Occupied レプリカント人権保護局

03 トライアル (3)Vesta & Baltroy

08 Vesta (レモン・イエロー)

「俺といても楽しくない？」
「そんなことない！　髪の色くらいでそんなこと思わないで」

　アラスターは肩を落として俯いた。どうしたらいいの？　自分にもどうしようもないんだ。一緒にいる時緑じゃないと嫌なの？

「青緑くらいが普通だよ！　楽しくないわけじゃない！　真っ青ってわけじゃないんだから気にしないでよ」
「そうだね。そうなんだろうね……でもやっぱり気になるよ」
「ちょっと待ってて」

　バスルームに駆け込む。

「ランプ！　ヘアカラーをくれよ！　色は適当でいい。なんでもいいから今すぐ手に入るやつ」
「ヴェスタさんにお似合いのを選びます。あと二分で到着予定」

　なんでこうなっちゃうんだ。バルに気持ちが残ってる天罰なんだろうか。仕事だとしても二人で過ごすのが楽しいと思ってしまったからだろうか。違うんだ。もうバルのことは諦めるって決めたんだ。アラスターと生きていくんだって。

　カランと目の前に届いたばかりのヘアカラーが置かれた。色も見ずに染めた。明るいレモンイエロー。これでいいだろ。もう俺の髪の色で一喜一憂しないで。

　バスルームを出ると、アラスターがソファに座って頭を抱えていた。抱きしめた。

「もう俺の髪の色を気にしないで。そんなことでアラスターに悲しくなって欲しくない」

　アラスターは顔を上げて髪に触れた。

「……染めたの？」
「戻せって言わないで！　俺は幸せだから。髪の色なんて見ないで」

　幸せなのはわかってる。こんなに愛してくれる人はいない。理解してる。

　──ヴェスタは緑だろ。

　緑は幸せの色。どうしてアラスターと一緒ではならないの？　幸せなはずなのに。だからねアラスター、俺は嘘なんかついてない。自分でもわからないのは確かなんだから。