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08 デモンストレーション

06 Baltroy (教材)

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「それで? 見つかった?」
「社名入りのオートキャリアで運搬用のは162台あるんだと。しかもこの街の支社にある分だけで。この日に運行されたやつに乗ってた人をリストアップするからしばらく待ってくれって」
「そっか……」
「お前の方は? ジェーン・ドー身元不明の女性遺体の身元はわかったのか?」
「わからない。身長で一応捜索願が出されてるレプリカントを当たったんだけど……絞りきれなかった」

 ヴェスタの髪はまだ青っぽい。レッダが用意してくれた夕食をフォークでつついている。食欲が無さそうだ。

「ねえ、なんだったの。体液が何で残らないの? 教えてくれなかっただろ」
「そりゃそうだろ。あそこで話す話じゃないだろ」
「だって……」
「まず食いな。ちゃんと教えるから。レッダ」
「なんでしょう」
「コンドーム発注だ。被せるやつと吹き付けるやつ」
「プッ……今更ですよね。わかりました」
「お前! 感情ないって言ってただろ! 笑ってんじゃねーよ」
「感情はありません。今のはノイズです」

 シャワーを浴びてリビングに戻ると、ちゃんと届いていた。レッダに顔がなくて良かった。あったら殴ってた。ヴェスタの部屋のドアを叩く。抵抗もなく開く。ヴェスタはベッドの上で部屋着を着て枕を抱いて座っていた。

「……じゃ」

 最近のコンドームは2種類。ベッドの上に向かい合って座って、2つを並べる。一つは箱に入ってるやつ。もう一つはスプレー缶。

「………なにこれ」
「これを勃ったあれにつけてやるんだよ」

 開けてみせる。箱の方。薄っぺらいシート状の小袋の中身を取り出す。頼りないふにゃふにゃした直径4センチちょっとの円形のものが出てくる。

「そんなん……できんの? 何これ? 変な形」
「できるんだ。で、こっちがスプレーのやつ。これはわかりやすい」

 人差し指にスプレーの中身を吹き付ける。吹き付けられた液体はあっという間に皮膜になって柔らかく指を包んだ。

「な」

 端を少し擦るようにしてめくって剥がす。

「こっちは剥がす時に漏れることが多いから、まあ今回のケースでは被せる方だろうな」
「これ、何のためにつけるの?」
「昔は避妊」
「避妊! なんで?」
「昔は生殖能力あるやつが結構いたから。今は病気の予防と後始末を楽にするためかな」
「楽になるの?」
「お前はだいぶ楽になると思うけど」
「……」

 これはあれだ。

「まあ……やってみっか?」

 ヴェスタがこくんと頷く。青い髪のヴェスタ。やってみっか? ほんとのやつ。デジャヴ。ヴェスタも同じことを思ったらしい。

「……二回目の二回目みたいだね」
「ハ……」

 あの時は俺の部屋だった。あの時と違って、ヴェスタの髪はもう緑がかって白っぽくなってきた。その髪に指を入れる。キスする。

「……」

 服を脱ぎ捨てる。ヴェスタも。

「暗くする?」
「ん……」

 ヴェスタのほおがさっと薄紅色になった。

「……見たい……」

 普段はヴェスタの方が明かりを落とすのにな。ますます二回目の二回目みたいだ。あの時は真っ昼間だった。

「どう……するの?」
「まだ」

 まずお前の肌を楽しませろよ。この肌が大好きなんだ。白い滑らかな肌をゆっくりなぞる。ぴくんとヴェスタの体が跳ねる。汗でしっとりと吸い付く。呼応するように髪が白く輝き出す。これが。これを見たくて。

「は……」

 熱っぽい吐息。肩を甘噛みすると白い指がシーツを掴む。もうちょっと。指を中に入れる。いつものところをじりじりと刺激する。ヴェスタの膝が震える。脚を閉じてしまう。開かせる。充血してぴんと勃ったヴェスタの先から、透明な液体がぷくりと丸いしずくを作る。舐めると小さな体はびくんと大きく震えた。指を抜く。

 もっとこの肌を楽しみたいところだけど、今日は教材・・が待ってる。さて。見えるかな?

