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猫ちゃん困る
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「大丈夫か?……いや、大丈夫じゃないな」
慶斗は腕の中の澪を抱き上げた。
本来だったら、ここで婚礼の儀を行なって初夜を迎える予定だったがとても無理そうだ。仕方ない。
慶斗は奥の部屋に入った。奥の部屋にはぽつんと布団がひとつだけ敷かれていた。慶斗は澪を布団に横たえてやる。
オオカミの結婚は他の種族に比べて簡易的だ。それぞれの血を混ぜた酒を飲み三晩を共に過ごしたらそれで終わりだ。
慶斗は渡されていたナイフで指先を切った。血の杯の交換は相手が寝ていてもできる。
慶斗は溢れた血を用意されていた酒に混ぜ、澪にも同じようにした。そして慶斗は澪の血を混ぜた酒を一口で飲み干した。
慶斗の血を混ぜたほうは少し迷ってから、一度自分で口に含んで口移しで澪に飲ませた。
「ん……く」
澪が嚥下したのを確認して、慶斗は酒を片付けた。これで形としては成立した。
「さて、どうしたものか…」
すっかり寝こけている澪を見て慶斗は途方に暮れてしまう。
三晩を過ごすというのはもちろん添い寝をすればいいというわけではない。
しかし、母から紹介された澪はとても幼くそういうことをするのに罪悪感すら感じる。
年齢は十七歳で、二十四歳の慶斗と話すのは七つ離れていることになる。
ただ、猫種の十七歳とオオカミ種の二十四歳とでは親と子ほどの体格差がある。
研究では澪が慶斗と一番相性の良いΩらしいがとてもそうは思えなかった。こんな小さな身体で本当にオオカミの子供が産めるのか。
しかし、慶斗は子供を作らなければいけななった。それもαの子供を。
それには、この子にも頑張ってもらわなくてはいけない。可哀想だが、もう十七歳だ。慶斗は自分にそう言い聞かせた。
そうとなったらまずは澪を起こさなくてはいけない。
「すまない、起きてくれないか」
慶斗は軽く澪の頬を叩いた。
「……柔い」
慶斗は手を止め、今度は頬をむにっと伸ばした。
マシュマロ、いやそれにもまさるふにふにとした感触。なんともいえない癖になる触感である。
慶斗は澪の頬を一心不乱に揉みはじめた。
(これはよこしまな気持ちがあるわけではなく、この子を起こそうと思って…)
ついに慶斗が両手を使って澪の両方をみよーんと伸ばしたその時、
「んぇ……い、いひゃい」
間の抜けた声を出して澪が目を覚ました。
澪は慶斗に頬を伸ばされていることに驚いて目をまん丸くしている。
「っ…すまない。あ、いやこれは違うんだ。その、起こそうと思って…」
「とりあへふ、はなひてくらひゃい」
「あぁ、すまない」
慶斗は頬を握っていた手を離した。
澪の頬は慶斗がずっと触っていたせいか真っ赤になってしまっていた。
「あの、僕こそごめんなさい。興奮しすぎて気絶しちゃって…」
「いや…お前たちのような猫種からしたら俺たちのようなオオカミは恐ろしいだろう。急に近づいた俺に気づかいが足りなかった」
「え…?いえ、僕は怖かったわけでななくて」
「気を使わなくてもいい」
澪は何か言いたそうにしていたが、慶斗はつづけた。
「しかし、結婚したからにはたとえ怖くても子作りをしてもらう」
「こづくり…え、今から、ですか?」
慶斗は寝転がっている澪に覆いかぶさる。
「ぴぎゃ、か…顔ちかっ…じゃなくて、ま、まま待ってくだひゃい。だって、まだ夜じゃないですし、そもそも出会ったばかりなのに、そんな、というか…僕のこ、心の準備ができてない的な感じで…」
どもったり噛んだりしながら頑張って澪が抵抗するが、慶斗は子作りをする義務があった。
「すまないが、待てない」
「え……ん、ぅ」
慶斗は澪の小さく可憐な唇を自分のそれで塞いだ。
小柄な澪は口の中まで小さかった。慶斗が舌を滑り込ませるとそれだけで一杯になってしまいそうな口の中で、澪の薄い舌がちろちろと動く。
慶斗は肉厚な舌で澪の舌を絡めとって蹂躙するようなキスをした。
「ん…んぅ、ぁ…っふ」
澪は初めてする濃厚なキスに戸惑うことしかできなかった。
澪の尻尾がぴくぴくっと小刻みに震えた。
「緊張してるのか…?」
慶斗は優しく澪の尻尾を撫でた。
それだけのことなのに澪の身体に今まで感じたことのない類のぞわぞわした感覚が走る。
「な、なんで…」
「猫種と結婚すると決まってから、尻尾の動きについて調べた。ほかにも猫の習性は一通りはわかっているつもりだ」
「ん……やぁ」
慶斗が尻尾をさかのぼるように撫であげて、尻尾の根元あたりをとんとん叩いた。
「ここが気持ちいいんだろう?」
「あ、ぁあ…そこ、やだぁ」
またぞわぞわが身体に走って澪は身をよじった。
「愛いな」
慶斗は寝乱れてしわくちゃになった澪の白無垢を脱がせた。
たっぷり時間をかけて着たのに脱がせるのはあっという間だ。
「するのは初めてか?」
澪はなんのことを聞かれているのかすぐには分からなくて、ちょっと間が空いてから慌てて頷いた。
「そうか…なら、なるべく優しくする」
