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月橘と筏葛3
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名前を呼ぶと弾かれたように、その青い髪に青い瞳の少女は顔を上げた。あたしと目が合うとにっこり笑って元気な挨拶をしてくれる。
「決まった?」
「はい、もちもちクランペットにします」
「そう、あたしはアップルクラフティよ。後でシェアしましょうね」
彼女は魔麟学園五級生(中等部二年生)。ストバスで不届きな男共にいちゃもんつけられてたのを助けに入ったのが知り合ったのがきっかけ。実際のところは、キセキちゃんのお兄さんに助けてもらったのだけれど。
その後もあたし達はまめに連絡を取り合い、キセキちゃんのお友達の縁ちゃん達も巻き込んで親交を深めている次第である。今日は可愛いスイーツがリーズナブルな価格で食べられると評判のカフェに二人で乗り込む。今日は他の皆はそれぞれ用事があって欠席なのが惜しいけれど可愛いキセキちゃんと一緒なら楽しい時間を過ごせるだろう。
言い忘れていたけれど彼女は可愛い。頭をぐりぐりなでてお菓子をあげたくなるような可愛さだ。彼女に懸想している殿方が多いと聞くが気持ちは分かるわ! そして、ふと、あたしはクラスメイトの質問を思い出した。
「ねえ、キセキちゃん。好きなひとはいるの?」
一瞬呆けた彼女は意味を理解して首筋まで真っ赤になった。ゆでダコでもここまでなるかというほど赤い。もうおかしくてほほえましくて可愛くて堪えきれずあたしは笑い出してしまった。
キセキちゃんは眉を下げてひどいですよと情けない表情。それも可愛らしい。我慢出来ずあたしはぎゅっと彼女を抱きしめてしまった。元気だけど純情な彼女は、真っ赤になったままうろたえている。
(キスしたい)
そう思った。自分に驚いたが唐突に理解する。好き。彼女が好きだ。厳密には恋愛感情と違うけど私の中では一番近い感情。
「キセキちゃん、キスしていいかしら?」
返事を貰う前にしてしまったから、意味が無いけど。吹き出物ひとつない、真っ白な額と柔らかい頬に、ついばむみたいにキスをした。桜色の唇は……屋外だし、うっかりしちゃうと怖い人がたくさんいるから今回は見逃してあげましょう。
「ま、真実さん?」
キセキちゃんはもうこれ以上ないというくらい、真っ赤っ赤。その彼女の耳元にあたしはささやく。
「キセキちゃん。あたし、あなたのことが好きみたいだわ」
「……私も、です」
可愛いことを言ってくれる彼女に、もう一度キスしてしまったのは不可抗力ということで。彼女に思いを寄せる男共にこっそりザマアミロと思ったのは誰にも内緒。
「決まった?」
「はい、もちもちクランペットにします」
「そう、あたしはアップルクラフティよ。後でシェアしましょうね」
彼女は魔麟学園五級生(中等部二年生)。ストバスで不届きな男共にいちゃもんつけられてたのを助けに入ったのが知り合ったのがきっかけ。実際のところは、キセキちゃんのお兄さんに助けてもらったのだけれど。
その後もあたし達はまめに連絡を取り合い、キセキちゃんのお友達の縁ちゃん達も巻き込んで親交を深めている次第である。今日は可愛いスイーツがリーズナブルな価格で食べられると評判のカフェに二人で乗り込む。今日は他の皆はそれぞれ用事があって欠席なのが惜しいけれど可愛いキセキちゃんと一緒なら楽しい時間を過ごせるだろう。
言い忘れていたけれど彼女は可愛い。頭をぐりぐりなでてお菓子をあげたくなるような可愛さだ。彼女に懸想している殿方が多いと聞くが気持ちは分かるわ! そして、ふと、あたしはクラスメイトの質問を思い出した。
「ねえ、キセキちゃん。好きなひとはいるの?」
一瞬呆けた彼女は意味を理解して首筋まで真っ赤になった。ゆでダコでもここまでなるかというほど赤い。もうおかしくてほほえましくて可愛くて堪えきれずあたしは笑い出してしまった。
キセキちゃんは眉を下げてひどいですよと情けない表情。それも可愛らしい。我慢出来ずあたしはぎゅっと彼女を抱きしめてしまった。元気だけど純情な彼女は、真っ赤になったままうろたえている。
(キスしたい)
そう思った。自分に驚いたが唐突に理解する。好き。彼女が好きだ。厳密には恋愛感情と違うけど私の中では一番近い感情。
「キセキちゃん、キスしていいかしら?」
返事を貰う前にしてしまったから、意味が無いけど。吹き出物ひとつない、真っ白な額と柔らかい頬に、ついばむみたいにキスをした。桜色の唇は……屋外だし、うっかりしちゃうと怖い人がたくさんいるから今回は見逃してあげましょう。
「ま、真実さん?」
キセキちゃんはもうこれ以上ないというくらい、真っ赤っ赤。その彼女の耳元にあたしはささやく。
「キセキちゃん。あたし、あなたのことが好きみたいだわ」
「……私も、です」
可愛いことを言ってくれる彼女に、もう一度キスしてしまったのは不可抗力ということで。彼女に思いを寄せる男共にこっそりザマアミロと思ったのは誰にも内緒。
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