「ほら。付けるぞ」

 新しいのをぴっと開ける。ヴェスタが潤んだ目を上げた。自分も着けるのが何年ぶりなのを思い出す。俺は病気はしないから、避妊目的でしか付けたことがなかった。ヴェスタのことを思えば、ちゃんと話しておかないといけなかった。
 先から根元まで、丸められたそれを引き下ろす。

「わかった?」

 こくりと頷く。ヴェスタはすっかり出来上がって、熱っぽい視線を注いだ。白い脚。細い腕が俺の腕を掴む。ジェルがついているから、いつもより滑らかに入っていく。

「あ……」

 薄い膜一枚だ。ヴェスタの柔らかい中の感触は、そりゃない時の方が感じるけど。充分気持ちいい。

「ん……あ…だ……」

 ヴェスタが身を捩る。いつもと反応が違う。

「痛い?」
「ちが……これ……やぁ……」

 青緑色の目から涙がこぼれ落ちる。指先が白くなるほどシーツを握り込んでいる。顔が紅潮して……

「!」

 俺もわかった。コンドームのジェルのせいか、ぞくぞくするような刺激が来た。なんだこれ。

「おねがい……もっと……」

 ヴェスタが内腿を擦り付ける。

「なか……熱い……熱くて……我慢できない……もっとして……」

 くそが。そんなこと言われると……

 ぐっと奥まで突き入れる。ヴェスタの中はいつも以上に熱くて、絡み付くように蠕く。傷つけないようにと思っても加減ができない。

「あ! あ……んんっ」
「ヴェスタ……」

 抽送するたびに、白い体がぴくんぴくんと反応する。甘い声。ぎゅっと締め付けられる。潤んだ瞳。

「……く」

 気を抜くともってかれそうになる。まだだ。まだ。ヴェスタの中が吸い付くようだ。小さな体を押さえつけて穿つ。部屋の中に音が響く。叫びに近いくらいの甘い声が重なる。爪を立てる細い指。夢中になってしまう。貪り食ってしまう。

「…………痛く、な、いか……」

 真っ白な髪が左右に振れる。腕が俺のうなじに絡みつく。

「きもちい……す……き、バル……」

 汗が混じる。ごつごつと腰骨同士がぶつかるくらい深く。俺のヴェスタ・・・・・・。力いっぱい抱きしめる。もう我慢できない。

「い……!」

 ヴェスタがぶるるっと大きく体を震わせた。同時にとろりと白い液体が肌を濡らす。俺も思い切り吐精した。

「ん……」

 まだヴェスタの手が震えている。大丈夫かな? ゆっくり引き抜く。

「……ヴェスタ?」
「………」

 放心しているように見える。目は開いているけど。ほとんど真っ白な髪に触れる。汗で湿っている。ヴェスタの性液をティッシュペーパーで拭き取ってやる。少し萎えてきたので、コンドームをずるりと抜き取る。

「……みせて」

 ヴェスタが手を伸ばしてきた。

「そんなきれいなもんじゃない」

 でもヴェスタは忠告を無視して、体を起こすとそれを白い指でつまんだ。

「面白い」

 やめろ。おもちゃじゃない。

「もういいだろ。わかっただろ? 捨てな」
「………」

 ヴェスタがじっと見つめてきた。なんだ。なんの視線だこれ。

「すごかった。またこれでやりたい……」

 ………確かに凄かった。でも、でもだ。

 とりあえず服を着る。ヴェスタの部屋を出る。

「こら! レッダ! なんだよこれ!」
「気を利かせたつもりなんですけどね。スプレーの方はノーマルですよ」









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