16 / 27
(番外編)リトルファイト
しおりを挟む
皆様、こんにちは。ルカ・ファルコです。
突然ですが本日はひょんなことから、一緒に生活をすることになったイラリアさん。そして、僕の妹であるアミとのちょっとした日常をお送りしたいと思います。
あれは僕が、夕飯の献立を考えている時の事です。
「ルカさん。今日の夕ご飯は何になさるのですか?」
トコトコと足音を立てて、イラリアさんが隣にやってきました。
「うーん、そうですね。有難いことに牛肉とお魚を分けて頂きましたので、どちらかをメインにした皿を作ろうかと考えています。もう片方は明日のメインにしようかと」
「わあ、それは良いですね。どちらも美味しそうです」
イラリアさんは、いつも美味しそうに僕の作る料理を食べてくれるので作り甲斐があります。色々とコメントもくれますしね。何より、ワインとの組み合わせについての話もしてくれるので、参考になります。
以前、知り合いの奥様が『最近、何を作っても旦那が旨いとしか言わない』とぼやいていたのを思い出しました。確かにそれだけだと寂しいかもしれないと、主婦目線の思考が身についてきたことに我ながら複雑な心境です。
ふとイラリアさんを見ると、彼女は少し恥ずかしそうにもじもじとしています。
「どちらも美味しそうですが…私、今日はお魚を食べたい気分です」
「ああ、分かりました。それでは魚を使った料理にしましょうか」
ぱああ、とイラリアさんは、嬉しそうな笑顔を僕に向けます。余りに嬉しそうなので、何だか恥ずかしくなってきますね。
その時です。
「私はお肉が食べたい!」
話を聞いていたのでしょう。アミが、バンッ!とドアを全開にして入室。
「ア、アミちゃん。いつからそこに?」
「そんな事よりお姉ちゃん。アミ、今日はお肉が食べたい」
「え、えっと」
イラリアさんは焦った表情を浮かべています。彼女が何に悩んでいるのか手に取るように分かってしまい、思わず吹き出しそうになりました。
大人としてアミの意見を尊重するか、ご自分の欲求に従うのかを考えているのでしょう。
少し考えたところで、彼女は人差し指をピッと立てました。
「アミちゃん。知っていますか?お魚にはDHAという成分が含まれていまして、これを食べると頭が良くなるんですよ」
あ。己の欲望、もとい食欲に従いアミを懐柔しようとしている。
ですが、妹も負けていません。
「知ってるよ!でも牛肉の赤身にはヘム鉄が豊富に含まれているから、疲れにくいお体になるんだよね?畑でお仕事頑張っているお兄ちゃんの為にも、お肉の方がいいと思うな」
ええ!いつの間にそんな博識になったんだ。これがイラリア先生との個人レッスンの成果なのか?そして、さり気なく僕を巻き込むあたり、やり手だな。
イラリアさんは、ぐぬぬと唸りながら、先ほどよりも複雑な表情をされています。この顔は、論破することは出来るが、でも流石にそれは。という表情ですね。やがて、イラリアさんの表情はいつもの優しい表情へと戻っていきました。
「アミちゃん、よくお勉強していますね。何より、ルカさんへの心配りが百点満点です。完敗です」
アミの頭を優しく撫でるイラリアさん。アミは、くすぐったそうに目を細めています。
まるで、本当の姉妹みたいだな。
「フフッ」
僕は思わず破顔しましました。
「ルカさん?」
「お兄ちゃん?」
「あ、いえ。2人の話を聞いていたら、僕が両方食べたくなってしましました。だから、量を半分ずつにしてお肉とお魚を併せた料理にしても良いですか?」
2人は顔を見合わせると、パンッ、とハイタッチをしています。
さてさて。言ったのはいいですが、これは難しいメニューだな。それでも頭の中で構想を練り上げて、僕は包丁を構えました。
「美味しいれす!」
嬉しそうに頬を膨らませる、イラリアさん。
アミと並ん、喜ぶ2人の顔を見ていたら、それだけでお腹が膨れた気がします。
「まさか、魚介のスープにお肉を投入するとは。お肉は表面がカリッとして、凄く美味しいです」
「はい。お肉はサイコロ上に切って小麦粉をまぶしてから、多めの油で揚げるように炒めました」
実はもうひと手間。お肉にはフォークで穴を空けて、表面には隠し包丁を入れています。
アミも嬉しそうに頬張っています。
「お魚のお団子も美味しいよ!」
