追放ですか？それは残念です。最後までワインを作りたかったのですが。 ～新たな地でやり直します～

【解説編】イラリア先生のワインレッスン『奇跡のワイン』

※ネタばれを含みますので、ここまでのお話を全てお読みになってから、ご覧になることを推奨致します。


「こんにちは、皆さん。イラリア・アマーレです。それでは早速ですが、授業を始めていきます」

初回から、少し難しい内容になりますが、頑張っていきましょう！

今回は【奇跡のワイン】と、それを作るうえで重要な【ボルキ菌】について解説していきますね。

お気づきになった方もいらっしゃったようですが、実はこのワインと菌は実在するものに少々設定を付け加えて、本編に登場しています。

【ボルキ菌】の元となっているのは、〔Botrytis cinerea（ボトリティス・シネレア）〕といい、日本語ですと「灰色かび病」や「貴腐菌」と呼ばれています。

感染すると文字通り灰色のかびに覆われ、植物が駄目になってしまうという怖い菌です。この菌は、日中の多湿を好むために特に梅雨の時期に発生しやすいとされています。

ところが、条件が揃ったうえでこの菌をブドウに使用すると、ブドウの果肉に小さな穴が開きそこから水分が抜け、非常に凝縮した味わいのブドウへと変貌します。
本編では、このブドウを見た、クーラさんが焦っていましたよね。初めてご覧になる方には、それほど衝撃の強いヴィジュアルをしています。

人間の管理も勿論大切ですが気候条件に左右される部分が余りに大きいため、毎年作れるものではありません。その結果、希少価値が高くなり高額で取引される傾向にあります。

このブドウを原料としてワインを作ることで、香り高くトロっとした蜂蜜を思わせる様な粘度と糖度の高いワインとなるのです。お味もそうですが香りも他とは一線を画す存在です。

こうして出来たワインの事を「貴腐ワイン」と呼びます。
つまり、【奇跡のワイン】とはこの貴腐ワインがモチーフとなっているのです。

貴腐ワインの発祥は、ハンガリーのトカイ地方といわれています。そして、現在では日本でも作られているんですよ！

そんな中、最も有名なのが「シャトーディケム」というフランスの貴腐ワインです。
貴腐ワインの中でも、最高峰と呼ばれています。フォアグラと合わせて飲むともう最高なんです！

少々お高いのですが、お味は間違いなく最高峰ですよ。

どのくらいお高いかというと、イギリスで開催されたオークションでは200年前のヴィンテージがなんと1本【約1千万円】で落札されました。
これは極端な例ですが、それほどの価値を感じる方もいらっしゃるという事です。
何より200年間も熟成できるというのが驚きですよね。

普通に出回っているものは流石にここまで高価ではないので、気になる方は調べて見てくださいね。併せて、もっと貴腐ワインについて知りたいという方は、是非調べて見てください。きっと、面白いと思いますよ。

これからも、実際に存在する手法やワインが登場すると思いますので、そういったものを探して頂くのも楽しみ方の一つになりそうですね。


「それでは、本日の授業はここまでです。ありがとうございました！また、お会いしましょう」