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想定外の事件発生!?
しおりを挟むあれから僕はちょこちょこ魔法を使う練習をしていた。
マリウスの魔法陣のおかげで大雪を降らすことはないけど、城を極寒にしたり慌てて証拠隠滅しようとして猛暑にしたりして怒られた。
なので、今は城の庭の端っこで迷惑にならなさそうな魔法を練習してる。
ミカエルには僕の家系は天気を操るのが得意なので、それ以外なら魔法も暴発しないのでは、とアドバイスされた。
それはその通りだったようで、植物や水系の魔法はちょうどいいくらいの弱さで魔法が使えた。
そんなこんなで今日も庭の隅にぽこぽこ花を咲かせていた。
(僕とてしてはもっとカッコいいの使えるようになりたいんだけど…)
それは皆に全力で止められたので諦める。
僕の周りがお花だらけになって、練習を終わろうとした、そのとき。
ばっと、誰かの手が僕の目を塞いだ。
(レイかな?)
こんなことするのはレイしかいない。
だーれだっ、と言われるのを待っているうちに口も何かで塞がれた。
(え、この世界のだーれだって解答権ないの?)
そう思っていたら身体がふわりと浮いて、持ち上げられたのが分かった。
(え、え…?なに?ほんとにだれ?レイだよね?)
しかし、上半身を掴む人と下半身を掴む人がいて、明らかに一人じゃない。
「ん、んんー!!!」
さすがに危険を感じて暴れ出すけど、屈強な体はびくともしなかった。
そのまま僕はどこかへ運ばれていった。
次に視覚が解放された時、僕は馬車の中にいた。
両手両足も拘束されて動けない。芋虫みたいで惨めだ。
「ふ…ん、んん!!」
僕をここまで連れてきたであろう男たちはもちろん知らない人だった。
「静かにしてろよ、ぼっちゃん。あんまり騒いだら喋れないようにするからな」
「っ…」
怖すぎる。
とりあえず黙る。怖いし。
「おい、本当に大丈夫か?城ん中から人攫うなんて…」
「大丈夫じゃねーよ。だけど、あの額もらえんなら話は別だ」
どうやらこの人たちは誰かに雇われて僕を攫ったらしい。
僕を攫って嬉しい人なんているの?(ジオルド除く)
「かわいそうにな、お前も。魔力が強すぎるってのも考えもんだな。ひひっ」
そうか、魔力か。
僕が帝都に雪を降らせたことは、ほとんどの人は変な天気だな…と、思っただけだけど、一部の魔力に敏感な人は誰かの魔法によるものだと気づいていたらしい。
そして、なんでか知らないけど、それが僕の魔法と知った誰かが僕を利用しようとしてる…
「とりあえずハカメリまで運べば俺らの仕事は終わりだ」
ハカメリって、どこかで聞いたことあるけど…
ハカメリ…
(あ、そうだ。たしか、フィリップが見てた本に絵が描いてあった…隣の国の、港?)
この人たち、高飛びする気なんだ。
飛行機じゃなくて船を使うこの世界で『高飛び』が合ってるのかはわからないけど。
でも、外国まで連れてかれるとやばいのは前世でも今世でも変わらない。
「ユネパ港に着けばすぐ国から出られる。だからユネパまで逃げられたら俺らの勝ちだ」
ユネパ…どこか知らないけど、そこに着いたら僕は多分戻ってこれない…
というか、この世界がどうかは知らないけど、こんくらいの時代の航海技術ってどんなんなの?
衛生とかひどかったって聞いたことあるけど…
(やだ!!絶対船のりたくない!あんなに立派なタイタニックが沈没したんだったらこの時代のあんな木製の船なんてぼかすか沈むに決まってる…!!!)
なんとかユネパに着く前に逃げ出さないと…
僕は脱出するための計画を練り始めたのだった。
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