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狼さん傷つく
しおりを挟む「むにゃ…」
澪が目を覚ますと、真っ白な布団の上に一人で寝ていた。
「ここどこぉ…」
寝ぼけ頭できょろきょろ辺りを見回すが誰もいない。
「宇伊ー?どこにいるの?僕慶斗さんと結婚する夢見ちゃったんだけどぉ…」
いつもの如く宇伊をよんだら、
「夢じゃない」
と言って誰かが部屋に入ってきた。
「あ…け、慶斗しゃん!?」
「…朝ごはんだ」
慶斗は手にお盆を持っていた。
「け、慶斗さんに食事を運ばせるなんて…ごめんさない!」
「何をいまさら、昨日までずっと俺がお前に手ずから食べさせてやってたのに」
「あ…ぇ」
その瞬間、澪に地獄のような、でも天国のような三日間の記憶が蘇った。
荒淫に疲れ果てた澪に慶斗がご飯を食べさせてくれたことも、あられのない姿を見せてしまったことも。
「う、うわぁぁあ…」
澪の顔は真っ赤になってしまった。
「まだ身体が辛いなら食べさせてやるが?」
「…へ?あ、いやいやいや、とんでもないです!」
澪はきょろきょろと視線を彷徨わせる。着物を少し着崩した慶斗はいかにも事後の雰囲気を漂わせていて見ていられない。
「その…すまなかったな」
「え?なにがですか?」
「いや、その…しきたりとはいえ、何も知らないお前にあんなことをしてしまったのは悪かったと思っている」
「あ…そんなことないです!その…むしろ、僕にとってはご褒美みたいなところもあったし…まぁ、初めてはもっとロマンチックなの想像してたけど、ワイルドなのも悪くないし…」
「…つまり、許してくれるということか」
「はい!」
慶斗はほっと息をついた。
ああ、本当にこういう人なんだな、と澪は思った。
オオカミ族で身体が大きくて剛健そうだが、心はとても優しくて温かい人。
「慶斗さん…」
「なんだ」
澪は慶斗の袖を掴んだ。
「僕たち、少し強引な形で始まってしまいましたけど…その、僕、ずっと前から…」
慶斗が言葉の続きを待って澪を見つめる。
「前から……す、す…」
頭に血が昇って真っ赤になっているのを感じる。
「やっぱ無理ー!!!!」
あまりの恥ずかしさに澪は走って部屋から出て行ってしまった。
「…無理」
ショックを受けて固まる慶斗を置いて。
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