「そうか、良かった。そのお団子には、お魚以外にも色んな野菜が入っているんだよ」
魚はミンチにして、細かく切って炒めた香味野菜と合わせて団子状に形成しました。
スープの具材を、ハフハフと食べ進める2人。
「これは明日のご飯も楽しみですね、アミちゃん」
ねー、と笑い合う2人を見て少しプレッシャーがかかります。
この皿も作るの苦労したなぁ。
でも、こんな顔が見れるなら悪くないですかね。
さて、明日はどんな皿を作ろうかな?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最近、少々シリアスな展開が多くなってきたので、作者の気分転換も兼ねた作品でした。
お読み頂き、ありがとうございました。
今後も、時折番外編を書きたいと思います。
突然ですが本日はひょんなことから、一緒に生活をすることになったイラリアさん。そして、僕の妹であるアミとのちょっとした日常をお送りしたいと思います。
あれは僕が、夕飯の献立を考えている時の事です。
「ルカさん。今日の夕ご飯は何になさるのですか?」
トコトコと足音を立てて、イラリアさんが隣にやってきました。
「うーん、そうですね。有難いことに牛肉とお魚を分けて頂きましたので、どちらかをメインにした皿を作ろうかと考えています。もう片方は明日のメインにしようかと」
「わあ、それは良いですね。どちらも美味しそうです」
イラリアさんは、いつも美味しそうに僕の作る料理を食べてくれるので作り甲斐があります。色々とコメントもくれますしね。何より、ワインとの組み合わせについての話もしてくれるので、参考になります。
以前、知り合いの奥様が『最近、何を作っても旦那が旨いとしか言わない』とぼやいていたのを思い出しました。確かにそれだけだと寂しいかもしれないと、主婦目線の思考が身についてきたことに我ながら複雑な心境です。
ふとイラリアさんを見ると、彼女は少し恥ずかしそうにもじもじとしています。
「どちらも美味しそうですが…私、今日はお魚を食べたい気分です」
「ああ、分かりました。それでは魚を使った料理にしましょうか」
ぱああ、とイラリアさんは、嬉しそうな笑顔を僕に向けます。余りに嬉しそうなので、何だか恥ずかしくなってきますね。
その時です。
「私はお肉が食べたい!」
話を聞いていたのでしょう。アミが、バンッ!とドアを全開にして入室。
「ア、アミちゃん。いつからそこに?」
「そんな事よりお姉ちゃん。アミ、今日はお肉が食べたい」
「え、えっと」
イラリアさんは焦った表情を浮かべています。彼女が何に悩んでいるのか手に取るように分かってしまい、思わず吹き出しそうになりました。
大人としてアミの意見を尊重するか、ご自分の欲求に従うのかを考えているのでしょう。
少し考えたところで、彼女は人差し指をピッと立てました。
「アミちゃん。知っていますか?お魚にはDHAという成分が含まれていまして、これを食べると頭が良くなるんですよ」
あ。己の欲望、もとい食欲に従いアミを懐柔しようとしている。
ですが、妹も負けていません。
「知ってるよ!でも牛肉の赤身にはヘム鉄が豊富に含まれているから、疲れにくいお体になるんだよね?畑でお仕事頑張っているお兄ちゃんの為にも、お肉の方がいいと思うな」
ええ!いつの間にそんな博識になったんだ。これがイラリア先生との個人レッスンの成果なのか?そして、さり気なく僕を巻き込むあたり、やり手だな。
イラリアさんは、ぐぬぬと唸りながら、先ほどよりも複雑な表情をされています。この顔は、論破することは出来るが、でも流石にそれは。という表情ですね。やがて、イラリアさんの表情はいつもの優しい表情へと戻っていきました。
「アミちゃん、よくお勉強していますね。何より、ルカさんへの心配りが百点満点です。完敗です」
アミの頭を優しく撫でるイラリアさん。アミは、くすぐったそうに目を細めています。
まるで、本当の姉妹みたいだな。
「フフッ」
僕は思わず破顔しましました。
「ルカさん?」
「お兄ちゃん?」
「あ、いえ。2人の話を聞いていたら、僕が両方食べたくなってしましました。だから、量を半分ずつにしてお肉とお魚を併せた料理にしても良いですか?」
2人は顔を見合わせると、パンッ、とハイタッチをしています。
