のこころを、妬いた。
夜中に電話を受けたときは心臓が止まるかと思った。酒の席でよく覚えていないというのが、不幸中の幸いであった。合意のものであるのかそれすら定かではないという状況下で、訴えることも出来なかった。妊娠していないのが、不幸中の幸いであった。あのとき妹に告げた台詞を、いまだに鳴海は記憶している。――騙されるほうが悪いのよ。
悪いことをしたなどとは、思っていない。因果応報。自業自得という、便利な言葉が世の中にはある。
妹は未婚だ。彼氏が出来たという話を聞くことはあれど、長続きしないようである。三十一歳。そろそろ、女としての幸せを意識してよい年頃であろうが、妹とさほど親しいわけではないので、口にするのは憚られた。それに、妹に、関心などなかった。妹の存在は常に、故郷でつけられた癒えない傷を刺激してくれる。それから、妹に対する一言では言い表せない感情を。妹という存在は常に、自尊心を、劣等コンプレックスを、刺激してくれる。
鳴海にとって、結婚生活は、忍耐であった。すぐに子どもでも授かれば事態は違っていたろうが、なかなか子どもが出来ず、そのことについても、彼女は、悩んでいた。こんな悩みなど、誰にも言えやしない。鳴海にとって夫は常に、暴君だった。あれをしておけこれをしておけと命ぜられ、それが出来ないと露骨に機嫌が悪くなる――。自分の姿と、なにかにつけて要領の悪かった妹の姿が重なった。遅ればせながら鳴海は、妹の苦悩を、体感することとなる。誰かと比較されることがどれほどの苦痛を伴うのか。夫の雅哉が比べているのは明らかに母親――鳴海の義母であった。美人でなんでもパーフェクトにこなせる専業主婦であった義母は、確かに素晴らしいひとであった。だが、雅哉は、鳴海と結婚したのだ。義母ではない。雅哉は時々、自分ではなく、義母を映し出した完璧な妻を求めている――そう思えることが、あった。やがて、鳴海は、幾多もの口論を重ねるうちに、意識的に夫の要求に応える、完璧で貞淑は妻を、演ずるようになった。苦悩に満ちた結婚生活が四年目に突入したある日、鳴海は、震える手で郵便受けに入れられた白い紙きれを手にした。そこには、
――富田詩文と、成岡雅哉は不倫関係にある。
パソコンで打たれた文字で、誰がなんのために投下したのか、分からなかった。驚いたが――真実であろう、と確信に近いものを鳴海は抱いた。
詩文と雅哉が関係を結んで一年が経過した頃であった。鳴海は、違和感には気づいていた。時々夫は遅く帰る。遅く帰った日はやたら機嫌がいい。メールをこまめに削除している。その晩、鳴海は、夫の携帯を盗み見た。通話履歴を消すところまでは思い至らなかったらしい。一度紹介したきり……結婚式で顔を合わせたきりのふたりが、密に連絡を取り合う理由など、どこにも思い当たらない。
夫は、裏切ったのだ。こんなにも誠心誠意、尽くす、わたしを……。
ヘドロのように、黒々とした感情が腹の底から湧いてくる。鳴海の苦しみを知らず、のうのうと睡眠を貪る夫を刺し殺そうかと、思ったほどだ。
台所にて顔を洗い、鳴海は冷静さを取り戻した。――やられっぱなしでいいの? と内なる鳴海が囁く。こんな、……暴君野郎のために、尽くして尽くして。仕事まで辞めて、生活費を切り詰めて……。それがどれほどの苦労を伴うものなのか、あの男は理解――していないのよ。馬鹿なやつ。他人に保険を斡旋する仕事をしているくせに。無能なやつ。
――さあ。どうする。
あくまで、着信履歴を見る限りでは、事実に違いない。誰があんな手紙をよこしたのかは別として――では、どうする? 離婚する? 妹と夫をから慰謝料をむしり取る――? いいや。
そんな生易しい手段では、足らない。
もっともっとやつらを苦しめる――鳴海の服従と献身を無下にしたやつらを足蹴にする、そんな手段はないものか。悩んで悩んで、鳴海は眠れぬ夜を過ごした。この煩悶を、苦しみを、やつらに与えてやりたい――。
腹の奥で渦巻く感情を直視し、鳴海は、保留するという決断を下した。待っていればいつか、チャンスは来るはず。罰せられるべきやつらに、天罰を食らわせられる夜が。夜明けが待ち遠しいと思いながら、鳴海はベッドに入り、目を閉じた。朝はもう、間もなくであった。
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