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だが断る!

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    「おおっ!成功だっ!」
わたしは人の声で目を覚ました。仕事帰りにコンビニ寄って、ビールとおツマミ買って外に出たとこで何か落とし穴みたいなのにはまったような?あれ、なんだったんだろ?
「勇者よ!この世界をお救いください!」
勇者?誰のこと?わたしはふらつく頭を押さえて起き上がった。目の前にはコスプレしたオッサンたちがひしめいてる。何これ?なんか床には魔法陣みたいなのがある。ん?そういやコンビニの外にもこんなんあったような?
「勇者様?どうかなされましたか?」
信じたくたいけど、これってもしかして、異世界召喚ってヤツー?オッサンたちをかき分けて、THE王子!って感じの金髪碧眼が近寄ってきた。
「勇者よ、どうかその力で我が国を救ってください」
片膝ついて、転がってるわたしに手を差し出してきた。いやいや、この手を取ったら勇者やんなきゃいけないのかも?わたしは思わず後ずさった。
「元の世界にお帰りいただく方法が無くて申し訳ない。我々の安寧のために魔王を倒してもらえないだろうか」
はっ?帰れない?無理ムチャ呼んどいて帰れない?何それ!いきなり魔王と戦え?この人たち、どっかおかしいんじゃない?わたしはさらに後ずさった。THE王子が不機嫌になった。
「勇者よ、お名前を教えていただけますか?」
うわ、これ、名前で縛るやつかも?わたしはますます後ずさった。THE王子が同じだけ近づいてくる。後ずさったわたしは魔法陣から出たことに気がついて思わず叫んだ。
「助けてー!魔王様ー!」
部屋の中に黒い霧が立ち込めて、晴れたらめっちゃわたし好みのイケメンが立っていた。部屋に阿鼻叫喚が響き渡る。
「我を呼んだのはお前か?」
「そうです!ここの人たちおかしいんですよ。わたしの意思確認もせずに呼びつけるわ、いきなり魔王様を倒せとか言うわ、挙句に元の世界に帰れないとか言うんですー!」
「それは哀れじゃな。して、お前の望みは?」
「元の世界に帰りたいです」
「我なら叶えられる。が、対価が必要だ。何を差し出せる?」
イケメン魔王がニヤリとする。差し出せる物?もしかしてわたしの貞操?あの顔ならそれもいいけど、孕んだりしたら困るしー。その時わたしは、手に持ったままだったスーパー袋の存在を思い出した。それをグイッと魔王につき出す。
「異世界のビールとおツマミで!」
「お前の望み、叶えよう」
黒い霧がわたしを包んだと思ったら、元のコンビニの前に戻ってた。魔王様、感謝ですー!
    んー。あれだけのイケメン、嫁にもらってくれ、でも良かったかな?
    わたしはまたコンビニに入って、同じ物を買い直した。今夜は異世界の魔王様と同じビールねー!
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