さてさて。言ったのはいいですが、これは難しいメニューだな。それでも頭の中で構想を練り上げて、僕は包丁を構えました。
「美味しいれす!」
嬉しそうに頬を膨らませる、イラリアさん。
アミと並ん、喜ぶ2人の顔を見ていたら、それだけでお腹が膨れた気がします。
「まさか、魚介のスープにお肉を投入するとは。お肉は表面がカリッとして、凄く美味しいです」
「はい。お肉はサイコロ上に切って小麦粉をまぶしてから、多めの油で揚げるように炒めました」
実はもうひと手間。お肉にはフォークで穴を空けて、表面には隠し包丁を入れています。
アミも嬉しそうに頬張っています。
「お魚のお団子も美味しいよ!」
「そうか、良かった。そのお団子には、お魚以外にも色んな野菜が入っているんだよ」
魚はミンチにして、細かく切って炒めた香味野菜と合わせて団子状に形成しました。
スープの具材を、ハフハフと食べ進める2人。
「これは明日のご飯も楽しみですね、アミちゃん」
ねー、と笑い合う2人を見て少しプレッシャーがかかります。
この皿も作るの苦労したなぁ。
でも、こんな顔が見れるなら悪くないですかね。
さて、明日はどんな皿を作ろうかな?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最近、少々シリアスな展開が多くなってきたので、作者の気分転換も兼ねた作品でした。
お読み頂き、ありがとうございました。
今後も、時折番外編を書きたいと思います。
3
お気に入りに追加
5,200
あなたにおすすめの小説
婚約破棄ですか? ありがとうございます
安奈
ファンタジー
サイラス・トートン公爵と婚約していた侯爵令嬢のアリッサ・メールバークは、突然、婚約破棄を言われてしまった。
「お前は天才なので、一緒に居ると私が霞んでしまう。お前とは今日限りで婚約破棄だ!」
「左様でございますか。残念ですが、仕方ありません……」
アリッサは彼の婚約破棄を受け入れるのだった。強制的ではあったが……。
その後、フリーになった彼女は何人もの貴族から求愛されることになる。元々、アリッサは非常にモテていたのだが、サイラスとの婚約が決まっていた為に周囲が遠慮していただけだった。
また、サイラス自体も彼女への愛を再認識して迫ってくるが……。
嫌われた妖精の愛し子は、妖精の国で幸せに暮らす
柴ちゃん
ファンタジー
生活が変わるとは、いつも突然のことである…
早くに実の母親を亡くした双子の姉妹は、父親と継母と共に暮らしていた。
だが双子の姉のリリーフィアは継母に嫌われており、仲の良かったシャルロッテもいつしかリリーフィアのことを嫌いになっていた。
リリーフィアもシャルロッテと同じく可愛らしい容姿をしていたが、継母に時折見せる瞳の色が気色悪いと言われてからは窮屈で理不尽な暮らしを強いられていた。
しかしリリーフィアにはある秘密があった。
妖精に好かれ、愛される存在である妖精の愛し子だということだった。
救いの手を差し伸べてくれた妖精達に誘われいざ妖精の国に踏み込むと、そこは誰もが優しい世界。
これは、そこでリリーフィアが幸せに暮らしていく物語。
お気に入りやコメント、エールをしてもらえると作者がとても喜び、更新が増えることがあります。
番外編なども随時書いていきます。
こんな話を読みたいなどのリクエストも募集します。
【完結】特別な力で国を守っていた〈防国姫〉の私、愚王と愚妹に王宮追放されたのでスパダリ従者と旅に出ます。一方で愚王と愚妹は破滅する模様
岡崎 剛柔
ファンタジー
◎第17回ファンタジー小説大賞に応募しています。投票していただけると嬉しいです
【あらすじ】
カスケード王国には魔力水晶石と呼ばれる特殊な鉱物が国中に存在しており、その魔力水晶石に特別な魔力を流すことで〈魔素〉による疫病などを防いでいた特別な聖女がいた。
聖女の名前はアメリア・フィンドラル。
国民から〈防国姫〉と呼ばれて尊敬されていた、フィンドラル男爵家の長女としてこの世に生を受けた凛々しい女性だった。
「アメリア・フィンドラル、ちょうどいい機会だからここでお前との婚約を破棄する! いいか、これは現国王である僕ことアントン・カスケードがずっと前から決めていたことだ! だから異議は認めない!」
