被虐趣味のオメガはドSなアルファ様にいじめられたい。

二十九話 罪悪感で

　次に目を覚ましたとき、セシリオは自室のベッドにいた。

　意識が明確になってくると、右腕がズキズキ痛むのを感じる。

　ふとベッドの脇を見ると椅子に座ったルイがうたた寝していた。

「ルイ様…」
「ん…あ、起きましたか。……よかった」

　ルイはセシリオよりも満身創痍で、全身に包帯を巻かれていたが、ずっとセシリオのそばにいてくれたらしい。

「ルイ様、身体は大丈夫なんですか？」
「僕は大丈夫です。怪我するのも慣れているので。でも、あなたは…違う」

　セシリオが悲痛な顔をしてセシリオの右腕を見た。

「少し傷跡が残るかもしれないと。あなたは普通の人より肌が白いから」

　傷一つない、大切に大切に育てられたセシリオの綺麗で美しい体に傷跡をつけてしまった。ルイは責任を感じているのだろう。
　あの集団は明らかにセシリオではなくルイを狙っていた。

「申し訳ありません」
「いいんです」

　痛んで上がらない右手の代わりに左手でルイの頬に触れる。

「ルイ様が無事なら右手ぐらい、どうってことないですよ」
「右手ぐらい、なんて…」

　セシリオがそのままルイにキスしてもルイは抵抗しなかった。

「ルイ様を守るためにできた、愛の勲章です。むしろ嬉しいですよ」
「セシリオ様…」

　今度はルイがセシリオにキスをした。
　深くて甘い、何時もはあまりしないキス。

　それに酔いしれながらセシリオは内心ほくそ笑んでいた。

　これで、ルイはセシリオに縛られた。

　罪悪感という愛よりも重い鎖。ずっとそばいれば愛着が湧くのなら、ずっとそばにいてくれるように鎖を付ければいい。

　セシリオはルイを手放すことはできない。
　セシリオはルイにそばにいてもらわないと困るのだから。