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猫ちゃん、がんばる

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 妊娠してから澪はやたらと大切に大切に扱われるようになった。
 特に慶斗から。

「澪、そこで座っていなさい」
「あ、でも…」
「君一人の身体ではないんだから」

 慶斗は本当に澪に何もさせない。
 澪が立ってるだけでも少し怒るぐらいだ。

 妊娠したことがわかってから、少しして、お腹の中に二人子供がいることがわかった。双子だったのだ。

 世継ぎが世継ぎが、と言っていた慶斗のことだから子供が増えて喜ぶかと思ったのに、慶斗は

「双子?母体に負担がかかるんじゃないか?心配だな…初産なのに」

 とか言っておろおろしていた。

 多分慶斗が変わった…いや、これが素の慶斗なのかもしれないけど、とにかく、変わった理由はおそらく慶子と離れたからだろう。

(でも、本当に良かったのかな…)

 慶子と慶斗はいま絶縁状態になってしまっているらしい。

(せっかくお母さんがいるのに)

 澪は母に会いたくても会えない。

 母が生きてるのに会わないなんて、澪にとっては悲しいことのように感じる。

 しかも、その原因はおそらく自分なんだ。

「…ね、ねぇ」
「はい」

 澪は勇気を出して侍女に話しかけた。

「外の空気が吸いたいの。お散歩してもいいかな?」
「はい。どうぞ」

 澪は出かける前にトイレに駆け込んだ。

 慶斗に渡されていた携帯電話に指に馴染んだあの番号を押した。

「もしもし」
「あ、宇伊?お願いがあるんだけど」
「……澪さま?」
「そう、澪。僕のいる場所GPSで分かるよね?迎え来て」
「ちょ、ちょっとお待ち下さ…」
「今すぐね」

 澪が外に散歩するといってもせいぜい歩かせてもらえるのは幼稚園児の遠足程度だ。しかもそばにぴったりと侍女がついてる。

 そもそもここがどこかも知らない。

 澪は散歩したいのではない。慶子に会いに行きたいのだ。

(僕が、慶斗さんと慶子さんを仲直りさせる!)

 使命感に駆られて澪はトイレから出た。





 一方、宇伊は…

「なんだったんでしょうか、今の電話……まぁ、とりあえず」

 澪の無茶振りには慣れている。宇伊は車を出した。

 澪の身体にはGPSが埋め込まれている。
 防犯のために澪の祖母が埋めさせたものだ。

 それを見て澪がいるらしき場所へ向かった。

「まったくあの方は…嫁に行かれても、まったく落ち着く気配はないようですね」

 実は宇伊も心配していたのだ。
 嫁に出したっきり澪からめっきり連絡はない。

 大神家が閉鎖的だとは聞いていたがまさかここまでとは思わなかった。

 宇伊は逸る気持ちを抑えながら車を猛スピードで走らせた。
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