そんなアメリアは婚約者だった若き国王――アントン・カスケードに公衆の面前で一方的に婚約破棄されてしまう。
婚約破棄された理由は、アメリアの妹であったミーシャの策略だった。
ミーシャはアメリアと同じ〈防国姫〉になれる特別な魔力を発現させたことで、アントンを口説き落としてアメリアとの婚約を破棄させてしまう。
そしてミーシャに骨抜きにされたアントンは、アメリアに王宮からの追放処分を言い渡した。
これにはアメリアもすっかり呆れ、無駄な言い訳をせずに大人しく王宮から出て行った。
やがてアメリアは天才騎士と呼ばれていたリヒト・ジークウォルトを連れて〈放浪医師〉となることを決意する。
〈防国姫〉の任を解かれても、国民たちを守るために自分が持つ医術の知識を活かそうと考えたのだ。
一方、本物の知識と実力を持っていたアメリアを王宮から追放したことで、主核の魔力水晶石が致命的な誤作動を起こしてカスケード王国は未曽有の大災害に陥ってしまう。
普通の女性ならば「私と婚約破棄して王宮から追放した報いよ。ざまあ」と喜ぶだろう。
だが、誰よりも優しい心と気高い信念を持っていたアメリアは違った。
カスケード王国全土を襲った未曽有の大災害を鎮めるべく、すべての原因だったミーシャとアントンのいる王宮に、アメリアはリヒトを始めとして旅先で出会った弟子の少女や伝説の魔獣フェンリルと向かう。
些細な恨みよりも、〈防国姫〉と呼ばれた聖女の力で国を救うために――。
婚約破棄されたので、論破して旅に出させて頂きます!
桜アリス
ファンタジー
婚約破棄された公爵令嬢。
令嬢の名はローザリン・ダリア・フォールトア。
婚約破棄をした男は、この国の第一王子である、アレクサンドル・ピアニー・サラティア。
なんでも好きな人ができ、その人を私がいじめたのだという。
はぁ?何をふざけたことをおっしゃられますの?
たたき潰してさしあげますわ!
そして、その後は冒険者になっていろんな国へ旅に出させて頂きます!
※恋愛要素、ざまぁ?、冒険要素あります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
文章力が、無いのでくどくて、おかしいところが多いかもしれません( ̄▽ ̄;)
ご注意ください。m(_ _)m
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
お姉さまとの真実の愛をどうぞ満喫してください
カミツドリ
ファンタジー
「私は真実の愛に目覚めたのだ! お前の姉、イリヤと結婚するぞ!」
真実の愛を押し通し、子爵令嬢エルミナとの婚約を破棄した侯爵令息のオデッセイ。
エルミナはその理不尽さを父と母に報告したが、彼らは姉やオデッセイの味方をするばかりだった。
家族からも見放されたエルミナの味方は、幼馴染のローレック・ハミルトン公爵令息だけであった。
彼女は家族愛とはこういうものだということを実感する。
オデッセイと姉のイリヤとの婚約はその後、上手くいかなくなり、エルミナには再びオデッセイの元へと戻るようにという連絡が入ることになるが……。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
今さら帰ってこいなんて言われても。~森に移住した追放聖女は快適で優雅に暮らす~
ケンノジ
ファンタジー
「もうお前は要らない女だ!」
聖女として国に奉仕し続けてきたシルヴィは、第一王子ヴィンセントに婚約破棄と国外追放を言い渡される。
その理由は、シルヴィより強い力を持つ公爵家のご令嬢が現れたからだという。
ヴィンセントは態度を一変させシルヴィを蔑んだ。
王子で婚約者だから、と態度も物言いも目に余るすべてに耐えてきたが、シルヴィは我慢の限界に達した。
「では、そう仰るならそう致しましょう」
だが、真の聖女不在の国に一大事が起きるとは誰も知るよしもなかった……。
言われた通り国外に追放されたシルヴィは、聖女の力を駆使し、
森の奥で出会った魔物や動物たちと静かで快適な移住生活を送りはじめる。
これは虐げられた聖女が移住先の森の奥で楽しく幸せな生活を送る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる