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盲愛カタルシス2
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どうか、どうか。たすけてください。苦しい。息苦しい。まるで首を絞められているような感覚。けれど。自分の首に手を回しても縄も糸も巻きついているはずがない。ましてや、人の手が締め付けているなんて。
「ジェラール」
自分の名前を呼ぶのは彼女ではない。ならどーでもいいですわ、何て無視を決め込む。その結果、殴られた。
「暴力反対ですよ!」
「ああん? 人をシカトしといてその台詞はねぇよなぁ。その首掴んでダンクシュート決めてやろうか」
「すいませんでした」
被害者ぶっても、相手が弟じゃ全く持って意味がない。とりあえず素直に謝ることにした。呆気なく許してもらった。まあ、こんなもんだな。
「……顔色悪ぃぞ」
「そうですか?」
「毎日ちゃんと食って寝てんのか?」
「君はいつから俺の母親になったんですか」
「手間の掛かる弟みたいなもんだ」
「勝手に兄弟設定を逆転させないで下さいよ」
「それもそうだ」
吐き捨てるように言うと苦笑を漏らす。弟は末期的に柄が悪いがなんだかんだ言って面倒見はいいのだ。まぁちょっと愚痴に付き合ってもらいましょうか。お互い番持ちという事で。
「何かですねぇ、見てると苦しくなるんですよ」
「何をだよ」
自分が指を指した方向を見て。呆れたような納得したような溜め息。なんて事はない。自分達の後輩が友人達と仲良く遊んでいるだけ。ただそれだけなのに。なのに。
かずちゃんが好きすぎて、あの柔らかい躰を頭からバリバリ喰べてしまいたくなる……などとほのぼのグロイ想像をついついしてしまう。欲しい。すべて手中に収めてしまいたい。何の奇蹟か、俺のことを心底好いているのは知っているしわかっているけれど、ふわふわと落ち着きのない彼女がうっかり余所にいかないよう、小指の先から、髪の毛一本たりとも俺のものだと証を刻みこみたい。なんて。
「微笑ましいだろ」
「普通は、そうなんでしょうけどねー」
「【中心にかずちゃんが居るのが気に喰わない。周りに居るのは自分だけでいい】……なんて思ってんだろ」
自分の【嫌な】本音を言い当てた弟のそのドヤ顔を殴りたい衝動に駆られた。でもそれを実行すれば十中八九千倍返しされるから止めた。悲しいかな、腕っぷしは弟の方が上なのだ。
柄になくしゃがみ込み項垂れる俺を放置し。クロードは賑やかな輪の中心に近づく。そして二言三言、かずちゃんに向かって呟いているのが見て取れたムッツリ弟この野郎、手ぇ出したらただじゃおきませんよ……まぁ、弟はかずちゃんのお姉さん一筋だから大丈夫ですよね。なーんて思っていたら。愛しのかずちゃんがパタパタと走り寄って来て。あっという間に気分上昇……イイ性格してますね俺も。
「どうした?」
「さっき、クロードさんに教えてもらったんですけど」
しゃがみ込んだままの俺を見下ろしていたかずちゃんは同じように屈み、俺の額に触れるだけの口付けを。驚いた見上げた彼女の顔は、恥ずかしそうにはにかんでいた。
「ええと。何か気分が悪いみたいだったから」
「こうすれば元気になるって言われたんです」
「元気になりました?」
(これ、これが噂のトキメキ死か……)
自分の現金さに。かずちゃんの単純さに。弟の意外な狡猾さに。ふかくふかーく感謝した。
(きみのそんざいじたいが、このみどまんなかです)
「ジェラール」
自分の名前を呼ぶのは彼女ではない。ならどーでもいいですわ、何て無視を決め込む。その結果、殴られた。
「暴力反対ですよ!」
「ああん? 人をシカトしといてその台詞はねぇよなぁ。その首掴んでダンクシュート決めてやろうか」
「すいませんでした」
被害者ぶっても、相手が弟じゃ全く持って意味がない。とりあえず素直に謝ることにした。呆気なく許してもらった。まあ、こんなもんだな。
「……顔色悪ぃぞ」
「そうですか?」
「毎日ちゃんと食って寝てんのか?」
「君はいつから俺の母親になったんですか」
「手間の掛かる弟みたいなもんだ」
「勝手に兄弟設定を逆転させないで下さいよ」
「それもそうだ」
吐き捨てるように言うと苦笑を漏らす。弟は末期的に柄が悪いがなんだかんだ言って面倒見はいいのだ。まぁちょっと愚痴に付き合ってもらいましょうか。お互い番持ちという事で。
「何かですねぇ、見てると苦しくなるんですよ」
「何をだよ」
自分が指を指した方向を見て。呆れたような納得したような溜め息。なんて事はない。自分達の後輩が友人達と仲良く遊んでいるだけ。ただそれだけなのに。なのに。
かずちゃんが好きすぎて、あの柔らかい躰を頭からバリバリ喰べてしまいたくなる……などとほのぼのグロイ想像をついついしてしまう。欲しい。すべて手中に収めてしまいたい。何の奇蹟か、俺のことを心底好いているのは知っているしわかっているけれど、ふわふわと落ち着きのない彼女がうっかり余所にいかないよう、小指の先から、髪の毛一本たりとも俺のものだと証を刻みこみたい。なんて。
「微笑ましいだろ」
「普通は、そうなんでしょうけどねー」
「【中心にかずちゃんが居るのが気に喰わない。周りに居るのは自分だけでいい】……なんて思ってんだろ」
自分の【嫌な】本音を言い当てた弟のそのドヤ顔を殴りたい衝動に駆られた。でもそれを実行すれば十中八九千倍返しされるから止めた。悲しいかな、腕っぷしは弟の方が上なのだ。
柄になくしゃがみ込み項垂れる俺を放置し。クロードは賑やかな輪の中心に近づく。そして二言三言、かずちゃんに向かって呟いているのが見て取れたムッツリ弟この野郎、手ぇ出したらただじゃおきませんよ……まぁ、弟はかずちゃんのお姉さん一筋だから大丈夫ですよね。なーんて思っていたら。愛しのかずちゃんがパタパタと走り寄って来て。あっという間に気分上昇……イイ性格してますね俺も。
「どうした?」
「さっき、クロードさんに教えてもらったんですけど」
しゃがみ込んだままの俺を見下ろしていたかずちゃんは同じように屈み、俺の額に触れるだけの口付けを。驚いた見上げた彼女の顔は、恥ずかしそうにはにかんでいた。
「ええと。何か気分が悪いみたいだったから」
「こうすれば元気になるって言われたんです」
「元気になりました?」
(これ、これが噂のトキメキ死か……)
自分の現金さに。かずちゃんの単純さに。弟の意外な狡猾さに。ふかくふかーく感謝した。
(きみのそんざいじたいが、このみどまんなかです)
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