慶斗は今度は優しく触れるだけのキスをして、澪の頭を撫でてくれた。
慶斗は腕の中の澪を抱き上げた。
本来だったら、ここで婚礼の儀を行なって初夜を迎える予定だったがとても無理そうだ。仕方ない。
慶斗は奥の部屋に入った。奥の部屋にはぽつんと布団がひとつだけ敷かれていた。慶斗は澪を布団に横たえてやる。
オオカミの結婚は他の種族に比べて簡易的だ。それぞれの血を混ぜた酒を飲み三晩を共に過ごしたらそれで終わりだ。
慶斗は渡されていたナイフで指先を切った。血の杯の交換は相手が寝ていてもできる。
慶斗は溢れた血を用意されていた酒に混ぜ、澪にも同じようにした。そして慶斗は澪の血を混ぜた酒を一口で飲み干した。
慶斗の血を混ぜたほうは少し迷ってから、一度自分で口に含んで口移しで澪に飲ませた。
「ん……く」
澪が嚥下したのを確認して、慶斗は酒を片付けた。これで形としては成立した。
「さて、どうしたものか…」
すっかり寝こけている澪を見て慶斗は途方に暮れてしまう。
三晩を過ごすというのはもちろん添い寝をすればいいというわけではない。
しかし、母から紹介された澪はとても幼くそういうことをするのに罪悪感すら感じる。
年齢は十七歳で、二十四歳の慶斗と話すのは七つ離れていることになる。
ただ、猫種の十七歳とオオカミ種の二十四歳とでは親と子ほどの体格差がある。
研究では澪が慶斗と一番相性の良いΩらしいがとてもそうは思えなかった。こんな小さな身体で本当にオオカミの子供が産めるのか。
しかし、慶斗は子供を作らなければいけななった。それもαの子供を。
それには、この子にも頑張ってもらわなくてはいけない。可哀想だが、もう十七歳だ。慶斗は自分にそう言い聞かせた。
そうとなったらまずは澪を起こさなくてはいけない。
「すまない、起きてくれないか」
慶斗は軽く澪の頬を叩いた。
「……柔い」
慶斗は手を止め、今度は頬をむにっと伸ばした。
マシュマロ、いやそれにもまさるふにふにとした感触。なんともいえない癖になる触感である。
慶斗は澪の頬を一心不乱に揉みはじめた。
(これはよこしまな気持ちがあるわけではなく、この子を起こそうと思って…)
ついに慶斗が両手を使って澪の両方をみよーんと伸ばしたその時、
「んぇ……い、いひゃい」
間の抜けた声を出して澪が目を覚ました。
澪は慶斗に頬を伸ばされていることに驚いて目をまん丸くしている。
「っ…すまない。あ、いやこれは違うんだ。その、起こそうと思って…」
「とりあへふ、はなひてくらひゃい」
「あぁ、すまない」
慶斗は頬を握っていた手を離した。
澪の頬は慶斗がずっと触っていたせいか真っ赤になってしまっていた。
「あの、僕こそごめんなさい。興奮しすぎて気絶しちゃって…」
「いや…お前たちのような猫種からしたら俺たちのようなオオカミは恐ろしいだろう。急に近づいた俺に気づかいが足りなかった」
「え…?いえ、僕は怖かったわけでななくて」
「気を使わなくてもいい」
澪は何か言いたそうにしていたが、慶斗はつづけた。
「しかし、結婚したからにはたとえ怖くても子作りをしてもらう」
「こづくり…え、今から、ですか?」
慶斗は寝転がっている澪に覆いかぶさる。
「ぴぎゃ、か…顔ちかっ…じゃなくて、ま、まま待ってくだひゃい。だって、まだ夜じゃないですし、そもそも出会ったばかりなのに、そんな、というか…僕のこ、心の準備ができてない的な感じで…」
どもったり噛んだりしながら頑張って澪が抵抗するが、慶斗は子作りをする義務があった。
「すまないが、待てない」
「え……ん、ぅ」
慶斗は澪の小さく可憐な唇を自分のそれで塞いだ。
小柄な澪は口の中まで小さかった。慶斗が舌を滑り込ませるとそれだけで一杯になってしまいそうな口の中で、澪の薄い舌がちろちろと動く。
慶斗は肉厚な舌で澪の舌を絡めとって蹂躙するようなキスをした。
「ん…んぅ、ぁ…っふ」
澪は初めてする濃厚なキスに戸惑うことしかできなかった。
澪の尻尾がぴくぴくっと小刻みに震えた。
「緊張してるのか…?」
慶斗は優しく澪の尻尾を撫でた。
それだけのことなのに澪の身体に今まで感じたことのない類のぞわぞわした感覚が走る。
「な、なんで…」
「猫種と結婚すると決まってから、尻尾の動きについて調べた。ほかにも猫の習性は一通りはわかっているつもりだ」
「ん……やぁ」
慶斗が尻尾をさかのぼるように撫であげて、尻尾の根元あたりをとんとん叩いた。
「ここが気持ちいいんだろう?」
「あ、ぁあ…そこ、やだぁ」
またぞわぞわが身体に走って澪は身をよじった。
「愛いな」
慶斗は寝乱れてしわくちゃになった澪の白無垢を脱がせた。
たっぷり時間をかけて着たのに脱がせるのはあっという間だ。
「するのは初めてか?」
澪はなんのことを聞かれているのかすぐには分からなくて、ちょっと間が空いてから慌てて頷いた。
「そうか…なら、なるべく優しくする」
慶斗は今度は優しく触れるだけのキスをして、澪の頭を撫でてくれた。
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