【完】ＢＬゲームに転生したオレは鬼畜王子から逃げだしたい

ろくじゅうはち

    「とっとと閣下に告りにいけ！」
「なんだ？藪から棒に」
診療所にアルフォンスが怒鳴り込んできた。かなり怒ってる？前世の言葉が出ちゃってるよ。ま、心当たりはあるけどね。
「どんな風に言ったんだ？大変だったんだぞ！」
「煽ったよー」
アルフォンスが来たのは、宰相候補君の嵐の来訪から２ヶ月。
「畑から拉致られて、その場でヤられそうになったんだからな！」
プンスカ怒ってるけど、愛されオーラがダダ漏れー。
「クラウスも閣下に監禁されに行け！」
も、ってことは、アルフォンス監禁された？
「３日がかりで最後までヤられた。時間切れでようやく国に帰ってくれたよ」
「よもやアルフォンスに『彼』ができるとはねー」
オレのニヤニヤ笑いにアルフォンスの顔が赤くなる。愛されてるっていいねー。
「僕から見たら、クラウスも閣下から愛されてると思うけど？監禁されに行ったらいいじゃないか」
オレは患者の椅子に座るアルフォンスの胸に聴診器をあてる真似をした。
「オレが閣下に愛されてるという前提でだけど、閣下に監禁なり軟禁なりされたとする」
聴診器から手を離す。
「この診療所はどうなる？」
アルフォンスが真面目な顔になる。
「アルフォンスも、彼に宰相にならないでくれとは言えないだろ？」
アルフォンスが頷いた。
「オレは自分に、ここを辞めろって言えない」
「それで、いいのか？」
「そのために、留学も含めて８年も勉強したんだ。その８年の努力をムダにするのは、オレ自身の夢を裏切ることになる。そうは思わないか？」

    アルフォンスは何も言わなかった。何も言えなかったって言うべきかな？