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08 デモンストレーション
08 Baltroy (コール)
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フィッシュトルネードの社用の車を動かしていたのは114人だった。ここからどうやって絞る? もらったリストにはずらりと名前が並んでいる。運行時間も書いてあるが、殆どが午前中に出て夕方戻るスケジュールになっている。114分の1。無理だな。一人一人呼びつけて話を聞いてたらいつまで経っても終わらない。正攻法で行こう。
「こちら、レプリカント人権保護局の捜査官A492090rpです。レプリカントの遺体が大量に発見された事件について、貴社の皆さんから情報提供を頂きたいんですが」
『例えばどのような?』
「挙動不審であったり……違和感のある行動をされている方について、どんな小さなことでも構いません。お話いただきたい。秘密は厳守します。社内メールなどで周知して頂けませんか? 情報提供の際は匿名で構いません」
まあ、あまり期待はしない。少しでも可能性があればってくらいだ。九割ごみみたいな情報しか来ないのはわかってる。
あとは何ができる? 車の中の人物が少しでも見えれば。動画をもう一度出してみる。何しろ安い、一般用のカメラの映像だから、画質が悪い。これじゃ不法投棄のやつらが来たところで捕まえられないだろう。
アップにしてみる。髪の色……茶色? よくわからない。少なくとも黒人ではない。白っぽい服を着ているように見える。制服? 作業服? コマ送り。映像がぶれている。髪はブラウンでよさそうだ。男性に見える。試しに引き伸ばして画像を照会してみる。特定不能、可能性のある人物について照会します、とメッセージが出る。だろうな。でもこれで少し絞れる。例えば、出てきた奴らの中でフィッシュトルネードに勤務しているやつなんかがいれば。
「バル」
はっと時計を見る。定時だ。今日は警官訓練所でのセミナーの日だからすぐに出ないといけない。ヴェスタは昨日の夜からまた髪が緑になった。単純……。
でも、できればこういう機嫌の取り方はしたくない。抱けば機嫌が治る、それはそうかも知れない。でも原因がそれじゃないんなら、根本的解決にならない。話してくれればいいんだけど、こいつの性格上何かきっかけでもない限り言わないだろう。
「何かわかった?」
「だめだね。数が多い。お前は?」
「まだ。ジェーン・ドーのままだ」
ブリングの着信が光っているのに気がついた。誰だ? アルフかな? 会えなかったから。
「難しいよな。他に遺留品もないってのは」
ぱっと画面を見る。Gauche……
……ゴーシェ・ノッディングハム。
「コール?」
「いや」
応答待ちになっている。画面を切り替える。
「なんだろうな。知らないIDだ。間違いかも知れない」
どうする。無視して着拒するか?
「バルならどうする?」
「ん?」
「首のないレプリカントの遺体」
「だからさ。すごく難しい」
本当に俺が手に入るまで追いかけ回す気なのか? 手の中でブリングが震えた。今度はメッセージ。
「個人を特定できるものがない。過去に捕まったりしてりゃ、指紋やDNAがあるかも知れないけど、レプリカントは基本は犯罪を起こさないようにできてるから」
「もう骨になっちゃってるしね」
「うん」
ちらっとブリングの画面を見る。差出人とタイトルと内容がつらつらと画面を横切って行く。
Gauche Noddinghum : hi call me back or you'll regret.
「身長と足のサイズでレプリカントの納品リストを検索して、あとは捜索願が出されてるのを祈るかな」
かけ直さないと後悔する。
「こちら、レプリカント人権保護局の捜査官A492090rpです。レプリカントの遺体が大量に発見された事件について、貴社の皆さんから情報提供を頂きたいんですが」
『例えばどのような?』
「挙動不審であったり……違和感のある行動をされている方について、どんな小さなことでも構いません。お話いただきたい。秘密は厳守します。社内メールなどで周知して頂けませんか? 情報提供の際は匿名で構いません」
まあ、あまり期待はしない。少しでも可能性があればってくらいだ。九割ごみみたいな情報しか来ないのはわかってる。
あとは何ができる? 車の中の人物が少しでも見えれば。動画をもう一度出してみる。何しろ安い、一般用のカメラの映像だから、画質が悪い。これじゃ不法投棄のやつらが来たところで捕まえられないだろう。
アップにしてみる。髪の色……茶色? よくわからない。少なくとも黒人ではない。白っぽい服を着ているように見える。制服? 作業服? コマ送り。映像がぶれている。髪はブラウンでよさそうだ。男性に見える。試しに引き伸ばして画像を照会してみる。特定不能、可能性のある人物について照会します、とメッセージが出る。だろうな。でもこれで少し絞れる。例えば、出てきた奴らの中でフィッシュトルネードに勤務しているやつなんかがいれば。
「バル」
はっと時計を見る。定時だ。今日は警官訓練所でのセミナーの日だからすぐに出ないといけない。ヴェスタは昨日の夜からまた髪が緑になった。単純……。
でも、できればこういう機嫌の取り方はしたくない。抱けば機嫌が治る、それはそうかも知れない。でも原因がそれじゃないんなら、根本的解決にならない。話してくれればいいんだけど、こいつの性格上何かきっかけでもない限り言わないだろう。
「何かわかった?」
「だめだね。数が多い。お前は?」
「まだ。ジェーン・ドーのままだ」
ブリングの着信が光っているのに気がついた。誰だ? アルフかな? 会えなかったから。
「難しいよな。他に遺留品もないってのは」
ぱっと画面を見る。Gauche……
……ゴーシェ・ノッディングハム。
「コール?」
「いや」
応答待ちになっている。画面を切り替える。
「なんだろうな。知らないIDだ。間違いかも知れない」
どうする。無視して着拒するか?
「バルならどうする?」
「ん?」
「首のないレプリカントの遺体」
「だからさ。すごく難しい」
本当に俺が手に入るまで追いかけ回す気なのか? 手の中でブリングが震えた。今度はメッセージ。
「個人を特定できるものがない。過去に捕まったりしてりゃ、指紋やDNAがあるかも知れないけど、レプリカントは基本は犯罪を起こさないようにできてるから」
「もう骨になっちゃってるしね」
「うん」
ちらっとブリングの画面を見る。差出人とタイトルと内容がつらつらと画面を横切って行く。
Gauche Noddinghum : hi call me back or you'll regret.
「身長と足のサイズでレプリカントの納品リストを検索して、あとは捜索願が出されてるのを祈るかな」
かけ直さないと後悔する。
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