22 / 28
猫ちゃん、がんばる
しおりを挟む
妊娠してから澪はやたらと大切に大切に扱われるようになった。
特に慶斗から。
「澪、そこで座っていなさい」
「あ、でも…」
「君一人の身体ではないんだから」
慶斗は本当に澪に何もさせない。
澪が立ってるだけでも少し怒るぐらいだ。
妊娠したことがわかってから、少しして、お腹の中に二人子供がいることがわかった。双子だったのだ。
世継ぎが世継ぎが、と言っていた慶斗のことだから子供が増えて喜ぶかと思ったのに、慶斗は
「双子?母体に負担がかかるんじゃないか?心配だな…初産なのに」
とか言っておろおろしていた。
多分慶斗が変わった…いや、これが素の慶斗なのかもしれないけど、とにかく、変わった理由はおそらく慶子と離れたからだろう。
(でも、本当に良かったのかな…)
慶子と慶斗はいま絶縁状態になってしまっているらしい。
(せっかくお母さんがいるのに)
澪は母に会いたくても会えない。
母が生きてるのに会わないなんて、澪にとっては悲しいことのように感じる。
しかも、その原因はおそらく自分なんだ。
「…ね、ねぇ」
「はい」
澪は勇気を出して侍女に話しかけた。
「外の空気が吸いたいの。お散歩してもいいかな?」
「はい。どうぞ」
澪は出かける前にトイレに駆け込んだ。
慶斗に渡されていた携帯電話に指に馴染んだあの番号を押した。
「もしもし」
「あ、宇伊?お願いがあるんだけど」
「……澪さま?」
「そう、澪。僕のいる場所GPSで分かるよね?迎え来て」
「ちょ、ちょっとお待ち下さ…」
「今すぐね」
澪が外に散歩するといってもせいぜい歩かせてもらえるのは幼稚園児の遠足程度だ。しかもそばにぴったりと侍女がついてる。
そもそもここがどこかも知らない。
澪は散歩したいのではない。慶子に会いに行きたいのだ。
(僕が、慶斗さんと慶子さんを仲直りさせる!)
使命感に駆られて澪はトイレから出た。
一方、宇伊は…
「なんだったんでしょうか、今の電話……まぁ、とりあえず」
澪の無茶振りには慣れている。宇伊は車を出した。
澪の身体にはGPSが埋め込まれている。
防犯のために澪の祖母が埋めさせたものだ。
それを見て澪がいるらしき場所へ向かった。
「まったくあの方は…嫁に行かれても、まったく落ち着く気配はないようですね」
実は宇伊も心配していたのだ。
嫁に出したっきり澪からめっきり連絡はない。
大神家が閉鎖的だとは聞いていたがまさかここまでとは思わなかった。
宇伊は逸る気持ちを抑えながら車を猛スピードで走らせた。
特に慶斗から。
「澪、そこで座っていなさい」
「あ、でも…」
「君一人の身体ではないんだから」
慶斗は本当に澪に何もさせない。
澪が立ってるだけでも少し怒るぐらいだ。
妊娠したことがわかってから、少しして、お腹の中に二人子供がいることがわかった。双子だったのだ。
世継ぎが世継ぎが、と言っていた慶斗のことだから子供が増えて喜ぶかと思ったのに、慶斗は
「双子?母体に負担がかかるんじゃないか?心配だな…初産なのに」
とか言っておろおろしていた。
多分慶斗が変わった…いや、これが素の慶斗なのかもしれないけど、とにかく、変わった理由はおそらく慶子と離れたからだろう。
(でも、本当に良かったのかな…)
慶子と慶斗はいま絶縁状態になってしまっているらしい。
(せっかくお母さんがいるのに)
澪は母に会いたくても会えない。
母が生きてるのに会わないなんて、澪にとっては悲しいことのように感じる。
しかも、その原因はおそらく自分なんだ。
「…ね、ねぇ」
「はい」
澪は勇気を出して侍女に話しかけた。
「外の空気が吸いたいの。お散歩してもいいかな?」
「はい。どうぞ」
澪は出かける前にトイレに駆け込んだ。
慶斗に渡されていた携帯電話に指に馴染んだあの番号を押した。
「もしもし」
「あ、宇伊?お願いがあるんだけど」
「……澪さま?」
「そう、澪。僕のいる場所GPSで分かるよね?迎え来て」
「ちょ、ちょっとお待ち下さ…」
「今すぐね」
澪が外に散歩するといってもせいぜい歩かせてもらえるのは幼稚園児の遠足程度だ。しかもそばにぴったりと侍女がついてる。
そもそもここがどこかも知らない。
澪は散歩したいのではない。慶子に会いに行きたいのだ。
(僕が、慶斗さんと慶子さんを仲直りさせる!)
使命感に駆られて澪はトイレから出た。
一方、宇伊は…
「なんだったんでしょうか、今の電話……まぁ、とりあえず」
澪の無茶振りには慣れている。宇伊は車を出した。
澪の身体にはGPSが埋め込まれている。
防犯のために澪の祖母が埋めさせたものだ。
それを見て澪がいるらしき場所へ向かった。
「まったくあの方は…嫁に行かれても、まったく落ち着く気配はないようですね」
実は宇伊も心配していたのだ。
嫁に出したっきり澪からめっきり連絡はない。
大神家が閉鎖的だとは聞いていたがまさかここまでとは思わなかった。
宇伊は逸る気持ちを抑えながら車を猛スピードで走らせた。
2
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
黒の執愛~黒い弁護士に気を付けろ~
ひなた翠
BL
小野寺真弥31歳。
転職して三か月。恋人と同じ職場で中途採用の新人枠で働くことに……。
朝から晩まで必死に働く自分と、真逆に事務所のトップ2として悠々自適に仕事をこなす恋人の小林豊28歳。
生活のリズムも合わず……年下ワンコ攻め小林に毎晩のように求められてーー。
どうしたらいいのかと迷走する真弥をよそに、熱すぎる想いをぶつけてくる小林を拒めなくて……。
忙しい大人の甘いオフィスラブ。
フジョッシーさんの、オフィスラブのコンテスト参加作品です。
アルファとアルファの結婚準備
金剛@キット
BL
名家、鳥羽家の分家出身のアルファ十和(トワ)は、憧れのアルファ鳥羽家当主の冬騎(トウキ)に命令され… 十和は豊富な経験をいかし、結婚まじかの冬騎の息子、榛那(ハルナ)に男性オメガの抱き方を指導する。 😏ユルユル設定のオメガバースです。
噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
真柴さんちの野菜は美味い
晦リリ
BL
運命のつがいを探しながら、相手を渡り歩くような夜を繰り返している実業家、阿賀野(α)は野菜を食べない主義。
そんななか、彼が見つけた運命のつがいは人里離れた山奥でひっそりと野菜農家を営む真柴(Ω)だった。
オメガなのだからすぐにアルファに屈すると思うも、人嫌いで会話にすら応じてくれない真柴を落とすべく山奥に通い詰めるが、やがて阿賀野は彼が人嫌いになった理由を知るようになる。
※一話目のみ、攻めと女性の関係をにおわせる描写があります。
※2019年に前後編が完結した創作同人誌からの再録です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる