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最悪な目覚め

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 目を覚ますと、豪奢な飾り付けの施された天井が見えた。

「……これは、夢…?」

 アエテルニアがいるのはテオドアの部屋のベッドの上だった。
 昔、テオドアと二人で並んで寝た大きなベッド。

 そして、アエテルニアが初めて発情したとき、テオドアに抱かれたベッド。

「夢ではない」

 思ったよりも近くから声が聞こえて、アエテルニアは驚いて振り返った。

「て、テオドア…」
「おはよう。アエテルニア」

 とろりとした微笑みを浮かべるテオドアに胸がきゅうと締め付けられるようなときめきを覚える。
 もう26歳になるのに、少女めいた自分の反応が恥ずかしい。

「あ…その、そうだ、どうして僕はここに…ヴィーとルカは?」
「あの二人は庭にいる。声が聞こえるだろ」

 そう言われて耳を澄ませてみると、微かにヴィクトルとルカの声が聞こえてきて安心する。

「連れてきた理由は、お前が俺の家族だからだ」
「か、ぞく…」

 ぶわりとあの日の記憶がフラッシュバックする。
 唐突に現れたテオドア。彼の懐かしい香りにアエテルニアは発情して、そのまま…

 アエテルニアは自分の首筋に触れた。そこに生々しい歯形が付いていた。

「僕のこと…家族だって思ったことないって言ったのに…?」

 その言葉を言われたとき、アエテルニアは身体が千切れそうになる程悲しかった。

 だって、アエテルニアはテオドアが、家族だと、そう言ったから一生懸命そうあるように自分を騙したのに。
 まるでそれまでの自分全てを否定されたみたいで、悲しかった。

「俺がお前に伴侶になってほしかった。そのためには兄弟、家族であることは障害でしかなかった」
「……どうして、伴侶…なんて」
「お前がずっと好きだったからだよ。アエテルニア」

 アエテルニアは絶句して、それから訳も分からず涙をこぼした。

「アエテルニア?…ニア、どうして泣く」

 嬉しい。ずっとずっと好きだった彼が自分のことを好きだと言ってくれて嬉しい。
 でも、でも…

「ひどいよ…今更」

 苦しい、悔しい、憎い。じゃあ、必死に家族でいようとした自分は、なんだったんだろう。なにもかも無駄だったということだろうか?
 ヴァルキュリア家を抜け出して、子供二人に、不幸せではないけど質素な生活を強いたことも間違いだったということ?

「僕だって、大好きだったのに…愛していたのに…ひどい」

 彼の好意を受け入れるには、無駄にしてしまった時間が長過ぎた。

「もういやだ…何もかも」

 胸の中の支えのようなものがぽきりと折れてしまったような気がした。

 暗く沈み込んだアエテルニアにテオドアは

「すまなかった。これからは、俺がお前を幸せにするから」

 そう言ってアエテルニアの涙を拭ったが、アエテルニアの心は晴れなかった。
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